主人の待つムルソーに向かう道すがら、探偵社の面々と再会した時の事を思い出した。
最悪だったわね。
思い返せば思い返す程、自分のしたことが嫌になってくる。少なくとも与謝野先生は、マフィアに戻った私を受け入れようとしてくれていた。身を案じてくれていた。
そして今後の計画を教えてくれた。
母様が迎えをくれるまでの間、敦くんが太宰の様子に気を遣ってくれた。
「あの人、昔からなの。私にすら最終的な目的を云わないの。六年位前に、横濱を焼き尽くすような大規模抗争があったの。裏も表も全てを焼くような抗争。その時にあの人、私を連れてくだけ連れて行って、急に拐かされたのよ?後々になって、わざとだったと解ったんだけど、それはもう泣きながら怒ったわ」
「じゃあ今回も?」
「今回は本当に何も訊いていないの。何処へ行ったかも、何のために……生死すら解らないわ」
消える日の前の晩、何かあったら母を頼れとだけ云い残して。坂口さんが教えてくれた通りなら、向かう先は決まっている。あとは其処にどうやって踏み込むかの手段だけ。
「卯羅さんは、これからどうするんですか?」
「私は自分の伝を使って裏から手を回す。きっとそれが探偵社にも役立つ筈だから」
不安そうな敦くんに私は笑顔を見せるしか無かった。
「僕に出来ますかね……」
こんな少年に背負わせて。ぽつり敦くんが溢した言葉に、私は彼の背を撫でて答えた。
でも彼と同じ歳の頃の私は、幹部様の秘書として生きていた。そして太宰は───
「出来るわ。居場所を護るためなら、人間、変に頑張れるものよ」
「……卯羅さんの居場所は?」
「そうねぇ」考えなくても答えは出ている筈だった。何時を思い返しても隣には太宰が居る。あの日、私に生きる意味をくれた人。「太宰の隣」
「太宰さんの、となり」
「だって私、太宰の妻だもの」
どんな世界だって。
彼がどんな存在となっても。例えマフィアの首領と成ったとしても、普通の学生だったとしても。飛躍すれば、国王だったとしてもそれは変わらない。
「……卯羅さん、お迎えが来たみたいです」
「ありがとう敦くん」
暫くのお別れ。次に会う時は、夫婦揃って会える筈だから。