053


花城の胸を触った…。
あー…なんか…半分夢みたいな気分…。本番したらどーなっちゃうの?
今ですらなんだかふわふわして落ち着かねーのに…。…試合前はああいうことしちゃダメだな、多分。

……花城…スゲー可愛かったな…


「お、御幸!」

食堂には倉持達3年が集まっていて、熱心に何かを囲んで覗き込んでいた。その中の倉持が俺に気づき、手招きしてきた。

「何?」

踵を返すと、倉持は皆で見ていた雑誌らしき元を手に取り、俺の前に勢いよく広げた。

「じゃーん!Jカップグラドル!」

ヤバくね?18歳だってよ!結構可愛いし、と大興奮の倉持たち。
開かれたページには際どい真っ赤な水着姿の巨乳の女が際どいポーズをとっている写真。

「ふーん…」

…花城の方がエロかったな…。
そういや花城、何カップなんだろ…。見たし揉んだけどよくわかんなかった…。手のひらにすっぽり収まるくらいで、決してデカくはないけど貧乳というほどでも…。B…くらいか?いや、C…か?今度聞いてみようかな。教えてくれるかなー…。

「なんだよふーんって!?」
「お前巨乳派だろ!?」
「知ってんだぞ誰もいないときこっそり長澤ちゃんのビデオ観てんの!」
「あーあれ…やるよ。捨てるのもなんだし」
「…は!?」
「いらねーなら売るけど」
「…!!?」

ざわざわと顔を見合わせる倉持達をよそに、コップに氷を入れた。今日も暑い。

「あんなに大事にしてたのに…!?」
「いったい何が…」
「…あっ!!まさかお前…」

倉持がハッとして詰め寄ってきた。

「花城さんとヤッたのか…!?」
「……。」

なんでこういうとこはホント鋭いんだ、こいつは…。

「内緒。」
「ハァ!?それってつまり…そういうことじゃねーかよォォオ!!」
「…あッ!!おい見ろよこれ…!!」

3年の一人がいつの間にか俺のバッグを漁り、持ち歩いていた未開封のゴムを震える手で掲げていた。

「…あ!?オイ何勝手に…!」

俺の声は3年共の怒号の大合唱にかき消された。一瞬にして周りは大騒ぎの大混乱になり、ドアの外から2年が心配そうにちらりと覗いて行った。

「マジかよ御幸ィィ!!ふざけんなぁぁぁ!!」
「花城さんで童貞卒業しやがった!!!天罰下れコノヤロオオ!!」
「花城さん処女だったか!?おい!!」

「…うるせーーな!!ヤッてねーよ黙れ!!!」

俺が怒鳴りつけると、一応混乱は収まった。

「…え?」
「ヤッてない?」

じゃあこれは?と全員の視線がゴムに注がれ、俺はそれを奪い取って鞄を抱えた。

「お前らにとやかく言われる筋合いはない。」
「いやちょっと待て。じゃあお前はまだ童貞ってことでいいんだな?」
「花城さんもまだ処女?」
「花城の話はすんな!!」

俺がいじられるのは別にいい。でも花城を好き勝手言われるのは我慢できない。特にこんな、下品な話題で。
俺に怒鳴られた3年はびくりと肩をすくませて黙り込んだ。

「そんな簡単にできるわけねーだろ…大事なんだから」

「……。」
「……。」

皆が顔を見合わせ、息をのんだ。…何だこの空気…

「…見直したぜ御幸!」
「お前手ぇ早そうに見えて意外と奥手なんだな〜」
「そーだそーだ、花城さんのこと大事にしろよ!」
「ヤんなくていいぞ、とりあえずあと10年くらい!」

「うるせぇな…」



***



「花城〜。」

やっほー、と生徒会室の入り口から手を振ると、顔を上げた花城がにこっと微笑んだ。

「教室行ったら生徒会だって言われた。」
「ふふふ。」
「ひとり?」
「うん。」

部屋の中に花城以外の姿はない。周防がいないなんて珍しい。

「ちょっと気になることがあって、確認しに来ただけだから。」

花城はそう言って、見ていたファイルを閉じた。
それから俺の傍に来て、ニコニコ腕を絡ませてきた。え?と顔を緩めると、花城の天使のようなほほえみが返ってくる。
花城のほうからこんなにくっついてきてくれるなんて…何が起こってんの?
悶々とする俺にとどめを刺すかの如く、花城は一度手を離したと思ったら、正面から抱き着いてきた。

「ど…どした?」
「ん〜…」

ぐりぐり、花城は俺の胸に頭をうずめて、切なげなため息交じりに呟いた。

「せんぱい…。」
「……。」

なにこれ…。…なにこれ!?俺、甘えられてんの?なんかエロいんだけど…。つーか何が起こってるの!?
もう知らねぇぞ、こんなことされたらもう、俺…!

…しかし俺の手をすり抜け、花城は突然あっけなく体を離した。

「なんとなくハグしたくなった。」
「…そうですか」

ほんっと花城には振り回されるんだよな…俺。
…でも、最近ますます花城が心を開いてくれているようで、こういうボディータッチが増えたのは嬉しい。

「今日も生徒会?」
「うん。テスト期間中は委員会も休みだから、その前にいろいろやることがあって…」
「ほー」

生徒会室を出て、二人で廊下を歩いた。花城の話から今日は大体何時くらいに帰るのかを推測して、もしかしたら会えるかな、なんてこっそり期待する。

「忙しいんだな。」
「先輩ほどじゃないよ。」

にこにこ、からかうように言い返されて、うっと言葉に詰まった。毎日野球で土日もろくに会えていない現実…。4か月ほど付き合っているのに、まともにデートをしたと言えるのは2回くらい…。

「…ごめんなさい」
「なにが?」

きょとんと首をかしげる花城。これは本当に気にしていないのか…高度な嫌味か…

「別に怒ってないよ。だって、いつも休み時間に会いに来てくれるし…」
「花城…」

なんて健気…。花城は天使だ。
ニコニコと神々しさすら感じる可愛すぎる笑顔を浮かべる花城を見ていると胸がギュッと苦しくなる。あーほんと、大好き。これ以上可愛い女なんているの?俺の彼女地球上で一番可愛いんじゃない?この笑顔を見れるだけで俺は…。

花城を抱きしめたくなって、はっ、と手を止めた。すぐそこには倉持達たちがいて、ニヤニヤ俺を見ていた。渡り廊下を過ぎ、いつの間にか3年の教室の前まで戻って来ていたのだ。

「……。」

俺は出しかけていた手で花城の頭をぽん、と撫でた。

「…じゃ、また」
「?うん、またね。」

花城は曇りなき眼でニコリと俺を見つめ、手を振って階段を下りて行った。

「ヒャハハなーーーにカッコつけてんだテメェ」
「うるさい」

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