066
「あいつすぐキレるしよ〜」
「生理前だったんじゃねw」
くだらない話で盛り上がっている男どもがいる。やれやれと呆れながら、俺はスコアブックを捲った。
「関係ある?」
「女って生理前はキレやすいらしいぜw」
「ウソだろw」
「マジマジ。あと生理前は欲求不満なりやすいとか…」
……。…そういやこの前、生理前って…。…いやいや…くだらねー…。関係ないって…。
「今度キレられたら生理前?って聞いてやれよw」
「バッカ余計火に油だろw」
「…デリカシーがないから彼女ができねーのか、彼女ができねーからデリカシーがねーのか…」
「あぁ!?」
「なんか言ったか御幸ィ!!」
「御幸先輩!!」
と、そこへ険悪な空気を打ち壊す爽やかで元気のよい声が響いた。
「俺花城先輩とプール行きたいです!」
珍しく瀬戸が声をかけてきたと思ったら、いきなりそんなことを言われた。
「俺も行きたい。」
「何言ってんだテメーは」
「じゃあ行きましょう!皆で!」
「え?」
「俺らが甲子園に行けたら、花城先輩が一緒にプール行ってくれるそうです!」
「はい?」
「あ、あの!ちょっと違います…」
そこで意を決したように由井が割り込んできて、今日の練習中にあったらしいことを説明してくれた。
なんでも今日花城は友達とプールに行く途中で学校のそばを通りかかり、瀬戸とその話をしたと…。
「で、夏休みの予定は御幸先輩のために空けておきたいって言うから、御幸先輩に聞いておきますってことになって〜!」
「……。」
は…花城そんなこと言ったの!?か、可愛すぎ…
俺頑張る…花城のために頑張る…
「御幸死ね」
「なんだよ酷い奴だな〜」
「御幸先輩!どうですか!?」
倉持に罵倒されつつ、俺は瀬戸を振り向いた。
「だめ。」
「えー!なんでですか!?みんなでプール楽しいじゃないですかぁ!」
「どうせ行くなら俺と花城二人っきりの方が絶対楽しいに決まってんだろ」
「うわあズルい!」
「ズルくねーよ俺の彼女だもん」
言いますね〜!とケラケラ笑う瀬戸の隣で、奥村と倉持が殺人鬼のような血走った目で俺を睨んでいる。
「はっはっは!羨ましかったらお前らも彼女作るんだな」
「死ね!」
***
夏休みに入って花城と会う機会が減ったものの、花城は時々生徒会の仕事で学校に来るため、少しなら二人きりになれる時間もあった。
「…って、瀬戸に言われたんだけど。そんな約束したの?」
今日はその生徒会の仕事があるというので、帰りがけに校舎裏で花城と会って先日の話をすると、花城は綺麗な青い瞳を瞬いた。
「あー、そんなこと言ってたかも」
「仲良いじゃん…」
「あの子人懐っこいから」
そんな風に言ってほほ笑む花城は、まるで瀬戸のお姉さんみたいで…。見た目は似てないけど。
「…でも俺のために予定空けときたいんだって?」
「……。」
ちょっと妬けて、そう言って揶揄うと、花城はちょっと頬を染めてはにかんだ。
「それで先輩はなんて言ったの?」
「どうせなら二人で行くからダメって言ったよ。」
「……何それ。」
「だって何の苦労もしてないあいつらに花城の水着姿なんて見せたくないじゃん」
「……えぇ?」
花城は困ったように顔をゆがめ、はにかんだような苦々しいような様子で首を傾げた。
「男が海とかプール誘うのなんてそれ目当てに決まってるだろー。お前結構ガード甘いとこあるから気をつけろよ。瀬戸たちとプールなんていくなよ。」
「行かないよ別に…」
「周防とも行くなよ。」
「何で周防君?」
花城は苦笑して、俺を見上げた。
「先輩って結構束縛するタイプ?」
「そうかも。俺以外の男と話しちゃダメ〜」
「あはは。それは無理。」
「はっはっは!そりゃ残念。」
軽く笑い飛ばして、ふと沈黙が降りて、俺は花城の手を握った。花城は緩くその手を握り返してくる。それから身を乗り出して、キスをしようとすると、花城は素直に目を閉じた。
自然にキスができた…。結構久しぶり。胸の底からじわじわと幸福感が湧いてくる。やっぱり花城の存在って偉大だな…。
そして花城の腰に手をやり、撫でて、胸を撫でると、花城の唇からと息がこぼれた。抵抗しない…。あの寮での一件以来、胸を触っても嫌がられなくなった。見せるのはまだ拒否されるけど…。
「……。」
赤い顔の花城が俺を見上げ、恥ずかしそうに俯く。それでも胸をさわさわしていると、やがて唇をかんで、花城がまた俺を見上げた。
「いつまで…触ってるの。」
「ずっと触ってたい。」
「……だめ」
「毎日石みてーに硬いボール握ってるからなぁ…」
「…関係ある?」
最後に、むにゅ、と揉み上げて手を離すと、花城はもう、と赤い頬を剥れてブラウスのしわを直した。
「っていうかちょっと大きくなった?」
「……。」
花城は真っ赤な顔で黙り込んだ。ちょっと前から思ってたけど、なんかこう、手の中の密度が増した気がする。
「こう掴んだ時の感覚がなんとなく…」
「その手やめて。」
手のひらでカーブを描くように指を曲げて掲げて見せると、花城はぽすんと俺の手を叩き落とした。
「はっはっは…俺が揉んだからかな〜?」
「……。」
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