「御幸先輩…。」
目の前の、制服姿の花城が、赤い顔でもどかしげに俺を見つめてくる。
その手はゆっくりと、ひとつひとつ、ブラウスのボタンを外していって……その間から、真っ白な胸元が露わになる。
「…花城」
遮るように、花城は顔を近づけ、俺の唇を塞いだ。小さな手が俺の手を取り、自らの胸に導く。花城の胸…。俺は夢中で揉みしだいた。
「んっ…。あん…。」
花城は喘ぎながら、俺に跨ってくる。
「先輩…。」
みずから制服を脱いでいき、一糸纏わぬ姿になった花城は、今度は俺の足の間にかがみこんで、俺の肉棒を取り出した。物欲し気に唇を擦り付け、赤い舌の先で竿を舐め始める花城。
「ん…。先輩…。…んっ…」
美味しそうに、愛おしそうに肉棒を舐め、時々俺の表情を確かめるように見上げ、かすかな微笑みを浮かべて、また肉棒に夢中になる…。
花城…。やばい、可愛い…。それに、気持ちよくて…
「先輩…。御幸先輩……」
花城が俺を求めて、こんなに乱れて…。こんな…。…こんな最高の、……夢……
「――――っ!!」
はっ、と目が覚めた。まだ部屋の中は暗い。まだ夜……つーか、夢か…。いや当たり前か…。
……あー…花城の…あんな夢……。やばいだろ。つーか勃起してるし…。…夢精しなかっただけマシか。
「……。」
まだ頭の中が悶々として、ムラムラして、俺は木村の寝息を背に部屋を出た。
外の便所へ行き、一番奥の個室に入り、先ほどの夢の内容の続きに思いを馳せ、また硬いままの肉棒を取り出す。
花城の姿を思い描くことに、少しの罪悪感と背徳感、そして抗えない高揚感を覚えながら――すぐに手の中に熱を吐き出した。
「……。」
はぁ、はぁ…、と暗闇に自分の呼吸が響く。
……花城をおかずにしてしまった…。
***
「御幸〜、お前昨日の夜さ…」
「えっ?」
翌日、肩を組んで話しかけてきた倉持にぎくりとした。
「地震あったの気付いた?」
「は?」
「2時頃かな…ぜってぇ揺れたと思うんだよな」
「倉持先輩まだ言ってんすか?気のせいですよ気のせい!俺は揺れなんて感じませんでしたよ!」
「うるせー沢村!お前は火事でも起きねーだろが」
「起きますよ!!!バカにすんな!!」
「あ?んだとコラ」
「うわあああ!春っち助けて!!」
沢村を追いかけて行く倉持、小湊の方へ走っていく沢村。平和な光景を眺めながら、なんだ…、と安堵した。
昨日便所でオナニーしたのバレたかと思った。
「よお!久しぶり」
ぽん、と肩が叩かれ、俺は振り返った。
「…真田!」
そこにいたのは薬師の真田。後ろには轟や三島、秋葉もいる。
今日は薬師との練習試合だからだ。
「お前主将だって?」
「ああ…真田もだろ?」
「まあな。お互い苦労が多いよなぁ〜」
真田はそう言いながらも楽しそうに目を細めた。
「…だな」
俺は苦笑いをして、遠い目で沢村たちを眺めた。
「つーかやっぱグラウンド広いな!あっち何?」
「寮だよ。隣は室内練習場」
「室内練習場!?そんなのあるのかよ、羨まし〜」
「はっはっは」
「うわ〜、やっぱいいなぁ、野球漬けって感じ…」
あれ。
門の傍に花城が立っているのを見つけて、俺は一瞬足を止めた。真田も気づいて、俺の視線を辿って花城を見た。
「え?お前の彼女?」
「…違う」
短く答えて、俺は花城の方に歩み寄った。真田もついてきた。
花城は俺に気付き、顔を上げた。…今日もレオタード。上にジャージはおってるけど。
「どした?」
俺が声を掛けると、じろじろ見ている真田を気にしながら、花城は紙袋を持ち上げた。
「あの、これ…届けに…」
「ああ…」
ちらりと見えた中身は、先日貸した俺の服だった。
「ありがとうございました…。」
花城は赤い顔で言い、俯いて、立ち去ろうとした。
「ども、こんにちは!」
しかし、真田が声を掛けてそれを阻んだ。花城は戸惑った顔で真田を見上げ、会釈を返す。
「え、青道生?どういう知り合い?」
「…後輩。」
「へえ〜!」
じろじろじろ、真田は興味津々に花城を見つめる。花城はちょっと居心地が悪そうに肩を竦めた。
まさか…真田の奴…
「あ、俺真田俊平っていいます。薬師高校の2年っス。君は?」
「…花城光…です」
「花城さん。」
はい、と頷いた花城に、真田は爽やかな笑顔を浮かべた。
「スゲェ美人ですね。」
「……。」
さらりととんでもないことを言う真田に、花城は顔を赤くして黙り込んだ。
「…お前いきなり何言ってんの?チャラ〜」
「なんで?本当のことじゃん。俺、好きな子にはガンガン行くタイプなんだよな」
な、何言っちゃってんの?好きな子!?
