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街は降誕祭の色に染まる。煌めく電子飾り、心踊る音楽。
私の押す乳母車の中でさえもそれは同じ。
基治が玩具の鈴を鳴らし、修治が即興で歌う。この二人への贈呈品を探そうと、駅前の百貨店に向かう。その道中は珍道中。チンドン屋よろしく賑やか。
「元気だねぇ、本当に元気だ」
「もとくん、はじめてのクリスマスだよ!」
乳母車に取り付けた足台に乗る長男が、弟の初降誕祭を主張する。
「ほらお店着いたらしーだよ。あと、かけっこしちゃ駄目だよ」
「あーい」
母親とのお約束。善い子は、騒がず、走らず。
「修治は今年何をお願いするの?」
「あれ!」
指差したのは自動車を型どった手押し車。
「珍しいねえ。善いだろう」
「あのね、これでこうえんいくの!それでね、ここにスコップいれる!」
にこにこと、納車後の計画を話してくれる。子供は風の子。
「基治は何が良いかなぁ」
下の子は演奏に疲れたのか、寝付いていた。卯羅が覗き込もうと、修治が頬をつつこうと、起きる気配はない。
「もとくんもね、おともだちがいいの」
修治が私の外套を引っ張りながら提案。
「おともだち?」私は息子に目線を合わせるよう、屈んだ。
「しゅーじにはぞうさんがいるでしょ?」
「成る程ね。修治の『おともだち』は私と卯羅からの贈呈品。基治のは私と卯羅、そして修治からだ」
「もとくんぜったいよろこぶ!」
あまりにも純粋で優しい思い。長男の頭を撫でるとそのまま抱き付いてきた。
「なら、選ぶのは君にしてもらおう」
「修治は基治の毛布も選んでくれたものね」
ぬいぐるみ売場に移動をする。大小様々な大きさ、様々な動物。
下ろせと背を叩く子。下ろすとタッと駆けていく。見失うまいと私も追いかける。案外子供は速い。敦くんが驚くのも頷ける。それを虎の目で探し出してくる敦くんも十分に素晴らしいが。
「修治、ママとの約束は?」
「かけっこしない!」
「おや、君は今駆けてしまったね」
「……わるいこ?」
目を円くし、少し首を傾げる。母親のそれと同じ。
「約束は覚えていたからね、悪い子じゃあない。次きちんと守れば善いさ」
私も甘くなったと熟思う。だが、これぐらいで叱るのもと思う。
「修治は、どれが基治が好きだと思う?」
「このこ〜!」
白い子海豹。鰭を支えにして首をもたげる姿勢。下から覗き込むような姿勢は、這う練習に飽いた基治に似ている。
「じゃあこの子にしよう」
「もとくんのビックリプレゼント!ないしょね!」
「わかった。内緒だ」
指切り。笑顔で弟への贈呈品を母親へ見せに行く。その姿につい感傷的に成ってしまう。子供が出来てからというもの、どうしても彼を思い出す。彼と、彼の養っていた孤児。彼は向こうで彼らに会えただろうか。もし彼らが生きていたら、私の歩む道は、卯羅の歩む道は、変わっていただろうか。それとも或いは、私に手を振る子は───
「治さん」
思考の深淵の手前で呼び戻した声。卯羅が息子二人を連れて隣に立った。彼女だけはあの頃と変わらずに居てくれる。
「ああ、卯羅。修治が素敵な贈呈品を選んでくれたよ」
私の両頬を手で包み、何か云いたげな顔をする。戻るなとでも云いたげな。それに微笑みで返した。大丈夫だ、と。
「却説、この贈呈品たちは私と卯羅が、責任を持ってサンタクロースに届けよう」
「うん!サンタさんまってる!」

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