14 : 決意を秘めた瞳







「起きてください、ヒスイ。」


子安ヴォイスが聞こえたと共に現実に戻される。







「あれ?ジェイド・・・?ここは・・・」

「アルビオールの中ですよ。まったく、また無茶をなさりましたね?」


じろり、と赤い瞳がレンズの奥からあたしをとらえる。

そうか、エンゲーブであたし、10回目で疲れ果てて・・・寝た?
というかもう9回目くらいから意識が無かったように思うんだけどなぁ。


「シンクがヒスイ様のこと、連れてきてくれなかったら大変なことになってたんですよぅ?」


アニスがシンクを指差して言った。仮面を押さえてシンクが「瞳孔が開きっぱなしだったんだ」と軽く説明付ける。
ん?それってもしかしてもしかしなくても結構ピンチだった?


「あはは、ごめんね。良かったよー死ななくて。」

「さらっと怖いこと言うなよな」


ふと後ろを振り返るとガイがいた。
あたしの肩を抱いて「立てるかい?」と支えてくれる。

そういえばガイってなんであたしだけには触れられるんだろう?
前もこんなこと思ったなぁ・・・と思ってちらりとガイを見る。

同じことをルークが思ったみたいで素直にガイに聞いた。


「なんでガイ、ヒスイには触れるんだ?」

「さぁなぁ。恐怖って感情が出てこないんだ。」


俺にもさっぱり、と言うガイにふーんとルークはあたしをまじまじと見た。
隣に腰掛けているジェイドが顎に手を当てた。


「多分、ヒスイにはなんらかの音素があふれているんですよ。
 それがガイの恐怖の信号を出す神経を和らげてる・・・と私は推測しますが。」

「たしかに、ヒスイさまってば安心しますしねー」


なんのこっちゃいとつっこもうとしたとき、扉が開いた。
ティアとナタリアが息を切らして走ってきたみたいだ。


「大佐!大変です!
 戦争が・・・戦争が始まっています!」


ティアの一言であたしとシンクを残して全員操縦室に移動したようだ。
それを見計らってシンクがあたしに近づいた。仮面を外して、あたしを覗く。


「もう、大丈夫だね。アンタ・・・最後の方の転送かなり無理してたでしょ。
 まるで・・・」


彼は何を言おうとしたのか、口を噤んでしまう。
心配しすぎだな、シンクは。

わしわしと頭を撫でてひょい、と立ち上がった。

操縦室には口元に手を当てて状況をなんとか飲み込もうと必死なナタリアが目に入る。
これから先、もっともっとつらいのに。


「戦場がここなら・・・キムラスカ軍の本陣はカイツールですわ。
 わたくしが本陣に行って、停戦させます!」

「エンゲーブも気になるわ、あそこは・・・。」


ティアの言葉にぱ、とあたしは手を上げた。
視線があたしの手の平に刺さった。


「っと、ティア。エンゲーブの住民は一人残らずケセドニアに転送したよ」

「どういう・・・」


わけのわからない、というティアに代わってジェイドが口を開いた。


「つまり、ヒスイはこの状況を"知って"いたんですね?」

「・・・そう、"予想"してたの」


そう言うとジェイドは少しだけ口元を上げて「あなたがそれほど聡明だったとは」と笑った。
失礼だなぁ・・・確かに、そうだけど!


「ではキムラスカの本陣であるカイツールに向かいましょう。」

「あ、ジェイド。あたしはケセドニアに先に行ってるよ」


あたしがそういうとぴくり、とジェイドがあたしを見た。
何か不味いこと言った・・・かな・・・?

