1.友情

きっと結ばれる事なんて無い。
私が心を揺らしたのは、直属の上司。若年で幹部に祭り上げられた彼は、矢張、退屈そうだった。
「太宰さん、冷えるよ」
「月が、ね」
窓辺の上等な椅子に腰掛け、外を眺めている。
「紅茶淹れたよ、佳かったら。お砂糖とミルクは御好みでね」
「ん。置いておいて」
熱心に月を眺め続ける。私もその方を見た。
私には見えなかった。暦を確認すると、新月だった。
「太宰さん……」
「どうにも寝付けない。月の所為かと空を見たら、何もない。なら何が私を邪魔するの?」
答えなんて探してないのに、問答をする。昔からよく知る、幼い姿。不敬にも、其れを重ねてしまった。アテの無い答え合わせから目を逸らさせるように、額に口付けた。
「もう、寝台に行こう?」
「……そうしよう。そうする」
私の胸に潜り込む太宰さんの額に、もう一度だけ、口付ける。
睫毛が、何かを憂う様に、瞳を隠した。

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