夏。この季節になれば授業の内容も少し、季節に倣う。
「っかしーなー。私プールバッグ置いてきたのに」
「母様が見逃すわけ無いでしょ…」
「手前本当積極的に留年しようとするな」
大半は好きなプール。彩のように嫌いな生徒が居るのも事実。
「治くんは?」
「君が男子更衣室まで来て、包帯を巻き直してくれると云うなら」
「絶対行かない」
「なら入らない」
いつもの四人で更衣室へ向かう。
「更衣室ももう少し広げてほしいよね〜」
「卯羅入るの……?」
「えっ入るけど……」
「太宰治入らないよ?」
「治くん入ろうがどうであれ入る……」
「善い子ちゃんかよ〜」
そうは言いつつも、彩も水着へ着替える。
更衣室を出たら出たで、太宰が待ち構えていた。
「何か云いたげだな」
「いやあ、卯羅の方が姉なんじゃないの?本当は」
「お前!!!一番云っちゃ駄目なこと云ったかんな!!!」
「治くん此処で触ったら生活指導入るからね」
「卯羅は何の心配してんの?」
授業は、身体慣らしから始まり、習熟度別、時間が余れば自由時間。
「姉さんなにそれ」
「浮き輪ですね!見たまんま!」
自由時間になった途端、彩はプールに浮き輪を投げ入れた。
「それアリなの?」
「文明の利器はね、使った方がいい」
したり顔で浮かぶ彩が、突然水中へ引きずり込まれた。卯羅が慌てて潜ると、相手は中原中也だった。
「手前、本当に泳げないんだな」
「解っててやったでしょ?!」
「運動が頗る駄目なのは知ってた」
「普通に危ないからね?」
潜るぐらい出来るようになれ、と豪語する中也に姉を預ける。多分途中で泣きついて来るだろうが。
卯羅はプールサイドに腰掛け、脚を水中で遊ばせる太宰の処に向かった。
「脚長いなぁ」
「まずそこなの?もっと褒めるべき処があるだろう?」
「今日のお祭り、行くの?」
「そうだなぁ……人多いだろう?気分次第、かな」
目を逸らして云うのを見て、「誰かと約束しているんだろう」と結論付けた。
「卯羅ぁ゛!無理!!!中也さんに殺される!!!」
腰に何か触ったと思ったら、姉だった。中也に相当厳しくしごかれているようだ。
「なぁに急に。中也はあっちだよ」
「逃げてきたんだよ!!!」
「何故逃げるの?君の彼氏だろうに」
中也と太宰は犬猿の仲と評判だが、太宰と彩もなかなかに噛み合わない。
「卯羅本当にこのひょろひょろと別れないの?」
「あっちの方はぶっといから許して」
「あのねぇ、姉さんそこまで知りたくなかったよ」
自由時間も終わり、更衣室へ向かう。
「ねえ誘えた?」
「誘えたら溺れてないと思うよ」
「だよね……」
「太宰治即オッケーだったでしょ?良いよなー」
「ううん。断られちゃった」
「あーやっぱりか。…ん?え?まって??」
「他にいく人が居るみたいなの」
「はぁ?!マジで?!えっ太宰治、卯羅に手出しといてそれなの?」
「治くんだからね。だから私は、治くんが誰と行くのかなんて気にしてないし、見つけ次第〆る」
「めっちゃ気にしてるじゃん……」
それならクラスの誰かでも誘おう……尾崎姉妹は少しひねくれながら、そう決めた。
一方、教室でも一悶着起こっていた。太宰と中也が尾崎姉妹の誘いを断ったというのは、即座にクラス中に広まった。
「なんで卯羅からの誘いを全て承諾しなくてはならないの?」
「俺なんかアイツから何も言われてねーし。完全なとばっちりだろこれ」
「デートの誘いだろ?!どう考えても」
「だから?」
其所に、姉妹が戻ってきた。太宰は、卯羅から少し眼を逸らせた。
席について一言。彩が云い放った。
「お祭は他の子と行くから」