063
ふと見た廊下に、倉持と花城の姿があった。二人が話していることにも驚いたが、一瞬でもやもやに満たされた自分の胸の中にも動揺した。別に…顔見知り同士が話するくらい、どうってことないだろ…。…でも、何を話してんだ?花城は俺の彼女なのに…
「――御幸!」
倉持が俺を呼んだ声で、はっと顔を上げた。気づくと、倉持はいつの間にかすぐ目の前にいた。
「彼女が呼んでる」
倉持は廊下の方を指さしてぶっきらぼうに言った。なんだ…花城、俺を呼びに来たのか。一瞬で安堵に満たされる胸の中。おう、と返事をして、胸を膨らまして廊下に出た。
「おはよ。」
「おはよう。」
花城と顔合わせんのも何日かぶりで、会いに来てくれたことがすごく嬉しい。花城のことだから、何か用があったんだろうけど。
「どしたの?」
「ちょっと…。話せる?」
「?いいけど」
花城に呼ばれ、俺たちは中庭までやって来た。人は誰もおらず、あまり人目につかない木陰のベンチに並んで座ると、もう厳しくなってきた夏の日差しも少し遮られてなかなか心地よかった。
「で…なんかあったの?」
「ううん。…もうすぐ夏休みだし…と思って…」
ちょっと恥ずかしそうにはにかむ花城。それって…しばらく会えなくなりそうだから、会いに来てくれたってこと?
「…はは…そっか。」
「……。」
距離を置くって言われて…別れたいのかと思ったけど、ちゃんと俺のこと、好きってことなのかな…。
「…そうだ、テスト、またトップだったじゃん。」
「え、あ…。えへ、うん…」
「さっすが〜。」
揶揄って小突くと、花城ははにかんで俺を見た。
「……。」
それから急に思いつめたような悲しそうになって、また足元に視線を落とした。どうかしたのか、と聞こうと思ったとき、花城は口を開いた。
「…先輩」
「ん?」
「ごめん……距離置こうなんて言って」
俺は目を瞬き、そのまま黙って花城の言葉を聞いた。
「私、自分勝手で…。…避けたりして…」
「……。」
「でも先輩は…今までと変わらず、話しかけてくれて」
「……。」
「…ごめんなさい」
「…いや…」
俺は頭を掻き、言葉に迷った。こんなふうに謝られるとは思わなかった。花城の考えがよくわからない…
「…なんだよ、そんなに気にすんなよ!」
「……。」
茶化すように小突いて笑うと、花城も安堵したようにはにかんだ。
「いや〜でも…夏休み前に仲直りできてよかったよ。このまま夏休み突入してたら、も〜花城のことで頭がいっぱいで集中できねーし(笑)」
「え…。あ…、ご、ごめん…」
「…いやだから気にしすぎ!そんな深刻に受け止めんな!」
すぐに青ざめて俯く花城をいそいで励まして、ぽんと頭を撫でた。
「ほんっとマジメで優等生だからなぁ〜花城は…」
「……。」
また冗談交じりに揶揄うと、花城はなぜか落ち込んだようにつぶやいた。
「真面目なんかじゃ…。」
「…どうしたぁ?学年トップの生徒会役員が言っても説得力ねーぞ(笑)」
「ほ、ほんとに真面目じゃないもん、私…」
「はっはっは!何だよ、なんか悪いことでもしたの?」
「……。」
花城はうつむいたまま顔を赤くし、おそるおそる打ち明けるようにつぶやいた。
「…次の授業サボりたいとか…思ってるもん…」
「……。…ぶふっ…」
勝手に口元が緩み、たまらず噴き出す俺。びっくりしたような真ん丸の目で俺を見上げる花城。
「はっはっはっは!何だそれ!可愛いなオイ」
「えっ…、え…?」
「そんなん俺毎日思ってるけど?」
「え…!?」
「はー、本当に花城って……ふはっ…」
