2.さりげなく腰に回した手

俺の上司はいつでも、特定の女部下を侍らせている。何があってかは知らないが、太宰さんの相当気に入りらしい。他の部下の前でじゃれる、なんて事はしないが、エロティカルな雰囲気をよく纏っている。
会議が終わった太宰さんの後ろを、尾崎が付いていく。
「太宰さん!」
「何かあった?」
「この件は報告書。あと、この間の取引の詳細と利益率──は安吾の方が善いかな?」
小さな手帳を捲りながら、報告している。其れを覗き込もうと太宰さんも近付く。上司の手が、引き寄せるように女の腰に回される。
「ねえ、この日は空けておいてよ」
「なんで?」
「卯羅、忘れたの?私と夕食に行く日だよ」
「大丈夫。その時間は確保してある」
「ということは、仕事なの?」
困ったように部下が笑った。
「解った、1日空けておくね」
俺の上司は本当に何でも思い通りにしてしまう。

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