「御幸君!おはよう。」
少し緊張した笑顔で声を掛けてきたのは、飯田だった。
「おう…おはよう」
「夏休み、頑張ってたね」
「え?」
「音楽室の窓からグラウンドが見えるの。」
目を瞬いた俺に、飯田は気恥ずかしそうにはにかんで、髪を耳にかけた。
「あ、私…吹奏楽部に入ったの。」
「あ…へぇ、そうなんだ」
「来年は甲子園で吹けるかな…なんちゃって」
えへへ、と飯田はまたはにかんだ。
…飯田って…
「練習しとくね。ねらいうち。」
……結構、巨乳だよなぁ……
「あ…あ〜、はっはっは…」
「うふふ。あの曲なんか御幸君っぽい。」
「そう?」
そうだよ、と飯田が肩を竦め、二つの塊が揺れる。
「……。あ、じゃ…じゃあね。」
「あ、おう…」
会話が途切れると、飯田ははにかみながらそう言って、教室に駆け込んでいった。
――ずしり、と肩が重くなって、横を見ると、倉持がニヤニヤしながら俺の顔を覗き込んでいた。
「なんだよ」
腕を払いのけながら歩きだすと、倉持もついてくる。
「お前飯田と仲良かったっけ?」
「別に普通だよ」
「ヒャハハ。さっき何話してたんだよ!」
「別に…」
「あれ〜〜?花城さんはいいのかなァ〜〜〜?」
「うぜぇ…」
「でもよ〜、飯田アイツ、…デカいよな」
胸の前で膨らみを描いて見せる倉持。俺はつられて笑った。
「何言ってんだよバーカ(笑)」
「2年の中じゃ一番だろ!付き合ったら揉み放題だぜぇ〜?ヒャハハ」
「うわ〜倉持のエッチ〜」
「ヒャハハハ。テメーも巨乳派のくせに」
「まあ理想は長澤ちゃんだな〜」
「理想高っ!」
「いやいや巨乳がとは言ってねーだろ、長澤ちゃんの良さはあの笑顔…」
「ぶっ…くっくっく」
背後から噴き出した声がして、俺と倉持は振り向いて…硬直した。
お腹を抱えて笑いを堪える鷹野、と、その隣で気まずそうに目を逸らしている花城…。
…うわ最悪!!花城にエロトーク聞かれた…!?
「なんか聞いちゃいけないこと聞いちゃった〜ごめんなさーい!」
鷹野はそう言って、きゃははは、と遠慮なく笑いだした。
「…どこから聞いてた?」
「付き合ったら揉み放題!」
「……。」
「……。」
最悪のタイミングじゃねーか…!!
「あははは!そんなに気にしなくて大丈夫ですよぉ〜!先輩たちもフツーの男の子ってことですよねぇ!」
「……。」
「いや…花城はドン引きしてるんだけど」
くっそ…この間のことでちょっと距離縮まったと思ったのに…!こんなことで幻滅されるなんて…!!
「えーそんなことないよねえ?光。」
「……。…どうでもいい」
ふん、とそっぽを向く花城。顔が赤い。
ちら、と見てしまった花城の胸は…まぁ、控えめ。花城は細身だし…
「でもそっか〜。御幸先輩巨乳派かぁ〜。あははは」
「ちょ…やめろ」
「…司、早く行こう」
花城が鷹野の腕を引っ張った。
「気持ち悪い。」
「……。」
「……。」
とんでもない威力の追い打ち台詞を残して、花城は鷹野を引っ張って去っていった。
…最悪だ…。
***
from:真田俊平
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突然だけど、夏休み明けてから花城さんと話した?
真田から奇妙なメールが届いていた。それに気づいたのは夕食の後で、俺は自室でその返信を打った。
『話したけど?』
短い一文を送信した。あまり花城の情報を与えたくない。返事はすぐに来た。
『何て?』
……。何なんだこいつ。何を聞きたいんだ。
『普通に挨拶とか雑談。何で?』
『俺のこと何か言ってない?』
『何も。』
一言送ると、その後しばらく返信が途絶えた。ショックでもうけてるかな、と考えて、ふと思いつく。そういや…俺にこんなメール送って来るってことは、もしかして、花城から電話が来てないってことか?
『お前に頼みがあるんだけど』
しばらくして、真田から返事が届いた。
『花城さんに、俺が電話待ってるって伝えてくれない?』
…やっぱり。
俺はついつい、口元がにやけた。
『やだ。』
「ふっ」
送信ボタンを押して、つい小さく噴出すと、木村が不思議そうに俺を見た。
「どうしたんですか?」
「いや…何でもない」
やばいやばい。つい笑っちまった…
「お風呂行ってきます。」
「おー」
木村が籠を持って部屋を出て行き、俺は椅子の背もたれに寄りかかって、携帯を開いたまま真田の返事を待った。
だけどしばらく待っても返事はなく、俺は携帯を閉じた。
怒ったか?それとも諦めた?まあ、いいか…。
…つーか、俺も電話、できてないんだけど…。
せっかく連絡先交換したけど、花城からは何も来ないし、俺から電話しても、何を話したらいいか…。それに今日、あんなことがあったし…。
あ〜〜〜、どうしよ…。