028

体育館内に花城さんの姿がなく、探しながら外に出ると靴箱のところで花城さんを見つけ、安堵して駆け寄る。花城さんは女子たちに囲まれていて、少し困った顔をしていた。

「花城さん、明日頑張ってね!A組代表!」
「花城さんならかわいいから大丈夫だよー!絶対優勝だよ!」
「あの速水先輩とダンスできるかもよー!美男美女でお似合いだよ!」
「ねー!」

「花城さん!」

俺が駆け寄ると、俺を花城さんの彼氏か彼氏候補だと思っているらしい女子たちは、あっ、ごめん邪魔して!とニヤニヤ楽しそうにしてはしゃぎながら去っていった。

「すみません、中、人混みがすごくて、外で待ってようって思って…」
「全然平気!それよりすげぇな、ミスコン推薦なんて!」

可愛いもんなー!と言うと、花城さんは少し顔を赤らめて、どこか困ったようにうつむく。うれしくないのかな…?まあ、注目されるのが苦手な子もいるし、花城さんはおしとやかだからそういうタイプなのかもしれない。

「応援するよ!俺、花城さんに投票するし!まあ、俺が投票しなくても花城さんの優勝間違いなしだろーけど!」
「いえ………、」
「でも他の男と踊るかもしれないってのは、嫌かも…なーんて」
「……。」

ごくり、と緊張した様子でつばを飲み込む花城さん。…どうしたんだ?何か、深刻そうに見えるのは気のせい?

「花城さん。」

と、誰かが花城さんを呼んだ。近づいてきたのは、初めて見る男。背が高く、さわやかな二枚目だ。

「初めまして。2Bの速水です。」
「…初めまして」

戸惑いながら挨拶を返す花城さん。こいつ、さっきのミスターのほうのシード枠か…。余裕なのか、俺を完全無視しやがった。

「花城さん、疲れたんじゃない?どっかで休む?」

負けじと俺もそいつを無視して花城さんに提案すると、そいつは不敵な笑みで俺を見た。

「もしかして、彼氏?」

いえ、と首を振ろうとする花城さん。しかしそれより早く、そいつは続けた。

「…じゃないか、さん付けだし。」

言うじゃねーか。俺は花城さんとそいつの間に進み出た。

「そーだけど、今初デート中なんだから、邪魔すんなよ。初めましてクン。」
「……。」

そいつは笑顔のまま固まった。不意打ち成功。

「行こうぜ、花城さん。」

有無を言わさず、花城さんの細い腕を掴み、俺は人ごみの中を進んだ。花城さん、いくらなんでも競争率高すぎるぜ…まあ、そのほうが燃えるけど。

「あの…、」

後ろから花城さんのか細い声が聞こえた。応えるように、花城さんの腕をつかむ力を少し強めた。ここは男らしく強引に、ちょっと人気の少ないところにでも連れてって、そこで…もっとアプローチをかけよう。明日は来られないし、そもそもそう簡単に会えないし…!

広場を通って校舎の間を進んでいき、人の流れに逆らって校舎の裏を目指す。どこの学校でもひと気のない場所と言えば校舎裏に決まっているだろう。

「…あ、あの……」

大人しくついてきていた花城さんがまた声を出した。

「ごめん。少し二人っきりになりたい」
「……。」

花城さん、今どんな顔してるだろう…。あーくそ、今絶対顔真っ赤だから、花城さんのほう向けねぇ…!!
とにかく今は人のいないとこに…。そこで男らしく口説く。少しくらい強引なほうがいいだろ…!
いよいよ人通りが少なくなっていき、校舎の角を曲がって、大きな日陰の中に踏み込んだ。空気がひんやりとし、俺の熱い頬を冷ましていく。

「あの…、…っ、…や、やめて……」
「え、?」

と、突然、花城さんの腕をつかんでいた手が引っ張られて、俺は振り返った。花城さんはくずれ落ちるように膝をつき、弱弱しく泣きそうな顔で、しゃがみこんでしまっていた。

「え、え?ど、どしたの?体調、悪い?」
「…っ」

ふるふると首を横に振り、涙を堪える花城さん。ど、どうして!?俺、何かした…?

「ごめんなさい…」

花城さんはつぶやいて、腕を振り払い、立ち上がり。そして…逃げるように、走って行ってしまった。

「…え?」

…いったい何が起きたんだ…!?

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