推理遊戯

太宰さんの過去は解ったけれど、卯羅さんは?
二人がお休みの時に、谷崎さんとそんな話になった。
「卯羅さんって、優しい、というか、包容力があるというか……」
「お母さんッて感じするよね」
「でも太宰さんがそうなら、卯羅さんも?」
太宰さんの過去を知った時は本当に驚いた。あの太宰さんが、って。けれど今は違うんだ。正義の人に成ったんだ。
「敦くんが来る前に、卯羅さんと仕事をしたんだけど、凄く手慣れていたというか、初めから相手が袋小路に居るような感じだったなあ」
「袋小路といえばなんですけど……芥川と初めて対峙した時に感じた殺気が、卯羅さんのものだと知った時は驚きました……」
僕と芥川の衝突を太宰さんが止めに入った瞬間、谷崎さんに駆け寄り、応急手当をしていたのが卯羅さんだと知ったのは、随分後だった。そして太宰さんに噛み付いたマフィアに放った殺気も、彼女のものだと知ったのも。
「卯羅さんの異能力も見たこと無いンだよなあ」
「谷崎さんもですか?」
「そう。使おうとすると太宰さんが止めるんだ。勿体無いって」
教えてくれるかなあ。
国木田さんは深窓の令嬢らしいと云っていた。けれど、そんな人が殺気を放つか?芥川のそれも似た、いいや、それ以上に「相手を消す」という意思を感じた。
「お二人とも」急に背後から声を掛けられて、僕たちは驚き飛び跳ねた。

「職業中て遊戯の続きかしら?」
焼菓子を作りすぎたからと、休みだけど探偵社に足を運んだら、谷崎くんと敦くんが楽しそうなお話をしていた。
「ええ……まあ……」
「主人のは知っているでしょう?」
「マフィア、ですよね?」
「正解」
笑いながら答えると、二人とも驚きと困惑を隠せない様子。
「それもねぇ、現幹部の娘よ。幼い頃から、太宰を支える為だけに育てられたの」
思い出すだけで胸が苦しくなる。
母様。
本当なら、主人との結婚を一番に喜んでくれた筈。
選ぶしか無かったから。太宰か母様。どちらかの手を取るしかなかった。初めて見たあの眼を忘れられなかった。そして最期の言葉も。
「私ね、どうしても太宰を見捨てられなかったの。あの人の寂しさに、寄り添いたかった。決してそれが何人たりとも、埋められない物だとしても。ただ、気紛れに愛してくれて、利己的に扱ってくれればそれで佳かったの」
今も昔も変わらない女癖。何人葬ったか解らない。
青少年には刺激が強かったかしら。呆然としている二人の手に焼菓子を載せた。
「佳かったら食べて。作りすぎちゃったの」
「卯羅さん、お菓子も作るんですね」
「主人の女癖に苛ついた時にね。ほら、バター軟らかくするのに叩いたりするから、気持ち佳くて」
「因みに……太宰さんは……」
「ドラム缶に二つ折りで入れて、お腹に石載せてる」
昨日の夜は商売女と飲み歩いてたとか云うから少しお灸を。帰ったら隣で烏賊でも焼いてやろうかしら。七輪で。
「お邪魔したわね。国木田さんにはまだ内緒にしておいて。こういうことには五月蝿いでしょうから」





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