五ヶ月の検診。
治さんが一緒に行きたいと云ったから、共に。なかなか珍しいのか、他の人たちがチラチラと見ている。
「今日で五ヶ月かぁ……」
待合室の席で治さんがぼやく。
「早いよね。もう少ししたら、性別解るって」
「どっちも可愛いんだろうなぁ」
どっちが産まれても、治さんの子だから絶対に可愛い。なんとなくお腹がくすぐったいというか、押される感じがする。
「どうした?」
それを気にしていると、彼が顔を覗く。
「なんかね、お腹がもにょっとした」
なんだろう、と治さんもお腹を触る。
「動いて、いる?微かだけど私も感じるよ」
「気の所為じゃないよね?」
待合室に設置された画面に、受付番号が表示される。診察室に二人で入ると、与謝野先生が「待っていたよ」と笑う。
「先生、あのね、さっきお腹もごもごしたの」
「胎動かねぇ。血圧測るよ」
治さんが何となく居場所が無さそうに診察室を見回す。
「珍しく落ち着かないじゃないか」
「いやね、看護師さんの視線がね」
先生の奥に居る看護師に手を振る。相変わらず女難だ。
「血圧も大丈夫そうだね」
「先生、水分って多めに取ったほうが善いの?」
「意識して取るようにはしな。浮腫の怖さは知ってるだろ?」
「壊疽して切断!」
「卯羅、そこ笑顔で答えるところじゃない」
珍しく治さんが突っ込んでくれた。私と与謝野先生で、壊疽後の取扱話で花が咲くと予測したのだろう。
次に超音波検査をするから、と検査台ヘ横になるよう指示を受ける。寝転がると、腹部に検査補助液を塗られる。冷たくて、ひんやり。赤ちゃんも冷たいのかな。少し、活発。
「随分元気じゃないか。太宰見えるかい?これがあんたの赤ん坊だよ」
「まだこんなに小さいんですか、女医」
「小さいって云ったってねえ、二十五糎、二八〇瓦はあるんだ。ほら、手足をこんなに動かして……」
先生が色んな角度から赤ちゃんを見せてくれる。それを真剣に見ながら私の手を握る治さん。
「見て!ねえ、指しゃぶってるよ!」
小さな指を、小さな口に咥えて。可愛くて可愛くて、思わず声に出た。
「早く抱っこしたいな……」
まだ性別は赤ちゃんが教えてくれ無さそうで、次の検診に持ち越しになった。男の子でも、女の子でも、どっちでも善い。治さんの赤ちゃん、それだけがあれば善いの。
「安定期に入ったとは云え、無理はしない。善いね?」
「社長には私から報告をします。現場には……」
「止めておきな。それを利用される可能性だってあるんだ」
「解りました。卯羅、今回だけはちゃんと云う事を聞いておくれ」
「赤ちゃん護るのが一番だもの」
超音波の写真を母子手帳に貼ってもらう。毎回の検診で貰えるそれは、私と治さんが親として歩み始めた証。
そのままの足で探偵社に向かう。
社長室で安定期に入った報告をする。春野さんが自分の事のように喜んでくれた。
「勝手なお願いだとは解っていますが、卯羅を事務方へ回していただきたい」
「調査員として、太宰及び他調査員の報告書等の整理を任せる形をとる」
「ということは、昔と変わらない?」
「そうだねえ」
矢張、私は彼の隣で、彼の支えとなる。それが示された道、選んだ路。
「明日の朝礼にて、皆に話す。善いな」
「はい」
二人で頭を下げて、社を後にした。