「な、なに…!なんでそんなに笑うの…」
「いやいや可愛すぎだって(笑)」
「……。」
真っ赤な顔で困ったように固まる花城。ほんっとマジメで、いい子で…素直で純粋で…一緒にいるだけで浄化されるような気分だ。
「じゃあ次の授業サボっちゃう?」
「え…!?何言って…」
「体調悪いっつって早退してさ、気晴らしにどっか行こうぜ」
「え…。え…、で、でも…」
「俺腹いてーってことにして寮で休むって抜けてくるから。じゃ、裏門集合な!」
「え…!?先輩!」
「ほらもう教室行かねーとチャイム鳴るぞ〜」
***
教師に腹痛を訴え保健医に言い訳をし裏門に行くと、花城はまだ来ていなかった。そして3分ほど待っていると、まだ緊張した面持ちでうつむき加減のまま花城が小走りでやって来た。
「おつかれ〜。」
「……。」
「なんて言って出て来た?」
「ちょっと…気分が悪いって」
「それだけ!?やっぱ普段の行いがいい奴は仮病とか疑われねーんだな〜」
「保健室で熱測ったら…ちょうど微熱があって…」
「え?大丈夫?」
「うん」
「でも微熱って…ほんとに帰ったほうがいいんじゃない?」
「大丈夫だよ」
「いや無理すんなって」
「元気だもん」
「ダメ。夏風邪侮るとヤベェぞ」
「…風邪じゃないもん」
「なんでわかるんだよ」
「……。」
「よし帰るぞ。」
「ちが…。…せ、生理前だから…」
「…え」
花城の赤い顔を見て、沈黙が流れた。生理前…って体温上がるんだ、知らなかった…。女の子って大変だな…
「そ…、そー…なんだ、…ごめん」
「……。」
花城が俯いて、ヤベェ気まずい、と思ったとき。
「…もうやだ恥ずかしい!先輩のバカ」
「いって」
花城が声を上げ、俺の背中を軽くたたいた。驚いたのと同時に花城のそんなスキンシップが嬉しくなって、俺はにやけた。
「ごめんて。ほら行こうぜ」
「…どこに?」
「そうだなー。どこ行くか…カラオケでも行く?」
「え、駅の方行くの…?誰かに見られたら…」
「皆学校にいるのに誰に見られるんだよ?」
「でも…。」
「わかったわかった。じゃーそうだな〜…」
あんま人がいないとこ…。…そんで、できればちょっとでも…花城といちゃつけるとこ…。
花城の家…は、俺からは言い辛いから…そうだな…
寮…連れ込んだらまずいよなぁ〜…。でも…今なら誰もいないし…。でもなぁ…下心丸出しだよなぁ…俺の部屋来る?なんて…。だけど…。
俺を見つめる花城の少し赤い顔を見て、俺は勇気を振り絞った。
「…俺の部屋来る?」
「え…。」
花城の顔がみるみる赤くなった。
「へ、部屋…?って…」
「寮。」
「え、は、入っちゃダメ…でしょ?私…」
「そーだけど、今なら誰もいないし」
「で、でも…」
「大丈夫、バレやしねぇよ。せっかくサボったんだし、普段できねーことしようぜ!」
花城は俺の勢いに押されたように、手を引くと大人しくついてきた。
関係者以外の立ち入りを禁ずる、という立札の横を緊張した面持ちで通る花城に少し笑いつつ、俺は部屋の鍵を開けた。…悪いことしてる気分。いや、悪いことだけど。
「はい。」
「…お邪魔します…。」
おそるおそる部屋に上がる花城。この男くさい部屋に一輪の花が紛れ込んだ光景は、ちょっと、興奮するシチュエーション…。
「……。」
花城は遠慮がちに部屋の中を見渡して、佇んだ。
「座れよ、ほら。」
「う、うん…」
座布団を二つ並べると、花城はそこへ正座した。そして、壁の野球選手のポスターや、棚の上の使い古されたグローブ、夕方の部活に備えて用意してある練習着などを物珍しそうに見た。