「つーかホント美人じゃん!超タイプ。」
「はっはっは、情熱的〜…」
「いやいや!お前贅沢だな〜!こんな可愛い子ウチのガッコにはいねーぞ!」
「……。」
花城、どんどん赤くなって…なんかまんざらでもなさそうなんですけど…!?おいおいおいちょっと待て!
「花城さん!あとで連絡先教えてよ」
「え…。」
「な!練習試合終わったら聞きに行くから」
「…えっと…。」
「あ、部活中?それ何部?」
「…新体操…です」
「新体操!?なるほど!めっちゃ似合う。何時に終わるの?」
「いやもう…終わってて、帰るところで…」
「え!じゃあちょっと待って!えーと」
真田は周りを見渡し、手をあげた。
「秋葉!何か書くもん持ってない!?」
「え?」
秋葉は荷物からノートと鉛筆を取り出しながら不思議そうな顔でやって来た。
「サンキュー」
真田はそれを受け取り、紙を破ってサラサラと何かを書くと、花城に差し出した。
「これ電話番号!連絡待ってるから」
「……。」
それを受け取る花城を見て、じわりと胸の奥がざわついた。
「あ!つーか肝心なこと聞いてなかった。花城さん彼氏とかは!?」
「…い、いません」
「ほんと!?よっしゃ!」
「……。」
ここまでオープンに好意を曝け出されるのはさすがに初めてなのか、花城は丸い目を瞬いて、赤い顔で真田を見つめる。真田もそんな視線に気づき、花城を見つめて、急に顔を両手で覆った。
「あ〜〜〜、ヤバイ、めっちゃ可愛い…」
「……。」
花城は赤い顔で俯いた。
「真田ー!行くぞ!」
「あ!今行く!」
遠くで薬師の奴が真田を呼び、真田はぱっと切り替えたように花城を見た。
「じゃ…花城さん!またな!電話待ってる!」
「あ…。」
走っていく真田を見つめ、俯いて紙を見つめ、ちらりと俺を見上げた花城の顔はまだ赤かった。
「…か 帰ります」
「あ…おう」
そう呟いて。花城は逃げるように踵を返した。
まさか花城、電話なんて…し、しないよな…!?
花城は男嫌いなんだ。きっと…しない…はず。…多分。
……頼む、しないでくれ…!!
***
夏休みが開け、2学期が始まった。
「……。」
「……。」
廊下で花城と遭遇した。
「おはよ。」
「…おはようございます」
挨拶すると、ちょっと驚いたように俺を見て、会釈を返してきた。…相変わらずよそよそしい。
全然脈なんかない感じだよなー…。っていうか…真田に電話…したのかな…。
「…その後どーなった?」
「え…?」
「服盗まれたって」
花城は少し目を伏せ、言葉に迷うような表情をした。
「…また何かあったのか?」
「いや、あの…」
言葉に迷う…というより、俺に言うかどうか迷ってるのかもしれない。だけど急かさず待っていると、花城は決意したように言った。
「…か、関係あるか、わからないですけど」
「うん」
「…家の…洗濯物、が、いくつか…」
「…盗られた?」
「…多分…。」
「いやそれ確定だろ!そんで?」
「えっと…な、中で干すように…」
「いやそういうことじゃねーって!警察とかにいったんだろ?」
「え…。」
「行ってねーの!?」
信じられない。なんてわきが甘いんだ、花城。心配で放っておけない。
「親は?」
「……。」
なぜか言い辛そうにまた口を閉ざしてしまう花城。すると、時間切れを継げるように予鈴が鳴り響いた。
「あ、やべ…。…花城!また後で話そう!」
ぽん、と花城の背中を押して見送って、俺も教室に戻った。
しかし…学校の更衣室からも、家の洗濯物からも…なんて。
花城を狙ってるとしか思えない…。かなりヤバいんじゃないか?これ…。