ピンポーン…

光の家のインターフォンを鳴らす。これから光と…海に行く。高鳴る鼓動を抑えて門の前に立って応答を待っていると、突如低い声が響いた。

「どちらさまで?」

え…。
光の声がするかと思ったら低い男の声。ま…まさか、光のお父さん…!?

「あ…、…み、御幸一也と申します。あの…」
「ちょっとお父さん!!」

ド緊張しつつもなんとか礼儀正しく挨拶をしようと試みたところ、突然光の声が響いてガチャンとインターフォンの音が途切れた。な…何が起きてるんだ?つーか、今日、光の親がいるってこと?と、突然すぎて心の準備が…。

先ほどまでとは違う鼓動の高鳴りを感じつつ門の前に立っていると、扉の向こうから物音と人の声がして、姿勢を正した矢先に門の扉が開いた。

「…あっ」

門を開けた主、目が合った光ははっと息をのんで顔を赤くした。白いワンピース姿の、まさしく天使のような光。そしてその後ろに腕を組んで仁王立ちをする、高身長で品のいい端正な顔の、4〜50代の男…。さらにそのとなりで柔らかく微笑む、見た目は20代後半と言われても信じるくらいきれいな女性。あ…あれが、光の両親…!?

「は…はじめまして!」
「御幸一也君?」
「えっ…は、はい。」

改めて自己紹介をしようと思ったら、光の父親がどこか怖い笑顔で聞いてきた。

「あら〜カッコいい子じゃない〜」
「……。」

その隣で光の母親が楽しそうに笑いながら言って、父親は苦い顔で口をつぐむ。

「行ってらっしゃい〜楽しんでね」
「あ…は、はい。」
「もーお母さんたち行っていいから!」

光は恥ずかしそうにそう言って俺の後ろに逃げ込む。

「どこへ行くのかな?」

しかし光の父親の質問が俺を引き留めた。

「いいから行こうよ」

光が俺の腕を引っ張るが、そういうわけにもいかない。

「あ、あの、海浜公園に」
「そうか。で…何時に娘を送り届けてくれるのかな?」
「え、あ、えっと…7時までには」
「6時までだね、ありがとう。よろしく頼むよ。」
「は…はい。」
「もーお父さん!」

やめてよ!と光に怒られ、光の父親はそれまでの凄みをどこへやったのか、しょんぼりと小さくなった。すげえ溺愛してんだなあ…光のこと…。まあ、そうだよな…。

「ねえ、もう行こ!電車間に合わないよ」
「お、おう」

行ってきます、と光の両親にお辞儀をし、微笑む母親と睨みつける父親に見送られ、俺は光と駅へ向かって歩き出した。

「いやーびっくりした…」
「ごめん…今日たまたま二人とも仕事の予定が変わって…いつもならもう出かけてる時間だったんだけど」
「いや、まあ、よかったよ挨拶できて」

俺が笑うと光はほっとしたように微笑んだ。

「あっ…帰りの時間とか気にしなくていいからね?うちの親帰ってくるの遅いからバレないし」
「いやそういうわけにはいかねえよ、約束したから」
「えぇ?でも…」
「お父さんの言うことは聞かないと。嫌われたくないし」
「……。」

むっと口を尖らせた光は、それでもちょっとまんざらでもないように頬を赤くした。

「ほら、行こうぜ」

俺が手を差し出すと、光は嬉しそうに笑って指を絡めて手をつなぐ。
卒業までの間、光とこうやって過ごせたらいいな…。俺はそう思って、勝手に口元が緩んだ。

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