058


今日は花城が生徒会室でテスト勉強をするというので、一緒に勉強するという口実で放課後ふたりきりの時間をゲットした。
隣には真剣な顔でノートを捲る花城の横顔。…やっぱ可愛い。

…って、俺も勉強は真面目にやらなければ。主将が赤点とかシャレになんねー。

ひたすら黙々と1時間半ほど勉強をして、少し空が薄暗くなってきたことに気づき、俺は手を止めた。

「花城、そろそろ暗くなるから送るよ。」
「あ…、うん。」

花城も集中を解いて、ありがとう、と俺に微笑み、荷物を鞄に仕舞った。

「花城。」

ん?と振り向いて花城の頬に手を添えて、ひと思いにキスをした。少し肩を竦めた花城は、そのままはにかんでぎこちなくキスに応えた。可愛いな〜…まだちょっと戸惑ってて、たどたどしくて…。

「ん…。…先輩」
「ん?」

ちゅ、と唇が離れ、花城が赤い顔で俺を見上げる。

「帰らないの…?」
「もうちょっといいじゃん。」
「……。」

テストが終わったら夏合宿、そしてそのまま大会シーズンに入る。そうなったらもう二人きりの時間なんてほとんどとれないし、ほとんど会えない日が続くことになると思う。俺は今年は主将で正捕手だし、やることが山積みだから…。
またキスをして、花城を見つめると、花城は赤い顔のまま俯いた。ちょっとかわいそうか…?恥ずかしくていっぱいいっぱいって顔をしてる。キスはもう何度もしてるけど、この間…胸を触ってから、ちょっと警戒され気味なんだよなー…。
やっぱ、もうちょっと、少しずつでも慣れてもらいたい…。

うつむいたままの花城の頬を撫で、首筋を撫で、えっ、と俺を見上げた花城の…胸元の横の辺りを手で撫でた。そしてそのまま上に手を滑らせて、手のひらに胸の膨らみが触れた。

「や…、ちょ…、」

あわてる花城の唇を塞いで、ブラウス越しに胸を撫でた。

「な、何…するの…。」

花城は少し抵抗するように俺の手を弱く握り、制止した。

「胸…触るだけ。それ以上はしないから」
「え…。や…」
「花城。俺たち…もう付き合って半年だぜ?」
「……。」

花城は黙りこんで、うつむいたまま抵抗をやめた。そのまま胸を両手で撫で、揉むと、初めての感触が手のひらに広がり、さらにうつむいて真っ赤な顔で胸を揉まれている花城の姿が目の奥に焼き付いた。可愛い…押し倒してしまいたい…!けど、それはさすがにだめだな…ここ学校だし…。

「……っ…」

花城は肩を竦めて時々と息をこぼす。気持ちいいのかな…?あー…、可愛いな…。やべ、いつのまにか勃ってる。
花城もそれに気づいた様子で、さっと俺から目を逸らした。

「花城、こっち…」

そこで花城に後ろを向かせ、俺の足の間に座らせて、後ろから胸を揉んだ。首筋にキスをしたりしながら、手のひらにちょうど収まるくらいの柔らかな膨らみを堪能する。やばい。これ、ほんとやばい。興奮する。
硬くなった俺のモノが、花城の腰に当たっていて…花城は気づいているのかいないのか、少し腰を引いた。

