悪戯(織田視点)

顧問役に仕事を終えたことを告げる為に、拠点に寄った。廊下を歩いていると最近、馴染みに成った男がいた。
「太宰」
男に呼び掛けると、こちらを振り向き、手を振りながら、駆けてきた。一緒に居たであろう女は、俺に少し手を振ると昇降機へ向かった。
「やあ織田作。仕事終わったの?」
「これから報告しに行くところだ。お前は何していたんだ?」
「卯羅にね、仕掛箱と弾け飴をあげたとこ」
「また悪戯してたのか」
太宰治と尾崎卯羅。マフィア新政権の象徴のような二人。なんでも首領自ら引き合わせて、教育しているらしい。
「そのうち口を利いてもらえなくなるぞ」
先週もその前も、悪戯を仕掛けたと云っていた。よくそんなに思い付くなと思うが。尾崎にしても堪ったもんじゃ無いだろう。
「何故?卯羅は私の世話人だよ?」
「その前に女の子へ余り仕掛けるのは善くないだろ」
「何故?」
太宰は質問を積み重ねる。本当に解らない、というように。あれだけ頭が佳いのに何故なんだ。とはいえ、俺も太宰を納得させられそうな、適当な理由が思い浮かばない。
「男よりも吃驚することに慣れてないからだ」
我ながら下手な理由だと思う。絞り出したのがそれなのだから、仕方ない。
「じゃあ慣らさなきゃ」
可愛い笑顔で云う台詞では無い。聞きように依っては変に取られる。
「そうじゃないだろ」
否定しておく。確実にそうでは無い。もっと他の理由が彼の中に在る筈だ。
「じゃあ何で?」
それ以外の答えは見付からない、と返してきた。
「お前、自分で気付いてないのか?」
「何が?」
これは俺の主観、体感だが、太宰は尾崎と居るときが一番“子供”らしい。尾崎の言葉にいちいち表情を変える。あいつらが同じ毛布にくるまり、ぬいぐるみを抱いて昼寝をしている、と嘘を云われても俺は信じただろう。
「まあいい」
俺は説得を諦めた。「一日二回はやりすぎだ」
「うん。減らすように努めるよ」
「そうしてくれ」

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