甲子園は準決勝まで進み、惜しくも敗退。ベスト4という結果に終わった。

「一也!」

荷物をまとめていると俺を呼ぶ声がして、俺は立ち上がる。

「鳴…来てたのか」
「当たり前じゃん!俺らを差し置いて甲子園に出たんだから、それなりの結果を残してもらわないと納得できないからね!」
「素直じゃねーなあ」

鳴の後ろでカルロスが笑うと、鳴はギッと睨みつけた。

「そっか、応援アリガトウ」
「は!?別に応援なんてしてねーし!」
「お、いたいた」

そこへまたぞろぞろとやってきたのは薬師の選手たち。先頭に立つ真田は笑顔を浮かべて俺の肩をたたいた。

「お疲れ主将。いい試合だったぜ」

俺は笑みを返し、顔をタオルで拭った。

「…で、ちょっとお前に聞きたいことあんだけど」
「え?」

突然真田はぎこちない笑みを浮かべて声を潜める。

「お前のガッコのさ、あの子…花城さんっていたじゃん?」
「……あ?」
「今も仲いい?彼氏できたとか何か知ってる?」
「……。」
「あーっ!おい何抜け駆けして聞いてんだよ!それ俺も聞きたかったのに!」

俺があきれて目を細めたところで鳴も騒いで割り込んできた。こいつらまだ諦めてなかったのかよ…。

「ここまで来て聞くことがそれかよ」
「しょーがねえじゃん、こんなことでもないと会わないんだし!」
「俺にも教えろよ一也!」

つうか、彼氏俺なんだけど。
それをどうやって伝えてやろうか考えていると、ちょうど人ごみの中に愛しの彼女の姿を見つけた。涼しげな淡い水色のワンピースの光。俺と目が合うと嬉しそうにはにかんでこっちに駆け寄ってきた。
俺の表情が緩んだことに気づき、視線を追うように振り返る鳴と真田。そして光の姿を見て、二人は硬直した。

「えっ…光ちゃんじゃん!」

鳴が声を上げる横で、真田も嬉しそうに口角を緩める。

「花城さん久しぶり、俺のこと覚えてる?」
「お前は引っ込んでろよ!光ちゃん俺だよ俺!覚えてるよね!?」
「え…」

二人の勢いに驚いて立ち止まった光を見て、後ろについてきた鷹野が面白そうにニヤニヤし始めた。

「あ…どうも」

光はぎこちなくそう挨拶をして、二人を避けるように回り込んで俺の隣に来た。それをぽかんと見つめる二人。やべえ、すげえ優越感。

「あー…実は付き合ってる…んだよね」

はっはっは…、と俺の笑い声が異様に響いて、周りが不自然に静まり返っていることに気づいた。鳴たちが騒いでいたから、注目を浴びていたらしい。

「……はああああ!!?」
「え!?お前と…!?」

鳴と真田はあからさまにショックを受けて叫んだ。面白すぎる。

「クッソやっぱ同じガッコはズリィな〜…俺も青道に行ってりゃあ…」
「嘘でしょ光ちゃん!なんで一也なんかと!俺のほうが将来性あるよ!?」
「え、いつから付き合ってんの?」
「光ちゃん!俺のほうが顔も性格もいいよ!こんな薄情者と付き合わないほうがいいって!」
「ちょっと落ち着けよお前ら」

俺の言葉に肩で息を切らしながらいったん黙る素直な二人。面白い。

「じゃ…行こうぜ光♡」
「あーっ!おい!!手!!」
「よ…呼び捨てか…」

そして光の肩を抱き寄せてそこから離れると、面白いくらいに騒ぎ出す鳴たち。
少し離れたところで光を見ると、光は顔を赤らめてちらっと俺を見上げた。

「今日も来てくれてたんだな」
「…うん。」
「暑かったろ?大丈夫?」
「大丈夫。先輩のほうが…」
「俺は鍛えてるから」

軽い調子で言って笑うと、心配そうな表情を和らげて光がほほ笑む。可愛すぎる。

「あの…お疲れ様。ベスト4おめでとう。」

そしてそう微笑む光の表情は、何よりも俺の胸に安らぎを与えた。

「ああ…さんきゅ」

悔しさも残る結果だったけど…明日からはもっと光と一緒にいられる喜びもあった。
この子とずっと一緒にいたい…この時俺は、強くそう思った。

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