マフィアの中には派閥がある。
各々の幹部に各々の派閥。
中でも勢いがあるのは、太宰さんの派閥だ。そういう俺も、そこに属している。この派閥には特異なものが二つある。それは上司の年齢と、その片腕だ。太宰さんは未成年で幹部になった、最年少記録樹立者だ。何時も部下と称して、女を1人連れている。俺達したっぱが知っているのは、その女が、尾崎紅葉の娘であること。あとは、太宰さんが大層お気に入りだということ。
「太宰さん」
「この報告書は君に任せる。あとこれ。姐さんから」
「母様ったら直接くれれば善いのに」
何とも蕩けた眼で見るのだろう。あの太宰治を、これ以上ない親愛を込めた眼で見ている。あの外套の下でも、指を絡め、繋いでいるのだ。きっと、そうだ。
太宰さんは彼女の耳ともで一言二言呟いて、部下を自分の執務室に押し込んだ。
そして上司は、俺の方に向かってきた。何時もとは違い、笑顔を浮かべて。それに不穏な空気を感じ取りつつ、上司の言葉を待った。
「そんなに私たちが気になるかい?」