大丈夫なんだろうか。
あの人は今日もクマがすごい。
私の勤める会社は、始業時間が早い分終業時間も早い。
8時から16時半までで、ほぼ毎日定時で帰れる。
ホワイト企業なんだろう。
8時勤務開始なので7時過ぎには電車に揺られてる。シンジュクまで20分くらい。
私がその人を見つけたのは、3ヶ月前くらいだと思う。
いつも乗る車両がホームの階段近くにあるからか、いつも混み合っててキツかったから別の車両に乗ることにした日に見つけた。
スーツを着て、社員証を首から下げてるからどこかの会社に勤めるサラリーマンだと思う。
社員証そのままで大丈夫なのかな。
すごく疲れているのか背中は曲がっていて、顔は前髪であまり見えないけどクマがすごいことだけ分かる。
心の中でお疲れ様です。と呟いた。
私と同じでシンジュクで降りるらしい。
次の日。
またあの人を見かけた。
昨日と同じで、とてもクマがすごい。
大丈夫なのかな。
そして、毎日見かけ続けて3ヶ月経った。
あれ、私ストーカーみたいじゃない?
びっくりしたのは、あんなに疲労困憊でクマもすごいのに毎日出勤してること。
私だったらあんなに疲れてたら、体調崩して休んじゃう。
尊敬しかない。
ちなみに今日のあの人は、席に座れたみたいで寝てる。
いつも立ちっぱなしだから座れててよかった。
私はいつも通り吊り革につかまって立ってます。
『次は、シンジュク〜、シンジュク。お出口は右側です』
あの人を観察してるとすぐシンジュクに着いてしまう。
よし今日も頑張ろう。
もう着くけど、あの人まだ寝てる。
・・・降りないのかな。
でも、もしかしたら今日はシンジュクで降りないのかもしれない。
いやいや、3ヶ月毎日シンジュクで降りてたの見てたし。
うーん、よし、声をかけよう。
今日は、あの人に近いところに立ってるし。
知り合いかのように話しかければ、周りの人にも怪しまれないはず!
「あの、」
ぽんぽん
肩を軽くたたく。
「ん」
とても眠そうだ。
「えと、もうシンジュク着きますよ」
「っ、ぇ。あ、ありがとうございます…」
声かけちゃった。
迷惑じゃなかったかな。
さっさと降りちゃおう。
ふぅ。
今日あの人に声をかけて、初めて顔を見た。
クマはすごいけどイケメンだった。
なんだかいい気分。
また朝が来た。
今日はいつもより早起きできたから、二本も早い電車に乗れた。
駅前のカフェでゆっくりしようかな。
今日はあの人を見れなかったけど、ちゃんとシンジュクで降りれたかな。
また次の日。
今日はいつも通りの電車に乗る。
やっぱりあの人が気になってしょうがない。
あ、いた。
今日は座れなかったんだ。
なんだかキョロキョロしてる。
何か探してる?
いつも通りまぁまぁ混み合う電車の中なので、何を探してるのかは全く分からない。
距離も離れてて観察できない。
早くシンジュクに着かないかなぁ。
『次は、シンジュク〜、シンジュク。お出口は右側です』
よし、やっと着いた!
降りる時にあの人と目が合ったような?