教室で早々とジャージに着替える中原中也。そのまま他の男子生徒と校庭へ向かう。
「あれ彩行かないの?」
彩の前に座る生徒が声を掛けた。
「寒いし体育だよ?数学の次ぐらいに嫌」
「体育館なのがせめてもの救いだよね」
「でもさーバスケする中也さん格好いいじゃん?」
「結局そこなんだ…」
そう言われて彩は真顔になった。「中原中也が格好いいから嫌いでも体育は出るんだ」と眼が語る。
「尾崎!特別に手前をしごいてやるよ」
無事に領地を獲得した中原が教室に戻ってきた。
「お、お気遣いなく…」
「遠慮すんじゃねーよ。せめてドリブルぐらいまともにやれよ」
彩の首根っこを掴みそのまま引きずっていく。
「ねぇ中也さん、体育やるの体育館だよ?」
「そのひ弱な体力どうにかしろ」
「それとこれとは別では?!」
寒いからそこ身体動かすんだ!と意気込む中原と対照的に、無理矢理それも外で特訓させられることへの絶望に打たれる彩。彼女は最後の希望と保健室の引き戸を掴んだ。
「おい離せよ」
「嫌だぁぁぁぁ」
「手前の成績悪いと何故か俺が怒られんだよ!」
「誰に!」
「手前の親だよ!」
「何で!」
「知らねぇつってんだろ!」
暫く押し問答をしていると、掴んだ戸が開いた。それでも引き摺られまいと必死に戸口を掴む。
「なんだい全く…廊下は静かにとあれほど──おや彩か」
「先生ぇぇぇ……中也さんが…」
「また中原かい?あんたら姉妹は揃って。中原も離してやんな。腕がもげちまうよ」
流石に中原も手を離す。勿論彩は尻餅をついて折れた!割れた!と騒ぐ。
「そんなんじゃ死にはしないさ」
「でも中也さんの特訓は死んじゃう!」
中原は頭を掻きながら時計を見た。もうすぐ昼休みが終わる。完全に時間配分を間違えた。
「仕方ねぇ。授業で勘弁してやるよ」
「今すぐ熱上がんないかな」
「そりゃ無理だねぇ」