「じゃ…またな」
「うん。今度応援行くね」
地区予選も進み多忙を極める俺は、たまに学校帰りの光と量のそばまで一緒に歩くのがささやかな楽しみになっていた。練習前の貴重な癒し…。
「おーサンキュ」
「じゃあ、また…」
「あ、待って光」
手を振る光のその細い腕をつかんで引き留める。
「今度さ…」
言いかけて、光の真後ろからものすごい形相で俺を睨みつけながら走ってきた奥村と目が合った。
固まった俺に気が付いて振り向いた光が、奥村を見つけてあっと声を上げる。
「こうちゃん!」
…え?
「何してるんですか」
光のそばまで来た奥村は、俺につかまれている光の腕を引きはがした。
「ちょ…光舟〜!いきなり走るなよ〜!!」
後から追いかけてきた瀬戸が、光を見てはっと目を輝かせる。
「あ!こんなところに美女がいると思ったら光先輩!」
「え?あはは」
調子のいいことを言う瀬戸に慣れた様子で笑う光。いやそれよりも今、光、奥村のこと…なんて呼んだ?
「何してるんですかって聞いてるんですが」
奥村は光の腕を離して光をかばうように俺との間に割り込んで、俺に凄んできた。
「え?別に…話してただけだけど。お前こそどした?」
そんな俺と奥村を交互に見上げて、光は目を瞬く。
「どうしたのこうちゃん…?」
…こうちゃん?やっぱ何かおかしい!
「さっきから思ってたけどこうちゃんって何!?」
「え?言ってなかったっけ。親戚なの」
きょとんとした顔で光が言ってのけた。自分と奥村を交互に指さしながら。
「…親戚!!?」
俺だけが驚いて声を上げた。見ると瀬戸も驚いてない。こいつも知ってたらしい。
「初めて聞いたんだけど…」
「ごめーん」
てへへと手を合わせて笑う光。まったく悪びれていない愛くるしい笑顔。まあ、別に悪くはないけど。
「ビックリだわー」
「ですよね〜!こんな美女が親戚なんて!」
瀬戸が俺に同意してまた調子のいいことを言う。
と、そこへ倉持が通りかかり、俺たちをいぶかしげに眺めながら通り過ぎようとした。
「あ、おい倉持。光と奥村が親戚なんだって知ってた?」
「は?…え!?」
思った通り、倉持は驚きのあまり立ち止まって光を二度見した。
「びっくりだよなー」
「そーいやちょっと似てるかも…?」
しげしげと並べて比べられて居心地悪そうな奥村とニコニコ笑う天使のような光。
するとまた野球部員である東条と金丸がやってきた。
「あ…おいお前ら、知ってたか?光と奥村親戚なんだって」
「…勝手に言いふらさないでください」
奥村が不満げに言ったが、東条たちはへらりと笑みを浮かべて顔を見合わせたあと、俺を見てうなずいた。
「あ、ハイ…聞きました」
「え!?知ってたのかよー言えよー」
「もう知ってると思って…」
ハハハ…、と頭を掻きながらお先に失礼しますと言って、東条たちはそのまま寮のほうへ歩いて行った。
「いやー今年1のビッグニュースだわ。ハッハッハ」
「こんなことが…?退屈な人生ですね」
「お、おい光舟…!!」
「言うね〜お前!」