「汚いトコでごめんな〜男3人だから…」
「え?う、ううん…」
「そうだ、ジュースあるけど飲む?オレンジと…あ、ポカリもある」
「お、おかまいなく…」
「遠慮すんなよ。ほら」
オレンジジュースのペットボトルを冷蔵庫から取り出して手渡すと、ありがとう、と花城は遠慮がちに受け取った。
それからしばらくそわそわと肩身を狭くしていた花城が、ふと目を止めて口を開いた。
「あ…。これ、光舟の机?」
「ん?あぁ、そうだよ。」
花城は奥村の机に気が付くと、ちょっと笑って立ち上がり、机の上を見始めた。見覚えのある私物でもあったんだろうか。それとも、机の上の雰囲気で分かったんだろうか。二人は親戚だから…だけど、ずっと居心地悪そうに座っていた花城が、奥村の机に気づいて少し緊張がほぐれたように見えて、俺は少し妬けた。
「親戚なんだっけ?」
「うん。」
「花城と付き合ってるっつったら俺、アイツに殺されそうな目で睨まれたんだけど(笑)」
「え?あはは、なにそれ。」
マジなんだけどな。まあ、俺もこんな可愛い親戚のお姉さんがいたら、彼氏にやきもち焼いちゃいそう。奥村の心境はよくわかんねーけど。
「奥村と仲良いの?」
「んー、去年、3年ぶりくらいに会ったけど…小さい頃はよく一緒に遊んだよ。」
「へぇ…」
「光舟優しくてね、いつもショートケーキのいちごくれたり…」
ふふふ、と思い出したように笑いながら言う花城。あの奥村がそんなジェントルマンなことしてたのもなんだか可笑しいけど、もしかしてアイツ小さいころ花城に惚れてたのかな?なんて考えるとますます可笑しくなった。だけど、もしかして今も…という考えに及ぶと、何となく心がざわついた。
「俺だって花城にいちごあげるよ、なんならケーキごと」
「えっ?あはは。何言ってるの?」
ふざけてそんなことを言って、どさくさに抱き着くと、腕の中で花城が少し身を固くしたのが分かった。そこですぐに腕をほどいて、俺は座布団に戻った。
「はーよっこらせ。花城、ジュース飲まねぇの?」
「……。あ……うん」
花城は拍子抜けしたようにちょっと俺を見て、座布団に戻ってきてペットボトルを開けた。花城が嫌がらない範囲で、こう、ちょっとずつボディタッチをして慣らしてく…のがいいのかなー…。…つーか俺は何をやってるんだ、両想いで付き合ってるはずの彼女に…。マジで好きなの俺の方だけなんじゃないかとすら思う…。
「……。」
「……。」
なんとなく気まずい沈黙が流れ、俺は誤魔化すようにポカリを飲み、ちらりと花城の表情を盗み見ようとしたら、ばっちり目が合ってしまった。
「……。…何…する?」
花城が気まずそうに聞いてきた。なんだかちょっと、覚悟したような顔で。…いや、これは俺が期待してるだけかも。
「あー…そうだな…あ、オセロあるぜ。あと将棋とか…ルールわかる?」
「……。」
「花城?」
どっちがいい?とボードを見せながら振り向くと、花城は正座をした膝の間に挟んだペットボトルの蓋を弄んでいて、なんだか思いつめたような少し赤い顔をしていて、その姿が…蓋を弄ぶ綺麗な指先や、スカートの裾から覗く真っ白で柔らかそうな脚が、色っぽくて…
やばい、そう思ってさりげなく視線を逸らし、どこを見るでもなく床に視線を落とした。
「オセロでいい?」
「……。うん。」
何か言ってくるかと思ったけど、花城は素直に了承して、俺は拍子抜けした。
「じゃー先どうぞ。」
