何ということだ。卯羅が一向に起きてこない。先日の仕事で異能力攻撃を受けてしまったとは聞いていたが───
太宰は一人思案した。探偵社の医務室で眠る彼女に付き添いながらどうしたものかと堂々巡りを続けていた。与謝野女医の異能で傷は癒えた。しかし目は醒めない。ならばと自分の異能で解除出来るやもしれない。触れてみたが、何も変化は起こらない。
「太宰さん、あまり根を詰めると善くないですよ?」
「やあ、ナオミちゃん。彼女が目覚めた時に驚かせてやろうと思って」
「そういえば、外つ国の童話に、口付けをすると起きるというものがありましたわ」
悪戯に笑うナオミの顔を見て合点がいった。幼い頃、そんな絵本を彼女が読んでいた覚えがある。太宰は笑いを堪えきれなかった。随分可愛い事をしてくれる。
「そうだね、君はあのお話が好きだった。何時かきっと自分だけの王子様が来てくれる事を望んでいた」
王子様など柄では無いが、お姫様がそう望むのであれば成るしかない。
「なら、その呪いを解いてあげようね」
そして二人は甘い甘いキスをした。