鯉のぼり、というのを久しぶりに見た。無論私のなんて無かったし、森さんが全構成員へと、游がせたものだけだった。
「やねよーり!たーかいっこいのーぼーぉり!」
愛すべき息子は、手持ちの出来る小さな鯉のぼりを持ち、お歌を歌って御満悦。乱歩さんと敦くんと共に作ったそうだ。
「ほら修治。君の兜だよ」
新聞で作った兜を被せる。
「しゅーじつよくなった?」
「中也ぐらいなら倒せるんじゃない?」
「そうだ、お菓子買いに行かなきゃ」
洗濯を干し終えた卯羅が呟く。
「しゅーじも!」
修治は先んじて、玄関に陣取り、靴を履く。私も一緒にと支度をした。
青く清んだ空。例の鯉を振りながら、楽しそうに歩く。兜もそのまま。
「置いてこなくて佳かったの?」
「パパがちくってくれたからね、しゅーじずっともってるの」
「じゃあ無くさないようにしないとね」
歩くのは母と一緒。私の入る余地はない。後ろから母子の歩く姿を眺められるのは特権。
「修治此処だよ」
目的地は社長お勧めの和菓子屋。柏餅は勿論、団子に最中、練菓子と様々。
「ママーおかしちがうよ?」
「此れはね、今日しか食べられないお菓子なの。あんこのお菓子だよ」
「おだんごがいい」
「お団子も買おうね。治さんは何が佳い?」
「私も団子。みたらした方ね」
各々人数分。お子はその場で寄越せと跳び跳ねた。
「お家で、お茶しながらね?」
「おだんごもつの!」
「お団子持ったら鯉さん持てないし、手々繋げないよ?」
「おだんご!もつ!」
幼児ならではの頑固さ。袋の片側を持たせると落ち着いた。
「パパのこいのぼりは?」
「パパのはねぇ、んー、何処かに游いでったよ。もう子供じゃあないだろって」
「しゅーじのもおよいでく?」
「修治が大人になったらそうなるかもね」
社宅へ戻ると、敦くんと賢治くんが空を見上げていた。
「おや、どうしたんだい?」
「太宰さん、社長が皆にって!」
「こんなに立派な鯉のぼりなんて初めて見ました!」
見上げると、三連に游ぐ鯉。
「いちばんおっきいのパパ!」
「違うよ、敦くんだ。敦くんと賢治くんと修治だ」
「敦くん丁度良かった!賢治くんも。柏餅買ってきたから、食べて」
「ありがとうございます!」
「敦くんはお誕生日お祝いもだね」
「あっくんおたんじょーび?」
「一応ね……あまり、そんな感じしないけど」
「おめっと!あっくんおめっと!」
兄貴分の脚に抱きつく修治。敦くんも初めてなのだろう。恥ずかしそうに、へへ、と笑う。こうしてみると兄弟みたいだ。却説、夜は社の皆と小宴かな。