ボードを広げ、駒を4つ置いて、ゲームを開始した。ボードゲームはそこそこ自信があったからわざと負けようか迷ったけど、花城もなかなか強くて結構いい勝負になり、終盤――
「……んー…」
しばらく悩んでいた花城が珍しく唸って、あっ、と何かに気付いたように目を丸くした。
「だめだぁ、私の負けだ…」
「え?まだわかんないじゃん」
「だってここに置くとここ取られちゃうでしょ、それでここしか置けなくなるから負けで、こっちに置くと今度はこっちが取られちゃうからどこも置けなくなって…」
「あ、マジだ。俺そこ気付いてなかったのに」
「え!もう〜言わなければよかった…」
花城は脱力して息を吐きながら後ろのベッドに寄りかかった。可愛いなあ、と一瞬思ったけど、すぐに焦りを覚えた。ヤベェ、花城が寄りかかってるのは俺のベッド。そして昨日の夜、そこで皆でアレを見て盛り上がって…
「ん〜…」
花城は伸びをして、ふう、と息を吐いて手をおろした。
「…ん?」
そして恐れていたことが起こった。
ベッド下についた手の先に何かぶつかったのを感じて、花城が不意に視線を動かした。
「これ先輩の?」
「え…」
そしてベッド下に無造作に放り込まれていた雑誌を手に――
「……。」
「……。」
いや知らない、とか、後輩のかな、とか、情けない言い訳しか思い浮かばずに、俺は結局黙り込んでしまった。
花城は下着姿のグラマーなグラビアアイドルが際どいポーズをとっている表紙をしばらく無表情で見つめた。
「……。」
そして顔を赤くし、無言のまま雑誌を元の位置に戻した。…何か言ってくれ…!キレられた方がマシだ…。
「……ごめんなさい」
「え?」
観念して、というか、耐えかねて呟くと、花城は困惑気味に首を傾げた。
「それ、昨日皆で見て…ただけで、俺のじゃないし、俺は…」
「……。」
「…花城がいるし」
「……。」
花城は口を噤んだまま俯き、唇を噛んだ。
「…そんなの…。……別に…。」
そして恥ずかしそうにか細い声でそう呟いた。別に…って、どういう意味だ?
「…嫌じゃない?彼氏がこういうの見てるのって…」
「…別に……いいよ」
それって…どうでもいいってこと?
「別にいいって…」
「も、もうやめようよこの話」
花城は体を抱くように腕を組み、肩を竦めて赤い顔で言った。まただ。核心に触れそうになると、花城は逃げようとする。いつも…そう、いつも。
「花城」
改まった低い声で名前を呼ぶと、花城は緊張した顔で俺を見た。
「俺は恋人になりたくて花城に告白した。その時から…いつかそういうことをすることも考えてた」
「……。」
「花城がオッケーしてくれたとき、花城もそう思ってくれてると思った。恋人の関係を築きたいって思ってくれてるって」
「……。」
「でも…違うのかもな、花城は…」
俺の好きと、花城の好きが。違うものなのかもしれない。花城が俺に遠慮して、それを言い出せないでいるのだとしたら…
「ち、ちがくない」
花城は泣きそうな顔で首を横に振った。
「…でも」
「本当に。先輩が嫌とかじゃ……。…なくて…」
花城はまた唇を噛んで、先ほど押しやったグラビア雑誌をちらりと横目で見た。
「……私…」
「……?」
「……こんな…、…綺麗じゃ、ないし…。」
「…いや、」
「こんな…。……おっきく…ないし……」
「……。……ん?」
思わず俺は、雑誌の表紙のグラビアアイドルの零れ落ちそうな胸と、花城の控えめな胸元を見比べた。
「……え…、もしかしてソレ気にして触られたくなかったの?」
「………。」
赤い顔で黙り込む花城。え…マジ?そんなことそんなに気にしてたの?
