春の選抜で、御幸がすでに花城さんと付き合っていることが発覚して、早3か月。

3か月かあ…。
もうキスとかしてんのかな…。

いや、あの時点で付き合ってることが分かっただけで、実際もっと早くから付き合ってたとしたら…まさかソーイウコトも…。


…考えるのやめよ。
チッ、御幸のヤロー、バチ当たれ…


そう考えながらふと、廊下の向こうから歩いてくる美少女が視界に映る。
あっ、花城さん…。

彼女のことを考えていた矢先に本人と出くわすなんて。あ、でも俺、タイマンで話したことない。俺のことは知ってる、みたいだけど…。前、鷹野が…花城さんが俺のことかっこいいって言ってたって…。あれ、マジなのかな?
…いやでも、結局御幸と付き合ったし…やっぱ冗談?

ふと、花城さんが俺に気づいた様子で視線がぶつかった。ドキッと跳ねる心臓。一瞬迷うようにそれた視線が、また俺の目を見つめる。
ほんのりとほほを赤くして、花城さんは小さく会釈をした。

かわいすぎる…。

俺も会釈を返して、平静を装ってすれ違う。と、そのとき。

パシャッ

と、大きなシャッター音が響いた。

「撮れた?」
「撮れた、撮れた!」

ヒソヒソと盛り上がる3年男子がそこにいた。知らない奴らだが、顔は見たことある。そいつらは不自然にニヤついて花城さんを見ながら目配せをし、スマホの画面を見て盛り上がっていた。
まさか…盗撮?

花城さんも気づいたようで、不安げな視線を奴らに向け、だけどなにも言えないようで肩をすくませて俯いた。

「おい。」

俺はそいつらに近づいて声をかけた。

「何撮ったんだよ?」

俺を振り返ったそいつらの、こわばった目が泳いだ。

「は?何…?」
「な、何も撮ってねーよ」

景色だよ、景色。と、片方がスマホをポケットに入れて隠した。

「じゃあ見せろよ。」
「なんでだよ。」
「やましいもんねーなら見せろって言ってんだよ。」
「だから、嫌だって。なんでお前に…」
「テメェらが盗撮したと思ってるからだよ!潔白証明したいなら見せろっつってんだよ」

俺が怒鳴るとそいつらは飛び上がって顔を赤くした。

「今俺の前で消せばチクんないでおいてやるけど?」
「……。」
「どーすんだよ」

俺の言葉に、男らは顔を見合わせた。スマホを仕舞った片方の男の手が、迷いながら再びスマホを取り出した。

「早く開けよ。」
「……。」
「早くしろっつってんだよ!」

廊下の注目を浴びるたび、そいつの親指が迷いながらもスマホの画面を操作していく。まどろっこしくて、俺はそのスマホをひったくった。

「あっ…」

男が情けない声を上げる。画面には、花城さんの横顔が写っていた。

「チッ」

俺がにらんで舌打ちをすると、赤くなったり青くなったりして漏らしそうなほど狼狽えている男たち。
俺は画像をカメラロールからも消去ファイルからも完全に消して、スマホをそいつに放り投げた。慌ててスマホをキャッチしようとして、取り損ねて床に落とすそいつらから目をそらし、ポカンと俺を見つめている花城さんが視界に映る。

やべ、俺、ちょっとカッコよくね?

だけど花城さんになんて声をかけていいかわからず、俺はそのまま立ち去ろうとした。


ぱた、ぱた、ぱた、と小さな足音が後をついてくる。
まさか…。


「あ…あの。倉持…先輩。」

ドキン、と心臓がはねた。俺の名を呼ぶかわいらしい声。振り向くとそこに…花城さんがいて。想定通り、だけど、夢かとも思った。

「あの、さっき…ありがとうございます。」
「え?あ、いや、全然、大したことじゃ…」

ないッス…。と、しどろもどろになりながら答えると、ほほを赤らめた花城さんが俺を上目遣いに見上げ、小さく微笑んだ。な、なんつー破壊力…。正面から生で直視したら可愛すぎて頭おかしくなる。

「…じ、じゃあ。」
「あ…はい。」

いたたまれなくて俺が立ち去ろうとすると、花城さんは今度は止めずに会釈をくれた。あー、可愛すぎるぜ…。あんな子が御幸なんかと付き合ってるなんて…世界ってなんて残酷。

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