翌朝、昨日の光の様子が頭から離れないまま練習を終え、登校した。
今日声かけに行っといた方がいいよな…。
昨日少し気まずい感じで帰ったし…夜のメールの返事もいつもより遠慮がちだった。
あの時光…家に誘おうとしてくれてたのかな?
あの口ごもった様子…俺が期待しすぎてるのかと思ったけど…。
もしそうだとしたら…俺はその誘いを断ったカンジになってる…のか!?い、いや、でも、キスした時の反応からして…光はそこまで考えてないとは思うけど…。
…そう、キス、したんだよな。
あれが俺のファーストキス…。
柔らかくて…温かくて。甘い香りが今も香ってくるような気がする。
光も初めてっぽい反応だったな…。そうだと嬉しい。
うん。やっぱ今日は顔を見に行くべきだよな。
というわけで、昼休みになると俺は急いで昼飯を済ませ、2年の教室へと向かった。
「御幸せぇ〜んぱい!」
光の教室に着く前に、廊下で派手な女子グループの一人が俺に声をかけてきた。こういう女子苦手なんだよな…。
俺は反射的に振り向いたものの知らない相手だったため、そのまま通り過ぎようとした。
「光ちゃんですかぁ〜?」
しかし女子がそう言ったので、俺は立ち止まってまた彼女らを振り返った。光の友達…?いや
光と気が合うとは思えないし、クラスメイトとかかな?
「そうだけど…いる?」
俺がそう返すと、そいつはグループから離れて俺に駆け寄ってきた。
「多分いますよ〜。呼んできてあげますね〜。」
そいつはそう言って馴れ馴れしく俺の背中に触れた後、教室に入って行った。ツンとするほど甘ったるい香水のにおいを感じ、俺は無意識に顔を顰める。
少しして、クラスから光が出てくると、その表情もすぐに和らいだが。
「よ。」
「……。」
光は恥ずかしそうに唇を結び、少し赤い顔で歩いてきた。
「ちょっと話せる?」
「うん」
俺たちは並んで歩き、中庭に移動した。周りに人はいない。俺がベンチに座ると、光も隣に座った。
「昨日はありがとな。」
「……。」
体を傾けて優しく光の体を小突いて言うと、光は俺を見上げ、頷くように少し俯く。両手はもじもじと膝の上で動いている。
「なんで元気ないんだよ。」
「べつに…」
「俺と会えて嬉しくないの?」
「……。」
光は呆れた目で俺を見て笑った。やっと笑顔が見れて、俺は顔がニヤける。
「かわいい」
「…な、なに…?」
俺はつい思ったことがそのまま口から出てしまって、光を赤面させた。それを見てまた胸がキュンとなるのだからキリがない。
「なあ…、」
そして春の暖かな風が吹き、俺は後押しされてるような気がした。
「俺…光のこと本当に…、大事にしたいと思ってるからさ…」
ざああ、と木の葉が風に揺れた。春の少し強い風が俺の胸を煽った。
「な…なに?急に…。」
光はなぶられた髪を赤い耳にかける。
「なんか言いたくなって。」
「……。」
風が落ち着き、光が眩しそうに少し目を細める。長いまつ毛の影が頬に落ち、やっぱり神秘的なまでに綺麗な子だ、と思う。
俺は周りを見渡して人の目がないことを確認した。そしてその様子を不思議そうに見つめた光を見つめ返した。
顔を近づけると、一瞬戸惑って肩をすくめる光。だけど身を固くして、そっと目を閉じた。
一瞬触れただけのささやかなキス。誰にも見られなかったかをまたすぐに確認して、光に苦笑を向ける。
光は赤い顔で、唇を結んではにかんだ。