014

「ハァ!?マジ!?」

夕食時、怒号を上げたのは倉持先輩だった。

「あぁ、俺も見た」
「俺も…」
「俺も女子と歩いてんのは見たけど、あれ玉城さんだったんだ…」
「あのヤロ〜〜…!!」

今日は文化祭1日目で、御幸先輩が玉城と一緒にいたという目撃情報が集まって大きな話題を呼んでいた。だって、文化祭で男女二人きりで過ごすなんて、付き合ってるとしか考えられないし…。

「あっ!!おい御幸!!」
「え?何?」

ちょうど食堂に入ってきた御幸先輩がただならぬ様子を察知してギクリと顔を引きつらせた。

「何?じゃねーよ!!お前今日玉城さんと一緒にいたってマジか!?」
「え…あ〜…ウン」
「…ハアァァ!!?」

ウソだああ、と崩れ落ちる倉持先輩と、なんなんだよ、と佇む御幸先輩。

「テメェ俺に仕事を押しつけておいて玉城さんとデートとはいい度胸じゃねーか…!!」
「え〜だって…ミスコン終ったら好きにしていいって言われてたし〜…」
「…つーかなんでテメェが!!玉城さんと!!」
「ミスコンのあと暇そうだったから誘ったんだよ」
「チッ…明日はクラス手伝えよ!!」
「え…無理」
「あぁ!?なんで!!」
「明日も約束しちゃったから…」
「は?」
「…玉城と。」

エヘ、と照れ笑いをする御幸先輩を睨む倉持先輩の顔がヤバイ。

「なっ…!?な、ま、まさか…つ、付き合ってんのかよ!?」
「付き合ってないけど…」
「…けど?」
「…狙ってる{emj_ip_0173}」
「……!!?」

はっきりとそう宣言した御幸先輩を前に、倉持先輩だけでなく、様子を見ていた1,2年も皆言葉を失って顔を見合わせた。

「はっはっは〜」
「テメッ…ニヤけやがって…」
「へっへっへ」
「クソッ殴りてぇ…!!」

わなわなと拳を握る倉持先輩にハラハラしつつ、玉城への好意を曝け出す御幸先輩にも驚いて、皆御幸先輩を見ていた。当の御幸先輩はマイペースに楽しそうに笑っていた。


***


「たっましっろちゃ〜ん♪」
「……。」

教室の入り口でひらひら手を振る御幸先輩に、玉城が鬱陶しそうに目を細めた。

「何…?」
「そろそろミスコン移動するだろ?迷子にならないように迎えに来た!」
「なるわけないでしょ!」
「はっはっはっ さ〜行こうぜー」

す…すごい積極的…。誰も入る隙が無い。御幸先輩って肉食系…?
御幸先輩に玉城が連れていかれて、教室にいたクラスメイト達はしばし呆然とした。

「…やっぱり付き合ってるんだよー」
「そうなのかな〜やっぱり…。なんかショックー」
「ね〜。御幸先輩カッコイイと思ってたのに」

クラスの女子たちが囁き合って、諦め交じりのため息を吐いた。

「でもさ〜玉城さんじゃね…」
「うん…お似合いだよね」
「誰も文句言えないよね〜玉城さんだったら」
「逆もね。玉城さんもモテるけど、相手が御幸先輩じゃ誰も文句言えないでしょ。」
「あれだけの美男美女だし、有名人同士だもんね〜。」
「ふたりもお互い以外は眼中にないんだろうなぁ」

そうだよなぁ…、と俺も心の底で頷いた。俺なんてきっと眼中にない…。
なにより、クラスでは大人しい玉城が、御幸先輩相手だとあんなふうに言い返したりしていて、それがなんだか…少しくやしい。



***



ミスコン優勝者は玉城、ミスターコン優勝者は御幸先輩で、文化祭の目玉イベントが一つ幕を下ろした。
発表が終わって賞金としてクラス費が手渡されると、玉城と御幸先輩はクラスメイトにお礼を言われるのを避けるかのように、仕事は終わったとばかりに二人でどこかへ行ってしまったのだけど、誰も引き留めなかった。というか、できなかった。体育館を出て行く二人に声をかけるのは、どう考えても邪魔ものでしかないように思えてしまって…。

ふたりだけの世界。
きっとすぐにでも、この文化祭中にでも付き合い始めるんだろうなと諦め交じりに思ったし、お似合いだとも思った。

狙ってる、と御幸先輩は言っていた。
それはたぶん、他の男への牽制の意味もあった。
御幸先輩は玉城のことが好きなんだ…。

じゃあ…玉城は?

「なぁ!玉城光ってこのクラス?」

受付で不躾に尋ねる他校の男子生徒にクラスの女子が委縮していて、俺は急いで駆け付けた。

「え、いや…」
「他のクラスのとこで1Aって聞いたんだけど?」
「どこにいんの?」
「玉城さんはクラスには来ませんよ。」

俺が割り込むと、男子生徒たちは俺を睨んだ。

「昨日騒ぎになって、先生に止められてるんで」

そう言うとそいつらは顔を見合わせ、つまらなそうに去って行った。

「東条君ありがとう!昨日からああいう人多くて…」

困り果てて嘆く女子に、わかるよ、と頷いた。

「俺受付代わるよ?男がいた方が絡んでくる奴少ないでしょ。」
「え〜でも東条君見た目からして優しそうだからあんまり効果ないかも。」
「あ。そういう事言うなよー」
「あはは!でも、じゃあお願いしてもいい?」
「うん。」

快く頷いて、それまでビラ配りをしていた俺は女子と仕事を交代した。

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