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『続いてのニュースです。…訃報です。
数多くの事業を手掛ける大手財閥グループの代表、花城章光さんと、その弟で副代表を務める、花城光人さんが、14日未明、乗っていたヘリコプターの墜落事故により、亡くなっていたことがわかりました。』

朝のコーヒーを飲みながら、部屋に響いたアナウンサーの言葉を聞いて、俺は、呆然と立ち尽くした。
画面に映る、よく似た二人の男。似ているけど、そのうちの一人は、間違いなく前に学校で会った…光の父親だった。

『葬儀は近親者のみですでに執り行われており、後日お別れの会が執り行われるとのことです。…』

亡くなったって。そんな…突然。
じゃあ…光は、両親を亡くした事になる。

今、家族とどんな関係なのかさえ、俺にはわからないけど…。
昔、俺を呼び出し、光と別れろと告げた、あの圧倒的な威圧感を放つ男。
逆らったら何をされるかわからないと肌で感じるほどの鋭い眼光と、頭の先からつま先まで棘でも生えているかのような緊張感。あの人が死んだ…なんて。にわかには信じられない。

光…大丈夫なのか…?



***



『…帰って…。』

震える光の声が今もよみがえる。泣きそうな顔で、うつむいて。あんなに拒絶されるとは思わなかった。
正直…ちょっとは、期待していた。再会を喜んでくれるんじゃないかって…。

そして…

倉持と、ずいぶん親しそうだった。高校の時から倉持は気があったとはいえ、全然そういう感じじゃなかったのに。大人になって、二人の間にいったい何があったのか…。
考えれば考えるほど、モヤモヤする。焦り?この俺が、倉持に?…昔じゃ考えもしなかった。
倉持に光を奪われそうだなんて…。

…いや…違うか。奪われるなんて…思い上がりも甚だしい。
もう光は、俺の恋人じゃないんだから…。


…もう…少しも俺のことは、好きじゃないんだろうか?
これっぽっちも?

ああ…嫌だな。考えたくない…。


布団にうずくまったとき、枕元でスマホが着信音を流した。けだるさを覚えながら手を伸ばし、スマホをとる。画面には亮さんの文字。珍しいな…何だろう?

「…はい、御幸です」

この人の電話を無視したら後で面倒なことになりそうだから、俺はおとなしく通話ボタンを押した。

『久しぶり。元気?』
「はい…まあ」
『なんか覇気のない声してんじゃん。』
「そう…ですかねえ…。…何か用ですか?」
『何?用がなきゃかけちゃいけないわけ?』
「そ、そういう意味じゃないですよ」

相変わらず気難しいというか…やりづらい人だ。これでこの人は面白がってるんだから、タチが悪い。

『まあいいや。ネットの記事見た?』
「え?…何のです?」
『お前の記事だよ。決まってんだろ。』
「俺の…?…??日本シリーズのことですか?」
『ちげぇよ。相変わらずムカつく奴だな。』
「…じゃあなんです?」
『お前と光ちゃんのだよ。決まってんだろ。』

ひかり…。…光!?

「…え!?な…、なん、何の記事!?」
『おい、タメ口聞いていいって言った覚えはないんだけど』
「す、すみません。で…その記事って…?」
『見てないんだ?ネットで大炎上してんのに。』
「いや俺、SNSやってなくて…」
『ふーん。なんか、お前と光ちゃんが高校の時付き合ってたって、週刊誌に載ったらしいよ。』
「…え…。」

それって…。まずい…よな?やっぱ…。光は今はもう、すげえ有名人だし…。

『そんだけ。お前厄介なファン多いんだから、身の振り方気をつけろよ。じゃ。』

こちらの返事を待たずに、プツッと切れた電話。俺はホーム画面に戻ったスマホでインターネットを開き、検索欄に自分の名前を入れてみた。するとすぐさま検索予測一覧の一番上に光の名前が表示され、ドキリとする。
その検索予測をタップしてみると、ネットの掲示板のタイトルが目に飛び込んできた。

『シンデレラガール花城光・福岡ハードバンクホークス御幸一也、高校時代に付き合っていたことが判明www』

…心臓がうるさくなってくる。これ…やばいよな?いやでも別に、悪いことしてるわけじゃねーし…。
だけど…俺はともかく、光は仕事柄…まずいよな…。

ざわつく心そのままに、俺はそのページを開いた。

001:『シンデレラガール花城光・福岡ハードバンクホークス御幸一也、高校時代に付き合っていたことが判明www』
[45hbh]花城光と野球選手の御幸一也、母校同じだけど、高校時代付き合ってたのは有名な話。人目も憚らずいちゃついてたよ。花城は他にも何人か男子に唾つけてて、手のひらの上で転がして遊んでた。弄ばれて捨てられた男山ほどいるよ。その中で一番スペック高かった御幸が勝ち残った感じ。まあその御幸も卒業前に捨てられたけど。

002:ソースは?

003:誰が書き込んだかもわからないレスを信じてんのお前ら?

004:嘘松

005:これほんとなの「母校同じだけど」のところだけだろ

006:花城光に弄ばれるとかどんなご褒美?

007:あの顔で男遊び激しいとか最高すぎるお近づきになりたい

008:>007チーが相手にされるわけねーだろ

009:あんな美男美女さわやかカップルが青春を謳歌してヤリまくってたかとおもうと嫉妬で気が狂って死にそう

010:この前御幸テレビで告白してなかった?美人女優Hに

011:>010やっぱ花城光だったか

012:てことは付き合ってた説も振られた説も濃厚ってこと?

013:じゃあ花城光が男好きなのもガチなん?

014:どうせ信じてもらえないだろうけど花城光同級生だった。男に色目使ってたのはガチ

015:>014嘘松本人降臨?

016:>014同級生ってところにどっちとも仲良くなかったのが窺えるこれは嫉妬だってはっきりわかんだね

017:御幸ファンの喪女が暴れてるのはここですか?

018:>014はい名誉棄損

019:高校生同士付き合ってただけだろ?健全じゃん、なにを叩く要素があるんだか


炎上…ってコレ?こんなの信じる奴いるのか?まあ、光は迷惑してるかもしれないけど…
光の悪評は腹立つけど…俺と付き合ってたのは本当だし、有名になると周りにアレコレ言われるのはあいつもわかってるだろうし…そんなこと気にする奴じゃないのは俺もよく知っている。
なんか拍子抜けだ…光と付き合ってたことが世間にばれたと聞いて、ちょっと期待してた自分がいる…ってことだ。情けねー。なんてみみっちい奴なんだ俺は。いっそ大騒ぎになって、光が俺を意識せざるを得ない状況になればいいなんて…そんなせこいことを考えてしまった。

だから振られたんだろうな…俺。

あの頃も…光の婚約を何とかしたいって…デカい口を叩きながら、結局あいつの父親に圧されて引き下がった。何もできなかった。そんな俺に呆れたんだ…あいつは。

別れよう。

そう言った時の光の目が、今も脳裏にこびりついている。

できるなら。あの時に戻れるなら。

俺は何ができた…?

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