イカ焼きとジュースを買って戻ると、光の隣に倉持が座り、何やら親しげに話している…。

「あいつ一年の時は俺よりチビだったけどな」
「え!そうなんですか?」

「…何してんの?」

俺の声で振り向く2人。なんだこの疎外感。

「あ、御幸先輩」

ぱっと笑顔を浮かべ、立ち上がる光。その隣でなんか残念そうに立ち上がる倉持。

「なんで倉持がいんだよ」
「んなこたいいんだよ。それよりオメーが目ぇ離してる隙に彼女ナンパされてたぜ」
「えっ?」
「柄の悪い男2人」

思いがけない話に驚いて、俺は光を見る。

「え、大丈夫だった?」

光はこの美貌だから、男に絡まれやすい。心配になった俺に、光は明るく頷いた。

「うん。ちょうど倉持先輩が来て、追い払ってくれた」

そう言う光の横で調子に乗ったニヤけた顔をして俺を睨みつける倉持。なんか腹立つ。

「へー、そりゃどうも」
「ちゃんとしろよ彼氏ならよぉ」

倉持は調子に乗った態度のままそう言って、気だるそうに踵を返した。

「じゃ…俺行くわ」
「おう、行け行け」
「チッ」

歩いて去っていく倉持が遠ざかり、俺と光は座ってイカ焼きを食べ始める。

「ごめんな、一緒に行けばよかったな」
「ううん。大丈夫」

改めて謝ると、光は優しい微笑みを浮かべる。光を嫌な目に合わせたのも後悔してるけど、倉持が…なんかいいとこ見せやがったのもムカつく。
本当なら俺の役目だったのに。
まあ、助かったけど。

「でもなんで倉持がここにいたの?」
「御幸先輩を探しにきたんでしょ。なんか…イカ焼き買いすぎたって言ってたよ」
「ええ?」

なんだその見え透いた言い訳。あいつがそんな親切なもんか。

「あいつ光のこと見てたんじゃねーの?」
「私?なんで?」
「そりゃ…」

…可愛いから。あわよくば水着を見たかったから。俺らがどんなデートしてるか興味があったから。単に俺を揶揄うため。

それか…実は光のことが好き。

「…知らねーけど」
「なにそれ。」
「いや〜なんか怪しいじゃん」
「なんで?優しくていい人じゃん」
「はあ!?」

光がとんでもないことを言うからイカ焼きを落としそうになった。

「あいつがぁ?」
「え…優しいじゃん倉持先輩」
「どこがよ」
「さっきみたいなところ」
「そりゃー相手が…」

…いやまてよ。まさかあいつマジで光に気があるのか?

「なに?」
「いやなんでもない」
「もーまたそれ?」

光はイカ焼きを齧って口を尖らせる。
俺はじわじわと胸に不安が広がった。

そういや前に…鷹野が言ってたこと…

光が倉持のこと、カッコいいって言ってたって…

もしあれがマジだったら…。

い…いや!でも、俺と付き合ってるんだし…!
告白した時も、あんなに感激してくれてたし…!

「どうしたの?」
「なんでもない…」


***


あっという間に時間が過ぎ、夕方5時前になった。

「そろそろ帰るか」

と、俺が言うと

「え〜」

と、光は駄々をこねる子供のような無邪気さで口を尖らせた。

「お父さんたちまだ帰ってこないから平気だよ。」
「だから、そんなわけにいかないって言ったろー」
「ん〜…」

俺とのデートから帰りたくなくて拗ねる光はたまらなく可愛い。人目がなければ抱きしめている。

「ほら、着替えに行くぞ」
「はーい…」

二人で砂浜を歩いて更衣室のほうへ向かうと、途中で倉持と麻生に遭遇した。

「え、もう帰んの?」

麻生は俺に聞くような口調で、目はしっかりと光を見ている。やっぱ上着着せててよかった。

「帰るよ。」
「まだ5時前だぜ?」
「親が心配するから。なっ」

光を振り返ってそう言うと、ちょっとムッとして顔を赤くする光。

「あ〜…」
「ふーん…」

女の子のほうが親も過保護だし、門限とかも厳しいのはありがち。麻生と倉持もそこの想像がついたらしく、おとなしく納得した。彼女をしっかり守る男、という羨望に似たまなざしを感じたような気もした。

「ほら、着替えて来いよ。」

光の背中を押すと、光は頷いて女子更衣室のある建物に入っていった。
その姿をいつまでも見送って、ようやく我に返ったらしい麻生が、思い出したように俺を振り返った。

「…御幸たちどのへんにいたの?姿見えなかったけど」
「あの岩場のあたり」

俺は海のほうを振り返って、さっきまで自分たちがいた人の少ないあたりの砂浜を指さした。
倉持はこっちに来たけど…麻生たちは気づいてなかったらしいことに少し違和感を感じながら。

「え〜花城さんの水着見たかっ…」

言いかけた麻生が俺の顔を見て固まった。

「コワッ!!顔コワッ!!落ち着けよ冗談じゃんよー!!」
「冗談に聞こえねーんだよ」

俺はそう言いながら、いつもなら麻生側に立ってやいやい言いそうな倉持が、どこか呆れたように麻生を睨んでいることに気づいて不思議に思った。

「え、で、どうだった?」

懲りない麻生が胸元で膨らみをジェスチャーして、下種な笑みを向けてくる。それにイラついてたしなめるために口を開きかけた時…

「チッ」

言葉を遮るほどのでかい舌打ちが響いて、俺も麻生も目を丸くして倉持を見た。倉持は焦りと驚きとが入り混じったような顔で、みるみる汗が噴き出してくる。

え…こいつ、今、光の話題でキレた?

「何イラついてんのお前?」
「い…いや、今さっきそこの奴がガン飛ばしてきて…」

麻生に聞かれて不自然な言い訳をする倉持。麻生はフーンと納得したようだが、やっぱなんか変だ。

「…じゃ、俺も着替えるから行くわ」
「おー」

違和感を残しつつ、俺は麻生と倉持に別れを告げて男子更衣室へと向かった。

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