そして夏本番――。

「御幸〜応援行くからな〜!」
「がんばれよ〜!!」

念願の地区予選優勝を果たし、甲子園出場が決まったとあって、終業式前の学校は沸き立っていた。

「人気者だねぇ〜」

ペットボトルで自分の肩をたたきながら、俺の隣をかったるそうに歩く間宮。最近こいつと話すことが多い。仲がいいわけじゃないけど…今日は俺がこいつを呼び出した。

「ここでいいか」

俺は人気のない非常階段の踊り場まで来ると、階段に座った。間宮も俺の横に並び、持っていたペットボトルのふたを開けて中をあおった。

「で、何」

間宮のこの気を使わない感じが、最近はこっちも気が楽だと思うようになってきた…。

「ちょっと聞きたいことがあるんだけど…」
「あ?」
「…その…お前、ヤるときってどういう流れでベッド行く?」
「……。」

間宮は口を開いたままゆっくりと俺を見て、深いため息をついた。

「それ俺に聞くのかよ!?」
「スマン、アテになるのお前しかいなくて」
「なんで俺がテメーなんかにアドバイスしてやらなきゃならねえんだよ〜」

まあ、そうだよな。光のこと好きなやつにこんなこと聞くのは酷なのはわかってる。でもそんなことより自分のほうが大事。

「んなもんフツーにベッド行くぞって言やぁいいんだよ!」
「いやそれは…雰囲気とかもっとなんかあるじゃん」
「ああ?下らねーこと言ってんじゃねー」

間宮は舌打ちをしてまたペットボトルを傾け喉を鳴らす。なんかちょっと倉持に似てるな、こいつ。

「部屋に来る時点で相手もそーいうこと考えてんだから、妙な遠慮なんかしなくていーんだよ」
「…あー…」
「…えっ、部屋に来たことあんの?花城さん?」
「あ、いや、俺が…行った」
「花城さんの家に!?」

間宮の目が飛び出しそうなほど見開き、俺は顔が引きつった。

「うわーもーダメージスゲェわ」
「スマン」
「思ってもねーのに謝んな。ウゼェ」
「……。」
「えーでもそれって花城さんから誘ったってことだろ…」

間宮はぶつぶつ言い、勝手に落ち込む。

「いやそーいうんじゃないから。テスト勉強のためだったし…」
「は?」

何のフォローか言い訳のようにそう言った俺を、間宮はにらみつける。

「あーだから童貞なんだテメーは」
「な…なんだよ」
「花城さんカワイソー俺にしとけばいいのに」
「いやでも光は…」
「いやいや女だってフツーに性欲あるから!」

知ったような口ぶりで間宮が言った言葉に、俺は頭の中がかき乱された。せ…性欲。…光にも?

「もう高校生にもなりゃいくら未経験だろうが男だろうが女だろうが、何となくわかるだろそういうのはよぉ」
「……。」

俺の脳裏に、あの日、胸を触っても…抵抗しなかった光の表情が蘇る。あの時…光も、その先のことを想像して…受け入れてた?

「ゴム持ち歩いてるってことはそーゆー風になりそうな雰囲気ではあるんだろ?」
「いや…まあ……」
「家まで行って何もせず帰るってのが理解できねえわー。逆になにしたの?」
「え…テスト勉強」
「お前頭大丈夫か?」

実際には、キスして胸も触ったけど…。

「家まで行ったならキスしてそのまま流れで行くだろ普通よ〜」
「……。」
「え、キスはさすがにしただろ?」
「…まあ」
「ディープも?」
「……。」

俺の顔を見て間宮が打ちひしがれるように階段の壁に突っ伏した。

「ああ〜〜〜こんなん聞かされるなんて地獄だ…!!」
「ワリィ」
「だから思ってねーだろそれ!!」

間宮は苛立ちを発散するかのようにペットボトルをガシャガシャ振る。

「つかそこまで行ってんのに何が流れがわかんねーだよ!逆にディープキスまでしてどうやって中断すんだよ」
「中断っていうか…」
「ちょっと流れ言ってみろ」
「え…。」