「花城…。」
「……。」
「……花城?」

花城が体を強張らせていることに気づき、肩口から呼びかけてみると、ふっ、と吐息がこぼれたことに気づいた。
え…。ま、まさか…

「…………。」

…な、泣きそう…!!やべぇ…っていうか、そんなに嫌だったってことが…かなりショック…。

「そ、そんなに嫌…?」

ごめん、と手を離すと、花城は目元を拭って立ち上がった。

「嫌…じゃない…」
「いや…泣いてるじゃん…」
「……。」

思わず息を吐き、頭を掻いた。どうすれば花城が心を開いてくれるのか…わからない。

「…ちょっと…怖い」
「怖い?…何が?」

初めてだから不安ってことか…?でも、胸触るだけって言ったのに…それも信用ないのか、それだけでも怖いのか…
困惑する俺を、花城はちらりと振り向いた。

「…え、俺?」

そう尋ねると、花城はバツが悪そうに目を伏せた。

「俺が怖い…ってこと?」
「……。」

ショックだ。かなり。だってそれって、信用ないってことだろ?俺、何かまずいことしたかな…。

「いつもと違う…から」
「……?え?」
「……。」

花城も途切れ途切れにしか話してくれないし…埒が明かない。

「花城、ちゃんと言ってほしい…直すべきところがあるなら直したいし」
「……。」
「何が嫌だった?」

女を宥めるのは得意じゃない。花城としか付き合ったことないし…慣れてない。でも、花城はちょっと…いや、かなり難しい女の子…だと思う。多分。

「……。…付き合ってたら…こういうことしなきゃいけないの?」
「え?」
「半年…付き合ったら…。…しないとおかしいの?」

半年。それがさっきの俺の言葉のことだと、俺はすぐに気付いた。

「そりゃ…ふつうは…」
「普通なんてわかんないよ。私御幸先輩としか付き合ったことないもん」
「それは俺だって花城としか…」
「じゃあなんで普通なんてわかるの?」

…そういわれると返す言葉がない。だけど、そういわれてやっぱり、花城はしたくないのだろうと推察する。

「…無理強いしたつもりじゃない。そう思ったならごめん。」
「……。」
「花城が嫌なら待つし…」
「…先輩はしたいの?」
「……そりゃ…まあ…」
「……。」

花城の避難がましい目が俺を見た。

「…あのな。男だったらそれはしょうがないことなんだよ。」
「何…男だったらって。関係あるの?」
「そりゃあるだろ。男のほうが性欲強いんだから」
「せ…」

花城は口を開いて顔を真っ赤にし、信じられないというように俺を見た。

「……しょうがないだろ、本能なんだよ。花城が思ってる百倍は我慢してんの!男子高校生の脳内なんてエロいことでいっぱいなんだから」
「……。」
「本当のこと言うとお前に会う度にキスしたいよ俺は」
「……。」

…いや今のもかなり遠慮したけど。本当だったらもっとエロいボディタッチとかしたいけど。

「けど花城が嫌なら我慢する。」
「……。」
「花城のこと大事だから。」

花城はしばらく黙り込んで、小さな声で話し始めた。

「でも…。」
「ん?」
「…怖い」
「…わかったよ。花城が大丈夫って思えるまで、待つよ。」
「……。」
「けど、何が怖いのか教えてくれねぇ?」

おいで、と花城を隣に座らせて、手を握った。

「…先輩が…いつもと違うし…」
「違う?」
「……。」
「同じだと思うけどな。花城のこと好きだから…そういうこともしたい。でも、大切だから、花城の意思を尊重したい。」
「……。」
「慣れてないってのもあるんじゃないか?花城、こういうことに免疫ないだろ。」
「……。」
「すぐ顔真っ赤になるし。」

む…、と口を噤んだ花城は、また顔を真っ赤にした。

「かわいー。」
「…やめてよ…」

つん、とその赤い頬をつつくと、ちょっと顔を背けられてしまった。

「けどさ、慣れるためにちょっとはスキンシップとったほうがいいと思うんだよ。」
「……。…スキンシップ…?」

花城の俺を見る疑わしげな眼。

「ちょ…そんな目で見るなよ。俺、お前の彼氏だろー…」

さすがに傷つく。こういう触れ合いも嫌だなんて…じゃあなんで付き合ってくれてるの?とすら思う。
そりゃ、そういうことだけが全てじゃないけどさ…

「花城ってさあ…」

さっきの花城の泣き出しそうな顔が脳裏によみがえって、じわじわと悲しくなってきた。
今目の前にいるちょっと冷たい態度の花城を見ても、俺の胸の奥は焼けるように熱くなって、触れたくてたまらなくなるのに、そしてそれが許される恋人という関係になれたと思っていたのに。いつも拒絶されている気がする。

「…俺のこと本当に好きなの?」

俺を見た花城の困惑した目を見て、しまった、と思った。
何情けねーこと言ってんだ、俺…。こんな泣き落としのようなことをしたって花城の心が開くわけはないし、それで望んだ触れ合いができたって何の意味もないのに。

「何…それ」
「だって…スキンシップだって、いつも俺からだしさ」
「……。」
「それに花城はこういうことしたくないんだろ?」

花城は赤い顔で、すごく迷った後で、震える唇を動かした。

「……だって……。」

しかしそれきり言葉は続かずに、花城は肩にかけた鞄を握りしめ、急に踵を返して廊下に出て行った。

「あ…花城!」

俺の声にも振り向かず、小走りで帰っていく花城。なんなんだよ…なんで逃げるんだよ。
俺のことが嫌いなら…そうはっきり言ってくれよ。

あー、もう…サイアクだ。

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