015

「おい御幸!!花城さんと付き合ってるってマジかよ!!!」
「……。」

その日の夜、寮で純さんを筆頭にした2,3年に詰め寄られ、俺は長いため息をついた。
麻生のヤツ…言いふらしやがったな…。

「…麻生から聞いたんですか?デマですよ。」
「は!?じゃあどういうことだよ?」
「どうもこうも別に…何もないですけど」
「おい麻生!どうなってんだ説明しろ!!」
「純さん、麻生のヤツ自室にこもって泣いてるらしくて出てきません…」
「アァ!?」

矛先が麻生に向いたところで、俺はこっそり寮を出た。
…学校では広まってなきゃいいけど…。



***



「御幸君!!1年の花城さんと付き合ってるって本当なの!?」
「御幸マジ!?いつから!?」
「花城さんってあの花城光!?」

「……!!」

翌日、教室の入り口でクラスメイトが俺を取り囲んだ。ここに来るまでも、廊下で自棄に視線を感じるなと思ったけど…もう学校にも広まってるなんて…!!

「いや、それデマだから…」
「デマ?」
「嘘だから」
「嘘?」
「嘘って?」
「ほんと?」
「どっち?」
「嘘だよ、ウソ。違う。」
「え?え?」
「付き合ってんの?」
「違う違うマジで」
「どっちなの?」
「御幸君!」
「だから付き合ってねーって!ありえねーから!」

はっ…、と息を飲んだ。二つの青い瞳が、俺の目を捉えていたからだった。
花城…、なんで、ここに。
青い瞳はゆっくりと伏せられ、花城は何も言わずに俺の後ろを通り抜けていった。少し駆け足で、逃げるように。

「……ほら、向こうも迷惑してんだよ、もうやめろよ」

俺がそう言うと、クラスメイト達はまだ興味を捨てきれない様子で、渋々解散していった。
こんな噂…男嫌いの花城からしたら、迷惑に決まってる。俺のこと、特に嫌ってるようだし…。謝った方がいいのか…でも、別に俺が噂広めたわけじゃねーしなぁ…。
ま…顔見たら声かけてみるか…。



***



そのチャンスはすぐにやって来た。
休み時間に飲み物を買いに校内の自動販売機に行くと、花城を見かけた。隣には鷹野と東条もいた。

「だからさ、私もそう言ったんだって!」
「あはは。さすが鷹野。」
「ねー、光もそう思うでしょ?」
「……。」
「光?おーい」

鷹野が花城の顔を覗き込むと、花城ははっと我に返った。

「あ…、ご、ごめん」
「大丈夫〜?やっぱ今日元気ないよ〜」
「大丈夫。ぼーっとしちゃった」

そう言って笑う花城の横顔は、どこか痛々しくて…確かにいつもと違う、と思う。
いつも俺の前じゃ俯いてたり、元気もないけど、今はそれよりもなんだか…悲しそうで。
ま、まさか…あの噂が広まってるのが嫌すぎて?

「あっ」

俺に気が付いた鷹野が目を丸くし、意味深に花城を見た。やっぱ噂のこと気にしてんのかな…。
緊張しながら花城の目が俺を捉えるのを待った。俺を見て、俺に気付いた花城は、一瞬固まって、そして……

「さ…先戻るね」
「えっ、光…」

顔を背けて、足早に廊下の向こうへ行ってしまった。
今…逃げられた!?

「あ…御幸先輩、あの〜…」

遺された鷹野と東条は気まずそうに気遣うような目を俺に向けた。

「ちょっと今日、光、元気なくて〜…。先輩から逃げたとかじゃないんで…」

えへへへ…、と鷹野は苦しい説明をしながら苦笑いをした。

「…もしかしてあの噂のこと気にしてんの?花城」
「あっ、それは違いますよ!」
「え?違う?」
「光、こういうのはしょっちゅうですから!」
「……。」

それはそれでどうなんだ…。
…けど、もし本当に噂のことで元気がないってわけじゃないとしたら、原因は…?
俺を避ける…理由は?

「じゃ…俺なんかしたっけ?」
「いや〜、うーん、わかりませんけどぉ…」
「……。」
「今日の帰りにでも聞いてみますよ!」

にっこり、鷹野は肝の据わった笑顔を浮かべた。
やっぱこいつ、花城の保護者だ…。

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