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「やばい!!御幸先輩超かっこいい!!!!」

環がぴょんぴょん飛び跳ねながら顔を煽いだ。文化祭のミスターコンに御幸先輩が出場すると聞き、私たちは体育館に来たのだった。実は私は、結城先輩を見るのも目的だったり…。
ステージに現れた出場者たちはカッコいいスーツ姿で普段より大人びて見えた。だから環が興奮するのも分かるし、実のところ私も、結城先輩を見て悲鳴を上げそうになった…。野球部で厳しい練習をしてるからかな、御幸先輩もだけど、結城先輩、周りの男子たちより体つきががっしりしてて、スーツがとても映えて…って私なんか変態っぽい…!?

「御幸先輩だけネクタイ留めてなくない?」
「え?」

不意に、穂が不思議そうにつぶやいて、見てみると確かに御幸先輩だけネクタイピンをつけていなかった。とは言っても、遠目からだとそこまで目立たないし、おかしくもない。

「忘れちゃったのかな?」
「そういう衣装なんじゃない?」
「そんなのなくても御幸先輩が一番かっこいいからいいの!」

環がそう言って、はいはいわかったわかった、と茜が宥めた。

『それではお待たせいたしました!ミスコン出場者!絶世の美女たちの登場でーす!!』

うおおおお!と観客の男子たちが乗りで歓声を上げ、体育館内が揺れるようだった。ステージには白いワンピースを着た女子生徒が10人ほど並び、その最後尾の、ひときわ目を引くスタイル抜群の子の衣装が、スカートにスリットの入ったセクシーなものだったから、歓声が一転して大興奮の雄たけびに変わった。

「…ってあれ花城さんじゃない!?」
「え!?ウソ!?」

茜が珍しく声を上げ、だけど私も驚いてよく見ると、そのセクシーな衣装の子は間違いなく花城さんだった。メイクや髪形で雰囲気が違うけど…

「あ〜〜〜…腹も立たないくらい綺麗…」
「なんだそりゃ」

環がため息交じりに呟き、茜が突っ込む。腹も立たないくらい…うん、そうだ。花城さんは綺麗すぎて、女の私でも見惚れてしまう。実際、ステージ上で花城さんと並んでいると、他の女子たちは霞んで見えてしまうほどだった。

「花城さーーーん!!!」

うおーー!!と男子が掛け声を上げた。

「男子めちゃくちゃ盛り上がってるじゃん」
「花城さんファン多いからねぇ…」

…ステージ上の結城先輩も、花城さんを見てる…。

「女子は花城さんの優勝で間違いないねー」
「他の人には悪いけど、そうだね…」

同じクラスだし、一応友達…だし、文句なしに一番きれいだし、投票するなら花城さんに入れるけど…私たちの票なんかなくても、男子や来校者たちの票が殺到しそうだ。逆に言うと、他の女の子たちは多分、友達の票以外の獲得は難しいんじゃないだろうか…。残酷。
女子たちはマイクを回され、順番に自己紹介をしていく。そのたびに拍手が上がるけど、花城さんにマイクが回ると、体育館内は水を打ったように静まり返った。

『1年A組、花城光です。』

めちゃくちゃカワイイじゃん、芸能人?とどこかの他校の生徒が呟く。

『好きな食べ物はペカンナッツとオランジェット、苦手な食べ物はラベンダーです。』

「え?」
「なんて?」
「ペカン?ラベンダー?」

聞きなれない言葉が羅列し、皆ぽかんと疑問符を浮かべた。気づいていないのか気にしていないのか、花城さんはかまわず話し続けた。

『得意教科は英語、苦手な教科は数学です。』

「…全教科満点だったよね?」

『趣味はアーチェリー、乗馬、スケート、特技はピアノです。』

「……。」
「……。」
「……え?」

な、なんか…嘘かほんとかわからないくらいお姫様のイメージそのままなんだけど…。でも花城さんがこんなことで嘘吐くかなあ?ってことはガチ?それはそれで…すごすぎるんだけど…何者?

『お付き合いしている人は、いません。』

おおおおお!!と、今日一番の歓声が上がった。一呼吸おいて、花城さんはまたマイクを口元に近づけて微笑んだ。

『…初恋もまだです。』

うおおおおお!!!!と、ついさっきの歓声を覆す大歓声が上がった。

「す…すご…」
「花城さん、わかっててやってるなら恐ろしい…」
「うん…無敵…」

『部活動には所属していません。生徒会の総務をさせていただいています。いたずらで推薦書を出されて、出場することになりましたが…』

そこまで言いかけると、なぜか御幸先輩が小さく噴き出したのが分かった。

『今日は立候補のつもりでステージに上がりました。応援よろしくお願いします。』

花城さんがお辞儀をして締めくくると、大喝采が響いた。すでに人気はダントツ1位だ。よほどの番狂わせがない限り、ミスコン優勝者はこのまま花城さんで決まりだろう…。

『さあそれでは、出場者たちに特技を披露していただきましょう!』

司会が進行し、出場者たちは全員一度ステージ裏に戻った。
それでもなお、数人の男子たちが、花城さんの名前を呼んで盛り上がっていた。



***



ミスコンの特技披露も終盤。

「や、やば…」
「すごすぎ…」

体育館内には流れるようなピアノの音が響き渡っていた。ステージ上でグランドピアノを弾いているのは花城さんだ。どこかで聞いたことがある気がするクラシック。ピアノには詳しくないけど、めちゃくちゃ難しい曲だってことはわかる。
少し暗くて悲しげな、憂鬱な感じの…だけどとてもきれいな曲だった。
あんなに美人で完璧なのに、どこか影のある花城さんそのもののような…。

「…ねぇ!ねぇ見て!」
「ん?何…」

突然、穂がこそこそはしゃいで、斜め後ろ辺りにいた白い詰襟制服の男の子たちを指さした。

「あれ!白栄生じゃない!?」
「ほんとだ…」
「青道の文化祭に来るなんて珍しい…」
「やっぱ制服かっこいいな〜」

白栄学園高等学校、といえば、都内屈指の進学校で、小学校から大学までのエスカレーター式お金持ち学校でもある。そして白栄といえば、花城さん…。

「花城さんの知り合いかな?」
「さあ…」
「っていうか、真ん中の人めっちゃイケメンじゃない!?」
「おーい、東条君はどうした?」

私たちがはしゃいでいるうちに花城さんの発表が終わり、白栄生達もミスコンにさほど興味がなかったのか、踵を返して体育館から出て行ってしまった。

『皆さん素敵な発表ありがとうございました!さて、それではこれより投票となります!体育館前に出場者の写真と投票箱を設置してありますので、ミスターコン・ミスコンそれぞれお一人様1票ずつでお願いいたします!』
『投票結果の発表は明日の正午、ここ第1体育館で行います!明日もぜひお越しください!』

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