少し迷ったが、なんだかんだしっかり相談に乗ってくれている間宮に甘えて、俺は口を開いた。

「…キスして…胸触って…」
「ちょっと待てコラ!!」
「え?」
「胸触った…!!?」

間宮が頭を抱えてうずくまった。相当なダメージを受けたらしい。

「あの花城さんの胸を触った…!!?殺してえええ〜〜!!!」
「流れでやれとか言ってたのに、どっちだよ」
「それとこれとは別問題なんだよ!!!」

間宮はひとしきり凹んで、それでも気を取り直したように顔を上げた。

「で…続きは」
「いや、それで終わり」
「ハァ…!?」
「そっからどーしたもんかと」
「脱がしてベッド行けよ!」
「そんな乱暴な…」
「バカ、女はちょっと強引にされるくらいがいいんだよ」

間宮はまたペットボトルのふたを開け、今度は中身を飲み干した。浅黒く焼けたのどがゴクリと鳴った。

「未経験で、しかも花城さんみたいな大人しい子なら積極的にできるわけねーんだから、イヤイヤ恥ずかしがってるのをちょっと強引に抱いてやるのが男の役目だろうが」
「嫌がってたらダメだろ」
「ちょっと嫌がってみせるもんなんだよ女は!本気で嫌がってたらわかるわ」
「詳しいなお前」
「お前よりはな」

間宮は空になったペットボトルをコンコンと階段に叩きつけてもてあそぶ。落ち着きのない奴だ。

「あ…でも女の子の初めてはスゲー痛いらしいから、前戯はしっかりしろよ。」
「え…」
「何赤くなってんだよ。まじめな話だぜ」

そう言いながらも間宮もからかうように笑いだす。

「いいか?まずキスでいい雰囲気になったら、じっくり胸から攻める」
「…おう」
「まずは服の上からな。で、先に男が脱ぐ。女の子は恥ずかしがるからな」
「…おう」
「そこで嫌がられても焦るな。じっくり触りながら徐々に脱がす。ブラの外し方わかる?」
「え、まあ、たぶん」
「そこで手間取ったら雰囲気ぶち壊しだぞ。ネットでいいから調べとけ」
「わ…わかった」
「そしたら直に胸を攻める。相手の様子を見てノッてきてる感じだったら、だんだん下に手をやって…」
「……。」
「まず太ももから撫でろ。じっくり焦らせ。だんだん女もムラムラしてくるから、そしたらパンツ越しに触る。」
「……お、おう」
「それで濡れてたら、準備オッケーってこと。パンツ脱がして直接触る。」
「…濡れて、って…どの程度?」
「そりゃもう、びっしょりだよ。垂れてくるくらい濡れてりゃ理想的だな」
「……。」

…やばい。反応しそう。
俺はとっさに野球のことに思いを馳せて気を紛らわせた。

「そんでここからが一番大事」

間宮はいつの間にか真面目な顔になっていた。

「そんだけ準備できてても、女の子の初めては絶対痛い。なんせ膜を破るんだからな。じっくり指でほぐしてやって、2本入れても余裕出てきたらそこで初めてチンコ入れていい」
「あ…、お、おう」
「でもそれでも痛いからな。一思いに一気に奥まで行けよ」
「…え?ゆっくりしたほうがいいんじゃ?」
「膜を破るんだから一瞬で終わったほうがいいだろ。痛いのは変わりねえんだから、ゆっくりなんて拷問だろ」
「なるほど…」
「あとそんときの相手の要望はなるべく聞いてやれよ。」
「要望?」
「手つないでくれとか、抱きしめててくれとか、あるんだよ。女の子は痛いの怖いし、不安だから。不安で力が入っちまうと、入れづれぇってのもあるし」
「あ〜…」

なるほど。かなりタメになった。

「…サンキュ。」

納得したように俺が言うと、間宮は途端に不満顔になった。

「…ってなんで俺がまじめにアドバイスしてんだよクソが!」
「ハッハッハ、お前意外と良い奴な」

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