喧騒の日常

『異能力者連続自殺事件』が解決し、武装探偵社にも平穏が戻った。敦はそういえば、と太宰の隣で書類の山を裁断機にかけようとしている卯羅に声を掛けた。
「卯羅さんて、あの霧の中、何処に居たんですか?太宰さんと居るのかと思ったんですけど」
「ああ、家で家事してた」
「へ……?」
「私の異能力は“触れたもの”に対してしか効力が無いでしょ?だから、宝石撃ち抜いて終わり」
「因みに訊くけど、卯羅のは何処に付いてたの?」
愛読書を読みながら太宰が口を挟んだ。
「第三肋骨の胸骨部分」
「つまり何処ですか………」
「在り大抵に云うなら谷間の上だよ敦くん」
太宰の間延びした口調と裏腹に、敦は赤面した。
「谷間狙うよりも心臓狙う感覚でいったら1発だった」
グッと親指を立てる姿は頼もしくも無邪気だった。
「あとは治さんが全て片付ける頃に、着替えと応急処置道具持って、骸砦向かって終わり」
「はあ……」
そういえば、この人もマフィアに居たんだっけ。冷静に対処するのは其れ故かと納得した。
「洗濯物溜まってたしさ。其れに下手に動くと、治さんの計画が狂うでしょ?あと国木田さんにこき使われる」
太宰の正面で今回の事件に関する報告書を作成する国木田が、キーを激しく叩いた。
「尾崎……!貴様という奴は!」
「だって!国木田さん絶対『太宰は何を目論んでる!』『骸砦に行け!』って云うじゃん!あと私はもうとっくに“太宰”!」
「いやぁ、久し振りに激しかったなぁ、彼女の治療」
「だってあんな大怪我して!国木田さん、労災降りますよね?」
「俺の胃の方が労災だわ」
怒鳴り、喚く先輩を眺めながら、敦は引き笑いしか出なかった。

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