シンクがあたしの手をぎゅ、と握った。


「ケセドニアにはオキラクトがいるんでね、合流しなきゃこっちの都合が悪いわけ」


そうシンクが言うとまだ怪訝な顔をして(っていっても僅かにだけど)そうですか、と言った。


「ではノエル、私たちをカイツールで降ろしてから彼女とシンクをケセドニアで降ろし、待機していてください。」

「はい、では発進します!」


ジェイドの言葉にノエルが頷いた。
後ろでシンクが微かに舌打ちしていた。





ケセドニアにつくとシンクがため息を吐いた。
疲れてるの?って聞けばアンタの馬鹿さにね、と言われる。


「アンタ、"先にケセドニアに行く"って言ったの覚えてないの?」

「う、うん、言ったけど・・・・・・・・・あ。」


先に・・・それは即ち、彼らが"後で"ケセドニアに訪れることを表す言葉。
だからノエルをケセドニアで待機させたのか。


「他のヤツらは気付いてないと思うけど、あの死霊使いは気付いてたよ。
 ほんっと、馬鹿だね」

「ば、馬鹿馬鹿いわないでよ・・・今すごい後悔してるんだから」


肩を落として砂を踏んだ。
とりあえずアスター邸に行かなければ、今後の対策を講じないと。
そのためにはラクトと合流する必要があるわけだし。

アスター邸でラクトが早速出迎えてくれた。


「ヒスイ様!シンク!お体のほうは大丈夫ですか?」

「うん、少し疲れてるけど・・・ラクト、エンゲーブの住民は?」

「しっかりと皆さんいらっしゃいますよ。」


にっこりとラクトが笑ったとき、アスターが頭を下げた。


「ヒスイ様、お疲れでしょうから客室をご用意させてもらいました。
 暫くお体をお休めください。」

「ありがとうございます、アスター」


あたしが深々と頭を下げるとヒヒヒヒ、と笑った。
ああ、この笑い方いまでも苦手だ・・・。

部屋に入ってとりあえず汗と泥だらけの服を洗濯機(っぽい譜業)につっこんで頭からシャワーを浴びた。
次は、イオンと共にダアトに戻る。
そのためにまずシンクを開放してこっそりダアト行きの船に乗せればよさそうだな。
あとはラクトは・・・念のためアニス同様ルークたちにつかせておく・・・。

クポが新しい服を取り出してこれに着替えろ、と言った。
コスチュームチェンジ多いよなぁ、あたし。


「ヒスイ」


シンクがシャワーから上がったあたしに何かを投げてよこした。
ぱし、と受け取るとどうやらフルーツだった。
かぷりと一口食べると、甘い味が広がる。


「ありがとう、超美味しい・・・」

「暫く食事してなかったしね。」


そういって同じものをシンクは口に含んだ。
あたしがベッドに座るとラクトもちらり、とこちらを見た。


「これからどうなさるおつもりですか?」

「あたしとシンクはダアトに向かうよ。」


シンクはこっそりついてきてね、と言えばなんで?と首をかしげた。
そりゃあ、ここにモースがいるからですよ、って笑ったらああ・・・と嫌な顔をした。


「"ヴァン派"のシンクがあたしと行動してたらモースとしても警戒すると思うし・・・」

「では、私はどうしましょうか?」


りんごに手を伸ばしてしゃく、とかじるラクトに、少し頭を下げた。


「悪いけど・・・ルークたちと行動してほしいんだよね。暫くの間、という意味だけど」

「ヒスイ様が仰るならそうしますね。ですが、無理はしないでください」


わしわしと頭を撫でられて、こくり、と頷いた。
あたしと行動するよりはラクトはルークたちといる方がいい。
世界がどうなっているかを順を追って理解していく彼らと一緒の方が・・・。


「じゃぁちょっと横になるね、なんだかひどく疲れてるからさ!」


ラクトにキムラスカ側の酒場前で待機してイオンがきたら起こすように言うと、あたしはベッドにもぐった。
最近ひどく疲れが溜まる。多分アルビオールの中で結構寝たはずなんだけど、なぁ。





しばらく爆睡した後、ラクトがあたしの身体をゆすった。


「ヒスイ様、起きてください。導師イオンがいらっしゃいましたよ」

「ん、んー・・・?」

「ヒスイ、僕です。ダアトに行く船に乗りましょう?」


イオンがあたしの腕をひっぱって起こした。
こくり、と頷いて寝癖がついた頭を撫でた。


「大詠師モースと共に僕とヒスイはここで失礼します。
 ラクト、アニスをよろしくお願いしますよ」

「はい、イオン様。イオン様もヒスイ様をよろしくお願いします」


ぺこり、とラクトがお辞儀をするとはい、と嬉しそうに彼は笑った。
シンクは船に侵入することができただろうか・・・ううん、愚問だよね。


「さぁ、参りましょうか、ヒスイ」

「ダアトで・・・秘預言を確認するんだよね。」


意味のないことだけれど、イオンが自分の手で確認すべきだと思っているのだから、そうさせなければ。

暫くダアトにいることになるだろうな、と思ったあたしは無意識にクポの頭を撫でて乗船した。







08.08.01 14 -- 唯一の愛をくれた貴方を、僕は守ると誓った。





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