006



「だから〜…入れるんだって!中に!」

野球部男子寮での雑談の内容なんて、半分が野球、そしてもう半分は…ほとんど下ネタ。
入れる、だの、中、だの、なんてことないワードなはずなのに、なぜか反応してしまうのが男子高校生…。

「何話してんだよ?」

信二があきれ半分、興味半分、みたいな調子でそこのグループに割って入った。だけど信二や俺の邪な想像は当たっていたらしく、皆下ネタを話すときの少しにやけた顔で話し出した。

「いや女子がさ。セーリになったのってわかるじゃん。」
「はぁ?」
「なんかトイレ行くとき袋持って行ったら100パーそうだよな〜。」
「いや、俺のねーちゃんいつも袋持ってトイレ行くぞ。口紅とか入れてんだよ」
「学校で口紅なんか使わねーだろ」
「ニオイでわかるって!血生臭いじゃんセーリ中の女って」
「え〜?わかんねーよ」
「それよりさっきの話!セーリってアレつかうじゃん。」
「アレって?」
「オムツみたいなやつ。」
「オムツぅ?」
「白い四角いさ…CMとかで見たことあるだろ?」
「あぁなんだっけ…」
「アレな」
「そう、アレはさ、オムツみたいにパンツに敷くんだけど、セーリの時中に入れる棒みたいなヤツがあるんだってさ!」
「…は!?」
「中って…」
「だから、チンコ入れるところに棒入れんだよ!」
「は?何で?」
「そこから血が出るからそれを止めるんだろ」
「えぇ!?」
「……。」

みんな少しの間沈黙した。その間、皆の頭の中に駆け巡っている妄想はお互いに想像がついた。

「…気持ちよくなっちゃうじゃん」

一人がニヤニヤ呟いて、他の奴が大きく噴き出して爆笑した。

「お前バカだろww」
「えっだってヤるときと同じ穴だろ!?」
「エロッww」
「え、女子皆入れてんの!?セーリのとき!?」
「いや皆かどうかは知らんけど…運動部は結構多いらしい」
「なんで?」
「動くと、オムツみたいのだと血が漏れるけど、中に入れる奴だと外に漏れないんだと」
「なんでお前そんなに詳しいんだよww」
「つーか待てよ、じゃあそれ入れてる女子ってもう処女じゃないってこと?」
「……。」

未経験か経験済みか、俺たちは敏感になる年頃。そして、中学から高校にかけて急に大人っぽくなる女子たちに、興味がわく年頃…。
ここでいろいろ言っていても、そもそも女の子の体の構造も、生理の仕組みもよくわかっていないのが本当のところ。

「お前ねーちゃんいるんだろ、どうなんだよ。」
「知らねーよ。ねーちゃんとそんな話しねーよ普通」
「は〜?」



***



「はよー」
「おはよ」

朝、洗面所で信二と会った。顔を洗って歯磨きをして、信二は剃刀を取り出し、ちらりと俺を見る。

「…お前髭ないよなー」
「え?あー、うん。全然」
「いいなー」

じょりじょり、信二がひげをそるのを見て、俺はそっちの方が男らしくて羨ましいけど、と思う。

「あっ!御幸コラふざけんなてめぇ!!」
「朝からうるせーなー倉持」
「てめぇがふざけるからだろが!!」

御幸先輩と倉持先輩がふざけ合いながら洗面所を出て行った。

「…あの二人、いつも喧嘩してるけどいつも一緒にいるよな」
「仲いいよね。」

頷くと、そうか…?と信二は眉をひそめて首を傾げた。

「…つーか、知ってる?」
「何?」
「御幸先輩、アソコがデカいらしい」

へ、と空気を飲み込み、俺は苦笑した。

「へぇ…」
「2年じゃ一番だって。3年だとやっぱ結城主将がデカいらしいけど」
「何で知ってるの?」
「噂だよ噂!」

信二、そういうの気にするんだ…。

「けど一番はやっぱあの人だとよ。」
「誰?」
「監督だよ!馬並みだって沢村が言ってたぜ」
「う、馬!?」
「そこまではアレだけど、やっぱデカいほうがいいよなー」

いいなー、と、信二は遠い目をして剃刀を洗った。

「え…信二も別に…小さくはないじゃん」
「小さくはないってなんだよ!余計傷つくわ!」
「え?でも、普通だろ…俺とそんな変わんなくない?」
「いやまぁ普通だよ!普通だと思うけど、デカほうがいいだろやっぱ、男としてはよー」

そうなの?デカいほうがいいの?
…普通でいいと思うけどなぁ…。



***



「おはよう。」

教室に入ると、後ろの席の花城さんが俺を見上げて、目が合って、挨拶してくれた。何度か鷹野さんを交えて雑談したことがあるから、最近は会えば挨拶できるようになったのだ。

「おはよう!」

朝から嬉しい気分になって挨拶を返し、席に着いた。

「ねー、誰かアレ持ってない?」

すると教室にやって来たクラスの女子が、困った様子で友達のもとに駆け寄って何かを尋ねまわった。

「ゴメーン、今日は持ってない。」
「え〜どうしよ、サキは?」
「ごめん、私もない。」
「あ、花城さん!アレ持ってる?」

後ろの席の花城さんのもとに駆け寄る女子たち。なんとなく振り向いてはいけない気がして、気にしていないふりをして携帯を開いた。

「あるよ。はい」
「ありがと〜!明日返すね!」
「いいよ、そんなの。」

花城さんは白いポーチを女子に手渡した。女子はそれを持って教室を出て行った。
…袋…。あれって…生理の…?
花城さんが持ってるってことは、花城さん、生理なのかな…。
…って!何考えてんだ俺!変態じゃん…!

けど…。

生理…ってことは…。花城さんも、棒を…中に…?

……!!ヤバイ、他のこと考えよう…!!

「東条君、ちょっと動かないで。」
「え…!?」

ふっ、と首筋に何かが触れた。声の主は花城さん…

「いいよ。」

そう言われて、首筋を抑えて振り向くと、花城さんは微笑んでいた。

「襟が折れてた。」
「え…!あ、ありがとう!」

かーー…と顔が熱くなった。そして…

「…!!」
「…どうしたの?」
「い、いや!なんでもない!」

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