「…光。光。」
外が薄暗くなってきたころ、俺は心苦しくも光の肩を揺さぶった。
「…ん…?」
瞼がゆっくりと開き、寝ぼけ眼が俺を見て何度か瞬きをし、はっと見開く。
「えっ…!?私、寝てた!?」
「おう、そりゃもうぐっすりと♡」
「やだぁ…!」
光は恥ずかしそうに俺の胸に顔を埋めた。確実に距離感が縮まってる。嬉しい。
「すぐ起こしてよ!」
「いや〜あまりにも可愛い寝顔だったからつい♡」
「も〜…!」
光は怒りながらぎゅうぎゅう抱き着いてくる。なんだこの可愛い生き物。まだ寝ぼけてるのか?
「でもそろそろ俺帰らなきゃだからさ。」
「え…」
俺の言葉にはっとして、ゆっくり身を離す光。
「そっか…。」
その悲しそうな顔と言ったら…。ああもうずっと一緒にいたい…!
名残惜しくも起き上がり、俺たちは乱れた服と髪を整えた。
「親、何時くらいに帰ってくんの?」
「夜…かな」
「いつもそんな遅いの?」
「うん。出張も多いし」
「へー…戸締り気をつけろよ。」
うすうす思ってたけど、光の両親は忙しいのか。裕福そうな家だし、多忙な仕事なんだろう。
「うん…」
少しすねたようにとがらせた唇で言って、玄関先で俺を見送る光。
俺はその唇に素早くキスをした。
「じゃあ、またな。」
そして光の頭をなで、手を振って歩き出す。光は照れたように笑って、小さく手を振り返した。
***
「あっ!!帰ってきた!!」
寮に帰ると先に帰っていたらしい麻生や倉持が門の傍で駄弁っていた。
「御幸ちゃ〜ん、遅かったじゃねーか」
「なんで俺らより先に帰ったのに俺らより遅いんだよ」
「うるせーうるせー」
わらわら纏わりつく野郎どもを躱して突っ切りながら、意外にも倉持は俺をちらっと見ただけで何も言わないのをまた不思議に思う。今までのあいつだったら、真っ先に絡んできそうだけど…。あいつも大人になったのか?
そう思ったとき、通りかかった沢村に、倉持が絡んでいった。
「おい沢村!若菜とはどーなったんだ」
「はあ!?だから若菜はただの友達…うわああやめてくださいお願いします!!」
…いや、変わってねーな。
「何?御幸どうかしたの?」
麻生たちの騒ぎを聞きつけて、事情を知らない暇を持て余した3年たちが集まってくる。
「こいつ今日海浜公園に花城さんと来てたんだよ!!」
「え!まじ?」
「俺らより先に帰ったのに帰りが遅ぇのなんのって」
「怪しいな〜」
「何してたんだよ御幸〜」
「花城さん水着だった!?」
「それが上着着ててよ〜。でも太腿が見え…」
「おいテメェ、ふざけんなよ」
間髪入れずに凄んでしまった。声に思いのほか殺気が滲んでしまって自分でも動揺した。でも後悔はしていない。
麻生たちはヤベェという顔になって、スマン、と呟いて大人しくなった。