「今夜は、うちへお泊まり下さい」
今回の事件──後に『蒼の使徒事件』と呼ばれる──の被害者である、佐々城信子女史を、連れて、社員寮へと戻った。玄関横の窓、漏れる音から察するに、卯羅が夕飯の支度をしてくれている。
私と卯羅は、結婚して一年に成るか成らないかの、所謂、新婚であった。元を正せば、幼馴染、上司と部下、男女の関係、どの言葉でも当てはまる。
「戻ったよ」
「治さん!お帰りなさい」
調理台に、蟹缶と日本酒を認め、私は心踊った。
「突然で申し訳無いのだけれど、客人を泊めたくてね」
「御客さん?」
卯羅の眼が訝しげに私を見る。そして其の儘の目付きで、後ろに控える佐々城女史を見る。眉間の皺が深くなった。
「只の被害者だよ。今回の事件で、拐かされてね?頼る親類も居ないそうだ」
「……そう」
不服そう。顔には出るが、態度には出ない。
「あの、本当に宜しいのでしょうか?」
「狭くて申し訳ない。何せ新婚なもので、物も揃ってはいないが、御一人で過ごされるよりは安全でしょう」
女史を卓に着かせ、私は茶を淹れる。
「どういうつもり?」
「歴とした探偵の仕事だよ」
其の嫉妬を湛えた眼を久しぶりに見たかった。帰宅した私を出迎え、背後に見知らぬ女を見たとき、妻が一瞬、異能を使おうとしたのが見えた。
「解りやすい」
「節操無し」
夕飯は温野菜と、蟹炒飯、中華風の汁物。何れも私の舌に合うように作られている。
「主人の好みに合うよう作っていますから、少々薄味かもしれません」
其の言葉が少し誇らしかった。
「丁寧な味付けをされるのですね」
「主人が美味と云ってくれるのであれば、手間は惜しみません」
女史が入浴中に、床を整える。私達夫婦は、隣室に蒲団を敷いた。不意に、卯羅が私の外套を引っ掴む。
「何で治さん以外の臭いがするの?」
「水槽を破壊したからねぇ。その水じゃあないかな」
「随分と甘美な臭いのする水ですこと」
どんどん不機嫌に成っていく。昔より、嫉妬深くなったと思う。
共に風呂へ入る。首筋に顔を埋めても無反応。受胎すらしていない腹を撫でる。
「やっと治ると思ったのに」
「女癖の悪さ?部下に手を付けた時点で気付きたまえよ」
「嫌い」
「ウソ言っている」
相当気に食わなかったのか、さっさと身を清め、上がってしまった。私はのんびりと、湯に浸かり、この後の事を考えた。予測される答えに、身体は既に歓喜していた。
今日限りの寝室に赴くと、妻はすっぽりと蒲団を被っていた。少し捲って覗くと、私の外套を抱き締め、口に含み、擦り付け、事に及んでいる。
「我慢できなかった?」
達したのか、吃驚したのか。声を掛けたら身体が跳ねた。
「珍しいじゃないの。自分で、だなんて」
恥ずかしそうに外套から、顔を出さない。腰の辺りは既に、濡れて変色していた。
「待っててあげるから、さ?」
彼女の顔の前に屈んだ。
「ほら、早く」
怠そうに上半身を起こした。そして、私の胸元を掴んで──引き倒された。欲に満ちた眼が私を見下ろしている。
「今日は治さんの言うことなんか聞かないから」
「どうぞ」
その許可にすら不服なのか、ムッとした表情は変わらない。口角が下がり、下唇を少し噛む。
丁寧に衣服を脱がされ、包帯を解かれた。卯羅は身ぐるみ剥がされた私を暫く眺めていた。既に雄は反り返っている。
「下から眺めるのも善い光景だよ。下乳の厚みが厭らしい」
「っるさい!」
乳で口と鼻を塞がれた。此れで窒息死出来るのなら何れだけ善いか。
「治さんは、私のよ。昔からそう。私だけの人なの」
乳房に吸い付いた。自ら圧し当ててくる。周囲を優しく舐め、乳首を食す。まだ乳は出ないが、少し期待してしまった。歯を立てると悶える。腰に力が入らないらしく、私が乳を堪能している間に陥落した。
「ほら、私を犯すんじゃないのかい?」
彼女を抱きながら、体勢を建て直す。首に腕を回して挑発してくる。堪らなくて、口付けた。矢張、主導権を握りたい。後頭部を押さえつけられ、離れられない。彼女の舌が、私のを絡め取ろうと這う。慣れない事をする姿に、興奮しない訳がない。
「済まない」
今度は私が押し倒した。圧倒的に見馴れた光景ではあった。
「いつもの景色はどうだい?」
咥えろと云わんばかりに、雄を口許へ突き出す。膝立ちになり、口に含む。丁寧に愛撫される。裏筋に口付けられ、頬を寄せられ、先を吸われる。彼女だって、私の好い所を知り尽くしている。漏れ出る汁を啜る音が、卑猥なまでに響く。竿を掴む指に填められた、指輪が厭らしかった。
それを思ったらもう、止まれなかった。頭を押さえ付て固定し、夢中で腰を振る。そして咽喉の奥に最初の精を放つ。噎せながらも、必死に飲み込む。
