024


『さあ!お待ちかねの時間がやってまいりました!青道高校屈指の美男美女が集まるこのコンテスト!皆さんぜひとも目の保養をしていただいて、投票どしどしよろしくお願いしまーす!』
『1位予想を的中された方には豪華賞品も用意しております!』

ステージで盛り上げる司会者たちの声を聴きながら、俺は運営委員の誘導で裏口から体育館に入った。
ミスコン・ミスターコンの時間がついに来てしまった…。自分が出るのは嫌だけど、花城のドレス姿はちょっと楽しみかも。
…なんてのんきに考えながら、運営委員の用意した衣装に着替えるためステージ裏の控室に行くと、なんと哲さんがいた。

「御幸も出るのか。」

哲さんはネクタイを締めながら声をかけてきた。

「ええ…まぁ…亮さんに売られて」
「そうか、よかったな。」
「それ皮肉ですか?」

何がだ?と大真面目に目を瞬く哲さん。この人天然なんだよな。

「いえ…。でも哲さんがこういうのに出るなんて、意外ですね」
「ああ。俺も夏休みが明けてから知ったんだが、亮介が推薦書を出したらしい。」
「…あの人テロリストか何かですか」

制服を脱ぎながらぼやくと、そんなことないぞ、と哲さんはジャケットを羽織った。

「多分、俺のためにしてくれたんだ。亮介は優しいからな。」
「いやー優しい…ッスかねぇ…」
「ああ。うじうじするなというあいつからのメッセージだよ。」
「…?」
「優勝者同士は、後夜祭で一緒にダンスを踊れるからな。」
「……。」
「あいつに背中を押してもらったよ。」

哲さんはさっそうと控室から出て行った。
…えっと…それって…。哲さんに気になる女子がいて…その子はミスコンに出ていて…その子と踊るために出場を?…哲さんの…気になる子…って。…花城しかいねーじゃねーか!!

「っ…」

息をのんで、冷静になるために頭を振って、さっさと着替えた。嘘だろ、哲さん…本気で花城のこと…。花城にアプローチするために…。あーもう、どーすりゃいいんだよ!
哲さんと花城は、普段もよく一緒に帰ってて…花城は哲さんの前じゃ、睨むことも憎まれ口をたたくこともなくて、なんかいい雰囲気で…。ずっと気になってた…。だけど、まさか、こんな風にアプローチをかけてくるほど、哲さんが本気だったなんて…!
なんか急に焦ってきた…。花城が後夜祭で哲さんと踊る…?考えただけで嫌だ。
着替えて通路に出ると、ナンバープレートを渡され最後尾に並ばされた。隣には女子の列ができている。みんな白い少しずつデザインの違うドレスを着ていて、男子の視線にそわそわしている。男子も男子で、着飾った女子の姿にどことなく気恥ずかしそうに笑みを交わす。
花城…まだいないみたいだな。きっとすごく、似合ってるはず。花城って、真っ白なイメージだし…

きゃははは、とはしゃぐ声がして、振り向くと女子の控室から二人の女子がはしゃぎながら出てきた。そのうちの一人が伊藤さんだと気づき、目が合った瞬間、なんとなくモヤモヤして目を逸らした。
伊藤さんも出るのか…。…気まず。

…と、そこへ、女子の最後の一人…花城も控室から出てきた。

「……!」

…やばい。超綺麗…。
花城は白い花の髪留めをつけ薄く口紅を塗っていて、腰にリボンのついたロングのワンピースドレスを着ている。真っ白な鎖骨が見えていて、いつもより大人っぽくて、…色っぽい。
正直周りの女子がかすんで見える。花城は委員からプレートを受け取り、腰に着けながら歩いてきた。

「やっほー」
「……。」

隣同士、つとめて明るく声をかけてみたが、花城は俺をチラッと見上げると、無視してそっぽを向いた。…やっぱだめか…。さっき鳴が余計なこと言いやがって…、…ん?
ふと、花城のスカートが目に留まり、その違和感に気づいて、後ろに回り込んだ。そして――

「…!?ちょっと…何?」

咄嗟に花城のスカートの裾を握り、花城がぎょっとして俺を振り返った。

「ちょ、こっち向くな前向いてろ…!」
「なんで?っていうか離してよ!」
「裂けてる!」
「は…?」
「スカート!…裂けてる。」
「え!?」
「抑えてるから、こっち来い」

暗幕の裏に移動して、花城はスカートの破けを確かめた。お尻のすぐ下あたりから数本の破けた痕…。ハサミか何かで乱暴に切ったようにも見える。

「……。」

花城は何か心当たりでもあるみたいに、悔しそうに唇をかんでスカートを見つめた。

「ステージに上がる前でよかったな…スタッフに言っとくから、お前もう着替えて棄権…」

どうせ俺が無理やり推薦したんだし、ちょうどいいと思った。哲さんには悪いけど、そっちの心配もなくなるし。
でも花城は、立ち去ろうとした俺の袖を引き留めた。

「…何?棄権するだろ?」
「嫌。それじゃあいつらの思い通りだもん」
「え?」

そして俺を上から下までじろじろ眺めると、突然胸元に手を伸ばしてきた。

「わ!な、何だよ」
「これ貸して!」
「え!?」

これ、と花城が指したのは、ネクタイピン。つい言われるがままそれを外すと、花城はスカートの腰部分を回して裂けた部分を前に回し、ビッと傷を広げた。

「ちょっ…な、何してんのお前!?」

目のやりどころに困りながら、一瞬スカートの裂けた間から太ももの際どい部分がのぞき、咄嗟に目を逸らす。花城はスカートの破けた部分を広げて左足前の太ももからスカートの裾までをつなげると、俺の手からネクタイピンを取り、裂けすぎた上の部分を留めた。終わってみると、かなりセクシーにはなったがこういうデザインのドレスにも見えるようになった。

「お…おい花城!」

暗幕から出て行く花城。ほ、本当にこのまま出場する気か…!?

『さあ!大変お待たせしました!それでは出場者の登場です!!』

「男子ステージに上がって!ほら御幸君!」
「あ…、はい!」

花城…大丈夫か?
俺は花城を振り向きつつ、ステージに上がった。

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