また待合室に移り、ただぼんやりと呼ばれるのを待つ。
「先生、もし治くんがお話してくれなかったらどうしよう……治くんがもし私を忘れていたら?」
「其れは無いだろ」
無駄に不安に駆られるのは解る。尾崎はらしくない程に動揺していた。
「お前も休め。というか学校はどうした」
「治くんが居ないなら行く意味はないもん」
「親は知っているのか?」
尾崎の母親は怒るとかなり怖い。少々艶っぽい和装も含め、夜叉の様というのが合っている。
「あー……ママには、言ってない……だって!云ったら止められるし、絶対駄目って云われるもん!」
「何回目の留年だ?」
「治くんと同じだけ」
どうしても太宰から離れようとしないこの女生徒。何時だって“太宰”を主語に持ってくる。
「治くんならきっと平気。美人な看護師さんもいるし」
「お前が居れば目覚めるだろ。何よりの目覚ましだ」
「そうかなあ……そういう事にしとく」
自虐的に笑った。尾崎の悪い癖だと思う。
一時間程してまた先程の説明室に呼ばれた。
「無事に管は抜けました。呼吸も自分で出来ていますね。鎮静剤を使用したので、まだ眠ってはいます」
尾崎が俺を見た。
「先生、彼女を面会させてやってください。後の話は俺が聞きます」
医者は快諾してくれた。例の通りに受付を済ませ、太宰の元へ行く背を見送った。
「今後の事に関してですが───」
医者も尾崎が居ては云いづらかっただろう。俺は座り直して、話に備えた。