もういつ何が起こってもおかしくない。先月の中頃から休職をし、出産に備える。私も治さんも色んな事に慎重になってきた。嚔一つで私も治さんも動きが止まる。
そんな中、二人で修治のお洋服を買いに出た。予定は梅雨時期だから、肌触りの善いものを。お包みも三つぐらい欲しい。
「修治どんなの好きかなあ」
「多分可愛いの好きだと思う」
「何で?」
「卯羅がそうだから」
根拠は解らなかったけど、確かに私が手にしてるお包みは、熊の耳と顔が付いてる。だって小さい治さんがこれ着てたら凄く可愛い。
「小さいうちは、可愛い、で善いかなって……駄目かな……」
「まあ、着せたいもの着せられるのは、彼の好みが出てくる迄の間だろうからねえ」
「男の子目線で選んで!治さん!」
「そうだなぁ……とはいえ、見た目に性差が有るわけではないし、そんなに気にすることではないと思うのだけど」
新生児用のお洋服は、確かに色や柄こそ色々あれど、形は皆一緒だった。なら、善いのかなあ。
「そうだ、音がなる玩具とか在ったほうが善いのかな……でも音が大きく聞こえ過ぎたりしないかな……」
「卯羅、卯羅。焦らないで。この詰合を一つ買おう。お包みと、服と、玩具。凡て揃っている。あとは、好きなのを買い足せば善いさ」
「そうする……」
焦る私を引き留めてくれた。何で治さんはこうも私を解ってくれるのだろう。
一休みしようと、食事処に入った。何食べようかな。私が食べた物で作られる赤ちゃんの身体。元気で、丈夫な赤ちゃんが欲しい。
「卯羅」
品書きを眺める私の頬に、治さんの手が添えられる。「あまり考えすぎないで。思い詰める方が毒だよ」
「じゃあ好きなの食べる」
「後菓子付けても誰も怒らないさ」
オムライスと氷菓子。定食にすれば、お野菜も付いてくるし、善いよね。
背凭れと腰の間に、鞄を挟む。そうしないと腰が辛くて、座れない。見かねたのか、治さんが外套を挟んでくれた。
「ごめんね」
「何、謝ることじゃ無いさ。今君の腰には二人分の体重が掛かっているのだから」
「修治のパパは優しいね」
云いながらお腹を撫でると、答えるように修治が動く。一生懸命に私達に伝えようとしてくれてる。治さんにもどうにか伝われば善いのに。
「卯羅は、修治をどんな子にしたい?」
「どんな子……」
考えたこともない。どんな子、明るい子、元気な子、優しい子、強い子。出てくるのはどれも単純で、ありきたりで。でもきっと、治さんが求めているのはそうじゃない。
「人の道を踏み外さなければ善いかなぁ……」
「成る程ね。これは善い、善い答えだよ。何ね、子供だって一人の人間だ、生まれ持っての個性がある。それを矯正してまで育てる必要を感じなくてね。善悪の分別がきちんと付いて、優しい子であればそれで善いと思うんだ。優しい、というのは中々に難しい事かも知れないけど、意地の悪い事をしなければそれで善いよ。人として間違っていなければ、やんちゃだろうが、大人しかろうが、天然だろうが、何だって善い」
そう語る治さんは、視線を過去へ向けていた。
少しだけ関わり合った五人の子供。
「治さん」
「何?」
「修治はね、きっと大丈夫。さっきから治さんの声がする度によく動くんだもの、パパも大好きなのね」
「……ふふっ、卯羅は本当に可愛いね」
目を細めて笑ってくれる。
こうやって二人でゆっくりと時間を育める。今だけかもしれない。もうすぐ迎える新しい一歩。二人で踏み出せるように。