「厭らしい。淫乱だよ。昔から淫乱」
「治さんの所為だもん」
両腕に挟まれ強調される乳。谷も、深く、深く、形成される。芯をつねれば、腰が跳ねる。
「治さん……っねえ、エッチ、しよ?」
じゃあ今しているのは何だ。自ら蜜壺に指を入れ、掻き回す音で私を誘惑する。よくも此処まで調教したものだ。自分の努力を褒めたい。
「私、そんな事教えた?」
「ほし、っい……治さんの、が、欲しいっ」
目線を合わせる。恍惚で、眼は潤み、蕩けている。少し開かれた口からは、絶えず息が漏れ、意味を成さない音を発する。蜜を絡めるのを止めない手に、手を重ねる。見事なまでに濡れていた。妻の指を、一本ずつ舐め、獲れ高を確認する。上出来だ。
内部へ指を入れる。其れだけで脱力して、私に抱き着いてくる。けれど、手は、私のを慰めようと、扱き始める。
「もっと……おくぅ、ん…おく入れて」
「卯羅、下視て?指輪がこんなに濡れているよ」
中指を伝い、垂れた蜜が、私達の関係を濡らし、照らす。羞恥が襲い、指を更に締め上げる。
「一回、イこうか」
指を折り曲げて、上壁を刺激し続ける。腰をゆらゆら動かしながら、腹で逸物の先を擦り、耳元で喘ぐ。堪らなかった。全身で私を感じている。何度経験してもそそられる。
「其処っ……!ぁっあ、だめ、イっちゃ、ぁっんんっんっく……ぅ」
親指で外陰を押し、中指で上壁のツボを押す。ぎゅうっと指に圧が掛かる。
「とんだ子だよ。隣に御客人が寝ているのに」
耳元で囁いて、キスした。指を抜いて、味見をした後、私に跨がるよう指示した。
「君が動いて」
待ち望んだ様に、ゆっくりと腰を落とし、肉壷へ雄を仕舞い込む。暖かく、狭い。重力を伴い、嫌でも最奥へ口付けを受ける。其の快に耐えられないのか、暫く動かなかった。
見事な光景だった。咥え込む秘部、揺れる乳、快楽に溺れる表情。総てを一望できた。出入りする其れを見る度に、粘液が濃くなるのが解る。私の腹に手を置いて、必死に快楽を貪る。
「おさむさんっ!ぁっ、あんっ…わたしの、わたしのなのっ!お、さむ、さんは、わた、し…のな、のぉっ…」
妬いて、乱れて。君以外に恋現を抜かしたことなんて、一度もない。
あの頃の私には、君を抱く勇気が、無かったのだ。
もう焦れったくて。泣きそうに成りながら、私を貪り、所有権を主張している幼馴染。
「卯羅、可愛い。もっと、乱れて、私を呼んで」
「お、さ、むっ……!お、さ……ま、たおっき、くなったぁ……ん!」
膨張で達した。身体を仰け反らせ、頂点に達する。その締め付けで、私も達した。
「まだイけるね?」
騎乗も善いが、私には此方が性に合う。四つん這いにし、尻を向けさせる。頭が回らないのか、隣室とを隔てる障子に、頭を向けている。
「聞こえるよ、それじゃあ」
「善いの、治さんは駄目って、教えるの」
其の言葉で、これ以上無い程に反り返る。先走りが腹を伝う。壷の底を目掛けて、勢い善く挿入る。其れだけで達するのだから、随分と淫乱な妻だ。
「また勝手に……今日は私の命が聞けない?」
「だってぇ…ん、いっぱ、いほしっ……いからぁ……」
「淫靡だねぇ。そんなに、好き?」
「り、りゃぃ……すき……っ!」
上半身を押さえ込んだ。潰され、体躯からはみ出る乳房。掲げられ、愛撫され、打ち付ける度に、揺れる尻。臍の周囲を撫でたら、更に絞まった。
「い、っん……きもち、ぁっ……はぁぁっ、い」
「そんなに絞めたら鬱血するよ」
必死なのが愛しい。
「おなか、きゅぅ…んて、するっ!ぁっおさむさ、ん!おな、かぁっ」
雌としての本能か、孕む準備を始めた。
「いいよ……もっと感じて……」
なるべく最奥まで突き上げる様、律動を早く、そして荷重を掛けた。
ろくに言葉を発せ無くなった妻。突く度に短く声が漏れる。得も言われぬ、悦が私の腰を支配した。
「注ぐよっ……ぁあ善いね?」
「い、よ……っ、お、く、っんぁぁっお、くぅんっ……だ、し……ってぇぇっ」
腰を引き寄せ、固定し、自分のを入れ込む形で、子種を注ぎ込んだ。影が、獣の其れだった。
総てを注ぎ、萎えたのを引き出す。身体を痙攣させながら、息を整えようと必死な卯羅。腰をゆっくりと落としてやり、楽な体勢を取らせる。
「可愛い。主導権握ろうとして……速いよ君には」
「おさむさん……好き……」
無自覚に腹を撫でる妻を見て、雄としての予感が走る。
「私も、愛しているよ」
蕩けた眼が眠気を帯び、私の胸へすり寄る。抱き締めて、頭を撫でる。何時に成れば、私は君のものだと、実感するのだろうね。額に口付けて、私も眠りに落ちた。
翌朝、三人で探偵社へ出勤すると、国木田くんが、あらぬ勘違いを起こしたのは云うまでもない。