満月。夜の闇が青く輝く。
あの人はどうしているだろうかと、想う。暗がりよりも、月光に照されている方が、怖い。得体の知れない恐怖が、背から襲う。
また、来ないのだろうか。重い衣を脱ぎ捨て、来ぬ人を待つ。御簾が少し揺れた。
「待たせたかな」
待っていた声だった。艶のある青年の声。躊躇なく、中へ招き入れる。
「治さん」
「──の使い魔だよ。まさかって顔しているね。ほら、触ってごらん」
微かに獣の臭いがした。私の手は右目に巻かれた包帯を撫でていた。そして其のまま、九つの尾を順に確めた。
「主に似ているから無理もないさ」
「御用は?九尾」
「君の相手を仰せつかってね?」
言葉と共に、容易く押し倒された。
「私も人の相手をするのは初めてだよ」
「妖となんて御免よ」
「そう言わないで?私だって、彼なのだから」
それから、あの人がするように、小袖を肌蹴させ、首筋に舌を這わす。獣の舌の感触が、「今、何をされているのか」を物語っている。人とは違う感触。捕らえた獲物を、咬み切り、擂り潰す為の口。
「雌の匂いだ。人も獣も同じじゃないか」
独り言のように九尾が呟いた。
"彼"なだけあって、私の悦を知り尽くしていた。鑢のような舌が、乳房を這う。輪と蕾には触れず、只、ひたすら舐め回す。
「たった此れだけなのに。焦れったいだろうね。でもね、主から云われているのだよ。『美味しい処は取っておけ』と」
性悪狐。
身体の中心を、這いながら、下へ辿り着く。遠慮なく、脚を開かれ、まじまじと眺められる。
「何も思わないの?」
「あの人が視ているのでしょう?九尾の眼を通して」
「そ。実に美味しそうだよ。彼は独りで此れを貪っていたんだね?」
狐の舌が、秘部を舐め上げた。じっくりと、果汁を吸い取るように。その感触に腰が嫌でも浮いた。使い魔は、楽しそうに嗤った。蜜の味を気に入ったのか、それとも、私の反応が悦に入ったのか。桃へかぶり付く姿に酷似していた。
「っ……あっ駄目よ、其処は!」
舌が中へ入ってきた。蜜を吸い上げながら、犯されていく。獣特有の舌使いに、腰が動く。恥ずかしい程に、好い処へ当たるように、動かしてしまう。
「やあ、下準備は終わったよ」
急に、九尾が舌を抜いた。切なさが身体を支配する。使い魔は、主人に場所を譲った。そして、自分は、私の身を起こし、背後から抱いた。
御簾の向こうの影に、思わず脚を閉じる。九尾の尾が、内腿を這い、脚を開かせる。御簾が捲られ、待ち人が入ってきた。
「上出来だよ」
「治さんっ……」
「久しいね、卯羅。嗚呼、こんなにも私を待ち望んで居てくれたんだね?」
主人の指が、開かれた其処を撫でた。嬉しさと、恥ずかしさで、私は達した。腰を情けなく跳ねさせるのを視て、笑いながら、狩着を脱いだ。
「九尾も脱げば善いのに。今日は私たちで愛すのだから」
前後から、主人の顔に視姦される。背に当たる、人の物とは違う其れ。どちらも欲しくて堪らない。
私は二人の物を慰め始めた。
主人のを口で慰め、九尾のを扱こうと、手を伸ばした。主人が手下に合図をしたと思った矢先、後ろから押し倒された。尻を掲げ、犯せとまざまざ示すような体勢。目前には、立派な逸物。竿に口付けて、ゆっくりと咥える。全身に愛しい人の匂いが回る。その快楽に夢中で舌を這わし、吸い付いた。根元に口付けると、腰を震わせた。
腰をひんやりとした感触が包んだ。背筋が震え、自分でも驚くぐらい、厭らしい声がした。
「善い声だよ」
「な、に?!九尾、駄目、そんなの挿入られたらぁぁっ……ん…!」
異形と交わった。人のとは違う。初めての感覚、快楽、総てに溺れる。
「お口が疎かだよ?咥えて」
「んぐっ……んんっ……」
激しく突き上げる九尾と、主人の匂いで頭がおかしくなる。そのうち、狐が覆い被さってきた。更に奥へと突かれ、体位を保てなくなり、前へ崩れた。咄嗟に物から口を離す。
「あっ、もう駄目、来ちゃうぅっ治さん、止め、て、無理よ、ぁっん……治さん、嫌、きゅ、び……っ」
声に成らなかった。妖の逸物で頂点に達してしまった。人のとは比べ物に成らない快楽。まるで此の快を獲るためだけに、付属しているかのよう。根元の球で栓をされ、確実に孕ませる準備をされる。打ち付けられ、放たれる度に、達した。
「狡いじゃないの。使い魔の癖に」
「下準備をすると言ったろ?」
身を動かす気力が残らない私は、二人の人形だった。天井を眺めながら、次の快を待つだけ。主人の口が、乳房の蕾を啄む。そして、節操の無い私は、彼のを、自ら膣内へ導いた。
「欲しい?」
「出して……」
身震いした。その勢いで、最奥まで突き上げられた。其の後は、止まらなかった。
「妖に犯されて、夫に犯され、嬉しそうじゃないか」
「おさむ……っほしい……」
脚で治さんの腰を抑え込む。九尾は、乳房に自分のを挟み込み、腰を揺らす。目の前の淫猥な光景に我慢できなかった。律動に合わせて、球を舐める。
「卯羅ぁ……淫らだよ……凄くそそる……!」
眼が恍惚を帯びている。息遣いを荒くしながら、私をひたすらに求めてくる。
「す、きっぁんっ、くぅ……んどっちも好、いっ!」
「あ、るじっ…私、私、もう……」
乳房を無造作に集められ、深部に熱いものを感じた。九尾の液が、青白く光っていた。其れに私達夫婦も、興奮した。力の限り、主人のを締め上げ、主人は更に身を大きくした。中を削るように突かれ、奥からは、先客がかき混ぜられる水音が響く。
「いっ……其処もっと!ほし、ぃい!」
よがり、乳房を揺らし、自分で蕾を食み、狐に授乳する。
「出すから……!善い、ね?」
「きてぇっ……奥っお、く、ぅ……!」
悲鳴に近かった。歓喜の悲鳴、悦楽の悲鳴。太宰治の種子を身体の芯で受け止めた。精を放っても、暫くそのままだった。ゆっくりと引き抜かれると、誰のかもう、検討も付かない白濁が、秘部を伝った。その感覚と、背徳に、身体を震わす。
「物足りない?」
身体を、支配された。霊気に充てられたのだろうか。これ以上無い位、太宰治と、その使い魔の子種が欲しかった。
「孕ませて……?」
青い月光は人を惑わす。主人と九尾は、揃いの顔で、にたりと、口を歪めた。