体育(試合をしようか)

授業の後半は試合。
男女混合6チームに分けて総当たり戦を行う。
「姉さんバイバイ」
「不安になるからやめて!」
「中也さんいるからいいじゃん」
「尾崎足引っ張んなよ?」
「私まで勘定に入っているとはねぇ」
「当たり前でしょ」
教師というのは不思議である。姉妹を割いて連れ添う者を組み合わせた。そして最初の試合でそのチームを当ててくる。
「太宰の代わりに手前を潰してやるよ、尾崎妹」
「嗚呼、今考えたら私も"参謀"としては参加できるねぇ」
「何で手前がしゃしゃり出てくるんだよ!そこで石にでもなってろタコ!」
いつも通り喧嘩を始めた二人を放置して試合を始める。
「何で治くんはそこに居るの」
「いやぁ、私の背丈ならゴール下が適任だと思って」
「見学してなさいよ…」
レポート嫌だし、と笑う。
「おい尾崎」
「はい?!」
「妹マークしろ」
「えっ…無理でしょ…卯羅の方がデカいよ?」
「良いからマークしてろ」
中原の指示に従い、彩は卯羅の少し前に陣取りした。
「卯羅って球技」
「好きだよ」
「だよね…」
どうせなら太宰と見学を代わりたいと思うほどに嫌いな球技。だからといって中原の指示に従わない訳にもいかない。
『この状況で、中也に対抗できるのは卯羅だけだ。私がちゃんと参加できれば善いのだけど…生憎腕を怪我している』
『木乃伊野郎が居ないということは俺をマークするのは尾崎妹しかいねぇ。太宰が参加するとしてもゴール下からは動かないだろう』
『今の状況なら彩ちゃんの方は振りきれるだろう。中也が此方に攻めてきた時、彩ちゃんは卯羅の邪魔をしてくる。それに彼女は私よりも卯羅の思考を読める可能性がある』
『どうやっても俺らが有利だ。このままその鼻と言わず首ごとへし折ってやる』
「中也さんも太宰さんも難しい顔してる」
「絶対ろくなこと考えてないよあれ。普通にバスケしたい」
そうはいえ、普通にバスケをさせてくれないのが太宰と中原。中原が太宰の弱点を攻めない筈もなく、卯羅はそのカバーに付きっきりとなった。リバウンドは仲間に回す前に中原がかっさらってしまう。これでは攻められない。
「彩!」
「はい?!」
卯羅はリバウンド自分で回収し、あろうことか彩に回した。張本人は、読めない状況にボールを持ったまま狼狽える。
「尾崎!俺に回せ!」
中原が作戦に勘付き、指示を出した時にはボールは卯羅の手中にあった。中原が追い付くまではなんとかなる。これで入れればヒーローだよなとか考えながらゴールを目指す。
「舐めたことしてくれたな?!」
追い付いた中原が目の前に立ちはだかる。あと少し……だがここから投げても中原にカットされるだろう。一方後ろでは太宰が呑気に近くにいたチームの女子と話をしながら此方へ向かってきている。
卯羅は太宰に向かってボールを投げた。中原もそれを「嘘だろ」という顔で見ている。怪我人に投げる速さではない。
「私にやれって?」
ペースを崩さずボールを運んでくる。歩はゆっくりでも彼から球を奪おうとする相手を難なくかわす。
「手前何様だよ」
「太宰様」
中原中也と太宰治の1on1が始まる。その場に居る全員が身を引いた。
「何で君まで場外出るの」
「手前は此方だろ」
姉妹は連れ戻され、サポートを余儀なくされる。
「さてさて、どちらが優れているか決着付けようじゃあないの」
「手負いだろうと無かろうと手前なんざ一捻りなんだよ!」
「何で私らまで巻き込むかな」
「一人でやってよ中也さん!」
「お前ら何やってるんだ!!!!!!」
敢えなく4人はレポートを提出するよう命じられた。

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