「…可愛い奴だな」
「…うるさいな…。」
「いやマジで。そんなの気にしなくていいのに」
「……。」
「男は大きさなんて気にしてねーから。好きな子の、ってのが重要なんだよ」
「……。…なんかヤダ」
「なんでだよ(笑)」
「……。」
花城は恥ずかしそうに顔を赤らめ、腕を組んだままもじもじ俯いた。
「…じゃ、触って良い?」
「……ヤダ」
「ええぇ〜〜なんでだよ〜…」
「……。」
「…お願い!花城!なっ、ちょっとだけ。いい?」
「……。…やだ。」
がっくり…やっぱりだめか、とあきらめかけたその時。
「聞かないでよ…そんなこと…。」
ちょっと不貞腐れたように花城が言って、俺は目を丸くして――ごくりと喉を鳴らした。い…良いってこと!?
そっと花城に近づくと、花城は観念したように俯いて、唇を舐めた。俺が手を伸ばすと…避けない。やめてとも言わない。そしてそのまま、俺の右手の平に、柔らかな膨らみが収まった。
「……。」
ウソみたい…俺、花城の胸を揉んでる…。いや、揉んだことはあるけど、今回は嫌がられてない…!つーか、すげぇやわらけぇ…前も思ったし、しばらく感触が頭から離れなくて苦労したけど、やっぱ本物は違うな…。花城の恥ずかしそうな表情もすげぇそそるし…
俺は左手も伸ばし、両手で胸を揉みながら、思い切って花城に短いキスをして、続けて少し長いキスをした。花城の小さな唇がせいいっぱい俺のキスを受け止める。愛おしい…。花城が可愛くて、胸が苦しい。もう止まらなくなって、花城を少しずつ押し倒して――うるんだ目で俺を見上げた花城を見て、はっとした。
「あ、待って…背中痛いだろ」
「え…、」
床に横たわった花城は俺の腕に触れたまま、静かに目を瞬く。わかってんのかな…これからしようとしてること…
「…ベッドの…方が…」
「……。」
俺の呟きに、花城は赤い顔のまま起き上がった。…いやだ、とか、言われることを覚悟した俺を見ないまま、花城は言った。
「…うん」
……え!?
息をのむ俺の前で、花城はベッドを見て、うつむきがちに俺を振り返った。
「…どれ?」
「え、」
「…先輩の…。」
赤い顔で、唇で、ぽそぽそ呟く花城。…嘘だろ、本当に?いいのか?このまま…?
「そ…、そこ」
俺は花城のすぐ後ろのベッドを指さした。花城は何も言わず、そっと、ベッドのふちに腰掛けて――俺を見た。
「……。」
花城に近づき、覆いかぶさるように押し倒した。ベッドの上で、花城は無抵抗に横たわった。花城が、俺に、好きなようにさせようとしてくれてる…。いいの?本当に?いいの?
反応を試すようにまずはキスをした。…素直に応じる花城。ちょっと緊張が伝わってきて、ぎこちないけど…いいんだよな。わかってて、させてくれてるんだよ…な?
花城の頬に触れ、だんだんと体を密着させた。腕や腰を撫でて、おそるおそる、胸に触れた。…嫌がられない。むしろ、受け入れるように花城が俺の腕に触れてきて――俺はたまらず胸を揉みしだいた。
「い、いたい…」
「えっ…、ご、ごめん」
柔らかくて気持ちいいから、つい力がこもってしまった…。女の子の体って…繊細なんだな…。
少し力を入れたら壊れてしまいそうで…だけどだからこそ、愛おしい。
俺は今度こそ気を付けて、優しく胸に触れながらキスを続けた。だんだん花城の体から力が抜けていくのが分かった。緊張が解けてきたのか…嬉しくなる。
唇を離して、花城の表情を確かめて…ブラウスのボタンに手をかけた。
「!…や、やだ」
しかし俺の手を花城が掴み、阻んだ。…脱がすのはまだ駄目か…?いやでもここまできたのに…!
