牢から落ちてきた愛しい人に抱き付いて、これでもかと口付けて、恨み言を云いながら、愛を伝えて。本当は少し張り始めたお腹を触らせたかった。けれど、此処から脱出すれば、最良の方法で叶うはず。だから今は我慢をして。
彼の胡座に収まり、事の成り行きを見守っていると、露西亜の男たちがまあ、脅し脅され。治さんはそれを茶化そうと「君、善い友達を持ってるねえ」なんて。
シグマも呆れ返って眺めている。
「卯羅、あんなのとずっと居たの?」
「道中大変騒がしく」
空気が変わったのは、ゴーゴリがドストエフスキーと主人を指差し、高らかに宣言した事によって。
「君達二人に今から、脱獄決闘をしてもらう!」
瞬時に狼が何匹も。私も太宰の前に出、夫人を呼ぶ。彼が投獄されてから、お招きし過ぎた所為かしら、手足に絡み付く蔦は肉に食い込むほどに。それに依って、僅かに垂れた血液から、新たに花が咲く。
狼の飼い主は、ドストエフスキーに眼を覆われ、異能の解除を促されている。
「君も御夫人とお別れ出来るかい?」
「そうね、そうしましょう」
私が解くのよりも早く、治さんが髪飾り的に咲いた異能花に触れ、そこから頚に巻き付く蔦をなぞり、下へ、下へ。
きっと昔のように全てを壊さなくてはならなくなる。行く果ては、この身を砕いてでも。彼の御用命のままに。