光とついに…最後までした…。
ぽーっと惚けそうになる頭をなんとか動かして、俺は寮まで帰った。
光…血が出てた。ほんとに初めてだったんだな…。痛そうだったな…。大丈夫かな…。
そこまで不安になって、帰り際の光の、大丈夫、とほほ笑む幸せそうな顔を思い出し、俺は口元が緩む。幸せすぎておかしくなりそう。
今日の夜電話しようかな…。
寮はちょうど夕食の時間で、俺は部屋に戻らずそのまま食堂へ向かった。
食事を受け取って空いている席を探し、一人で食ってる倉持を見つけたが、ギロッと睨まれたので隣の机のゾノの傍に座った。
「お、御幸、どこ行ってたんや」
「まあちょっと…」
はぐらかしたが、ゾノも何気なく聞いただけのようで、訝しげに首をかしげるだけで行先についてはそれ以上の追及はなかった。
「なんや倉持の様子がおかしいんやがお前何か知らんか?」
「…さあ?」
あいつ、まだ機嫌治ってないのかよ。
「ハァ〜なんやねん、せっかく引退して平和やっちゅーのに…」
「そのうち機嫌治すだろ、ほっとけよ」
まあたぶん原因、俺なんだけど…。
どうやら倉持は光のことが好きで…俺のことが気に食わないらしい。それについてはしてやれることは何もない。
「あ!おい、これ速水じゃん」
テレビの前で食事をしていた3年が声を上げ、急にテレビの音声を上げた。
俺もゾノも倉持も、つられてテレビを振り返った。画面には確かに、少し気恥しそうに笑う速水の顔が映っていた。テロップには【Jリーグ注目高校生・インターハイ準優勝イケメンキャプテン】との文字。
「卒業後はプロにとの声も多いですがどのように考えていますか?」
「はい。とてもありがたいと思っていますし…挑戦する気持ちはあります」
「ということはプロを志望しているということですか?」
「はい。そうです。」
こうして見ても腹も立たないほどのイケメン。こりゃモテるだろうな。
「え、速水、プロ行くの?」
「そうらしいよ」
「イケメンなうえにJリーガーかよ!?この世はなんて理不尽なんだあぁ」
テレビを見ていた3年たちが嘆き始めた。1年や2年もテレビに注目している。
「プロを目指すきっかけとか理由はなにかあったんでしょうか?」
「そうですね、お話をいただいたことも大きなきっかけですし、小さいころからの夢でもありましたし…」
速水は一瞬迷うように口ごもったが、すぐにさっぱりと決意したような笑みを浮かべて顔を上げた。
「…あと、最近失恋したので。人間的にももっと成長していい男になって、その子に釣り合う男になりたいっていうのが、最終的に背中を押されたような感じです」
バシャバシャバシャ、とフラッシュ音が激しくなった。食堂内は一瞬の静寂の後、どよめきが起こった。
「えっ!?失恋って何!?誰!?」
「シッ!お前知らねえのかよ…、……」
数名の部員たちがひそひそと耳打ちしながらチラチラ俺のほうを見る。なんかいたたまれない…。
それに…速水、インタビューで何言ってんだよ…!?光のことだよな?
「その意中の方は同級生ですかー?」
記者のからかうような質問が飛び、周りの記者からもワハハと笑い声が起きた。速水は少し顔を赤らめて、見たことないようなはにかみ笑いを浮かべた。
「…後輩の子です」