「お願い。」
だめもとで目を見つめて言うと、花城はうっと黙って口ごもった。お…?これは案外、イケるのでは…。
「……恥ずかしいから、ダメ」
……だめか。
「なんだよ恥ずかしいって〜…俺はそんな花城も見たいの!」
「……。」
駄々をこねた俺に、う…、と言葉に詰まる花城。何やら悩み始めて、やがて真っ赤な顔でつぶやいた。
「…見ないなら…いいけど…」
「え?」
それって、つまり…
「触るだけならいいってこと?」
「……。」
「直接でも?」
「え…」
「そういうことだよな?」
花城は言葉を失って固まった。そして真っ赤な顔で、潤んだ目で、俺をかわいらしく睨んだ。
「……いじわる…」
「あーやばいそれ、可愛すぎ…」
「…ばか!」
「いいよばかで、花城といちゃいちゃできるなら」
「な、なに言って…あ、ちょっと…!」
花城のブラウスの裾をスカートから引っ張り出し、中に手を滑り込ませた。俺の手に合わせて、ブラウスがもぞもぞ動き、捲れあがって細い腰が見える。真っ白ですべすべの、細いくびれ…。うわー、やばい、この光景…。
そして手のひらに、ざらりとしたかたい丸みが収まった。…ブラジャーだ。ブラに覆われていない部分の肌が指先だけに触れ、その柔らかさにも驚いた。こんなにやわらけーんだ…女の子の胸って…。これ…ブラなしだとどんだけやわらけーんだろ…
もうさっきから俺の下半身はギンギンで、だけど花城が恥ずかしがってなかなか先に進めず、もどかしい。もう3回くらい、おあずけくらってるし…。周りに比べたらきっと、俺たちの進展は遅い方だと思う。でも、花城の気持ちを無視するようなことはしたくない。
「……。」
ばか、とか言ってたくせに、花城は抵抗はせずに、ただブラウスの裾が捲れないように抑えながら、恥ずかしそうに視線をさまよわせている。だからそういうのが余計そそるんだって…。こんな初心な反応、AVとかじゃ絶対に見れないし…。
しばらくブラ越しに胸を揉んでいたけど、やがて手を滑り込ませるように、手探りでブラを捲り上げた。
「……!」
花城が焦って胸元を見、俺を見て、また視線を逸らした。そして観念したように押し黙る花城の胸に、俺はやっと、直接触れた。
……すっげぇ柔らかい。手のひら全体にフィットして、例えようのないくらいすべすべで、だけど柔らかく押し戻してくるたまらない弾力。手のひらにすっぽり収まってしまう控えめな大きさも、胸が苦しくなるほど可愛くて…。
「……っ」
花城は片手でブラウスの裾を、もう片手で口元を抑え、じっとされるがままになっている。耐えているというよりは、どうしたらいいかわからず固まっているような感じだ。
そんな花城の表情を見つめながら、両手で膨らみを揉み、指先に触れた柔らかな突起に気づいて、すりすり、と撫でてみた。
「っ…」
ぴくん、と花城が反応した。俺は息をのみ、花城も顔に驚きと戸惑いをにじませて、真っ赤にした。すぐに同じように、柔らかい開きかけの蕾のような突起を指先で撫でると、それはだんだん固くなってきて、花城の体に力が入り、時々ぴくんと震えた。
花城、感じてる…。ここ、気持ちいいのかな。やべぇ、可愛い。
「っ、先輩それ…」
ブラウスの裾を掴んでいた手が俺の腕に触れた。それでもそこを撫で続けると…
「……んっ…」
花城が甘い声をこぼした。すぐに恥ずかしそうに、口元を抑える手を握りしめて、くっと顔を背けて身を固くする花城。花城が…喘いだ…。俺の愛撫で…。どくどくと心臓が跳ね、周りの空気がムッと熱く感じた。くしゃくしゃのブラウスと乱れた髪、無造作に転がった枕に埋もれて、花城は赤い顔で悶えていて…。この光景は夢なんじゃないかと思える。欲求不満で見ている夢…。
手のひらを伝って、花城の胸からトクトクと早い心音が伝わって来ていて、その肌はしっとりとして温かく、甘い香りが漂ってきて…。やばい、もう、止まらないかも…
「…っ、…ふ……。」
「……。」
「ん、……ぅ……。」
花城…。だんだん、声、抑えられなくなってきてる…。息も荒くなって、脚をもじもじさせて…。もう止まんねーぞ、これ…!
