「ごめんね光〜せっかく速水先輩が誘ってたのに…」
「だから!それはいいの!」
光と二人、駅の方向へ向かって歩く。試験が午前で終わって解放された今日は、二駅隣の都心駅へ行って遊び倒す予定だ。
「なんでよ〜」
「なんでって…速水先輩のことよく知らないし…二人で遊びにいくとか無理。気まずいよ…」
「え〜でもあの人って光のこと好きでしょう?」
「…はっきり言われたわけじゃないし」
「いや、バレバレでしょ!」
光は困ったように黙り込んだ。こんなに美人でモテモテなのに、どこか自信がないのが不思議なところだ。
「じゃー御幸先輩とデートすれば良かったんじゃない?あはは」
「絶対やだ…」
「えー!御幸先輩イケメンじゃん!」
「……。」
光はイヤーな顔をして口をつぐんだ。
「どんだけ御幸先輩のこと嫌いなの〜?」」
「嫌いっていうか…ふざけてるだけでしょ、あの人は…」
「でもイケメンじゃ〜ん」
そういえば、光に言いよるイケメンは御幸先輩や速水先輩も含めてたくさんいるのに、光自身がいい反応をしているのを見たことがない。
「…もしかして光、B専…?」
「何?それ」
「あの、すみません!」
駅が近づいて人通りが多い道に差し掛かった瞬間、光に声をかけてくる男性がいた。
「今どこかに所属してたり…」
「すみません」
最後まで聞くことなく、笑顔で断って颯爽と歩き続ける光。
「えー今のスカウト!?やばっ!」
興奮して私が声を上げたその瞬間。
「お姉さん芸能活動って興味…」
「すみません。」
別の方角からかかる、また別の声。
「あーもう、中入ろう」
「えっ?う、うん!」
光が私の手を引き、俯いたまま足早に、私たちは駅ビルの小さな入り口に滑り込んだ。
「す…すごいね!あんなにスカウトされるなんて、やっぱ光って美人…」
「いや…よくいるでしょ?ああいうのって…」
全く普通の顔でそう言ってのける光に、私は目を見開いた。光って…美人すぎて、スカウトが日常茶飯事なんだ…!?
「いないよ!!?」
「ええ…?」
***
「でね!昨日だけでなんと、5回もスカウトされてんの!!」
「へ、へえ…すごいな」
翌日早速昨日の話を東条くんにしていると、東条くんの隣の席で光が睨んできた。
「しかもね光、なんて言ったと思う!?」
「司…」
「さ、さあ、何?」
「よくいるでしょ?って!!日常茶飯事なんだよ、光にとっては!!」
「……。」
「へ、へえ」
「やばくない!!?」
「…もうやめてよ〜〜」
机に突っ伏す光の耳が赤い。本当に本気で、スカウトは誰しもがされる珍しくもないことだと思っていたらしい。
「こんだけ美女なのに、全然自覚してないの!やばくない!?」
「司!」
「あ、あはは…」