久しぶりの再会

「それじゃあお疲れ様」
「お疲れ様です。橘さん」

律儀な奴だなっとハルは俺の隣で言う。
今日は珍しく定時退社だ。
ハルと俺は付き合いが長いけど社会人になって一緒にどこかに出掛けるという事はほとんどなくなった。
理由は分からないけどハルが久しぶりに飲みに行こうと誘ってきたのだ。

「へぇ〜結構いいお店だね」
「まぁな」
「真琴、ハルおせぇーよ」

店に入るとビール片手にこちらに手を挙げて俺達を呼ぶのは凛だ。

「ぇえ!?凛?」
「なんだ。ハルから聞いてねぇーのか」
「サプライズだ」
「もうハルったらびっくりしたよ。それにしても久しぶりだね、凛」
「ああ。ハルが真琴から面白い話が聞けるって言うから来たんだよ」
「すみません。ビール二つとサバの塩焼き一つ」

ハルが知ってる俺の面白い話ってなんだろうと考えていると当の本人はマイペースに注文をしていて聞くに聞けなかった。

「年下の可愛い後輩落とそうと必死みてぇーじゃねぇか」
「必死ってそんなんじゃないよ?」
「仕事中ずっと見てるだろ」
「うわぁーお前、ストーカーにだけはなるなよ」
「ならないよ!」
「で、その後輩とどこまでいったんだよ」
「彼女、苗字さんって言うんだけど、付き合った事ないみたいでとりあえずお試し期間ならどうかな?って提案したら了承してくれて」

俺が凛に苗字さんとの事を説明している間、ハルはビールをチビチビ飲みながら鯖の塩焼きを黙々と食べていた。

「で?ヤったのか?」
「さすがにまだそんな事できないよ。そういうのも初めてだろうから徐々に進めていこうかと思って、キスはした」
「キスねぇ〜」

どうせ凛はディープなキスまでしたんだろ?と言わんばかりの笑顔を俺に向けてきた。

「苗字はスタイルがいい」
「え?」
「服で隠されてるが脱いだらすごそうだ」
「ちょっとハル〜どんな想像してんだよぉ〜」
「真琴が想像してるよりマシだ」

確かにハルの言うように苗字さんで変な想像して他人には言えない厭らしい事してるけど、ハルにそういう風に言われるなんて思ってもみなかったからちょっとだけびっくりしてしまった。

「まさか真琴、お前...彼女を想像して、なんてしてねぇーだろうな」
「...ちょっとだけ」
「ぷっ、ホント真琴は昔から素直だよな」
「普通そういうのって隠すぞ」
「言うように仕向けたのはお前らだろー」
「でも真琴、彼女初めてなんだろ?しばらくはそういう雰囲気に慣れさせて、真琴は一人で我慢しとくんだな」
「うわぁー他人事だと思って」
「だが凛の言う事は正しい」
「お前、暴走すると一番やべぇ〜からな」

なんとなくそれは自分でも分かってる。
週末出掛けようと約束はしたものの名前ちゃんを目の前にして我慢ができるかと言われたら正直、自信がない。

「週末、彼女と出掛けるんだ」
「どこ行くかとか決めたのか?」
「自宅はやめておけ」
「ハルの言う様にいきなり自宅に誘うのは俺の理性が持つか分からないからとりあえず映画とかかなぁ?」
「真琴、もしもの時の為に宅急便でアレ送ってやるよ」

凛の言うアレはこの時、分からなかったけど後から届いた物を見て絶句した。