一思いにブラウスを捲り上げてしまおうか迷い始めて、しかし、俺は近づいてくる不審な音に気が付いた。
――…コツコツコツコツ、コツコツ…
その音が、誰かがこちらに軽い駆け足で向かってきている音だと気づいて、俺は動きを止めた。
「…?」
花城も異変に気付いて俺を見上げ、続いて音に気が付いた。待て…もしかしてこの足音…こっちに向かってきてねーか!?この部屋に向かってきているとは限らないけど…でも万が一…誰かが様子を見に来たとか…忘れ物を取りに来たとかだったら…
「い、一応隠れて」
「ま、待って…」
花城に布団をかぶせ、俺も布団に潜り込んで横になり、様子を窺った――直後。
――ガチャッ、ギイイ!
と、勢い良く俺の部屋のドアの鍵が開き、ドアが開かれた。
「…えっ、うわ!?御幸先輩!?」
「き…木村?」
間一髪…。背中をひやりと冷やしながら、重傷を装って横になったまま気だるげに苦笑を浮かべた。
「びっくりしたー…!どうしたんですか!?」
「いや、ちょっと、腹が痛くて早退…」
「え!?大丈夫ですか!?」
「ヘーキヘーキ…多分、食いすぎ」
「へぇ…?」
木村は目を瞬き、自分の机に向かった。こっちに来るなよ…!と願いつつ、床に置きっぱなしにしていたふたつの飲みかけのジュースに気づいてぎくりとした。だけど木村は特に何も言わず、自分の机の引き出しを開けた。
「いやー俺、辞書忘れちゃって…」
「そ、そうか」
へへへ、と苦笑いを浮かべ、木村は急いでいる様子で踵を返した。
「大丈夫ですか?何かいります?」
「いや、平気。」
「そうですか?じゃ…失礼します!お大事に!」
「おー…さんきゅ」
木村が慌ただしく学校に戻っていき、安堵の息を深く深く吐いた。危なかったー…
「ゴメン花城…大丈夫?」
布団を捲ると、ブラウスのはだけた赤い顔の花城が、ふう、と顔を出した。
「あっつい…。」
…エロい。と、こっそり思って、押し倒したい衝動に駆られる…
「……。…あっち向いてて」
「えっ…」
花城は服を直したいようで、じろりと俺を睨んだ。もうおしまい…ってこと!?そんな…。
「いいからはやく!」
「…はいはい」
ちぇー…。またおあずけ…。木村が来なければ、もしかしたらあのまま…。くっそ〜…
「もういい?」
「…うん」
振り向くと、花城はキチンとブラウスを着ていた。…はぁ…。
「もう5時間目終わったんだね…。」
「…だな」
木村は5限と6限の間の休み時間に辞書を取りに来たのだろう。普段寮まで聞こえてくるはずなのに、チャイムが鳴ったことに全然気づかなかった。…それだけ夢中になってたんだな、俺…。
「……。」
「…何?」
じっと花城を見つめると、花城は顔を赤くしてちらりと俺を見た。
「…もうちょっとだけ続き…」
「……。」
「…ダメか…」
わかりました、と呟いて、俺は立ち上がり、飲みかけのオレンジジュースを手に取って、花城に差し出した。花城もベッドから降りてジュースを受け取り、座布団に座って、俺たちは照れくささをにじませた顔ではにかみ合った。
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