「次、花城!」
「はいっ」
きれいなフォームで走っていき、足を踏み込んで、軽やかに飛ぶ体。その光景はもはや芸術で、今グラウンドにいる者たちの視線をその一身に浴びていた。
マットの上に落ちて、起き上がった光が地面に降りると、数人の女子生徒が取り囲む。その中でほほ笑む光は輝いていて、その周りだけスローモーションのようにも見えて…
「コラァ!女子のほうばっか見てるんじゃない!!」
…俺たち3年男子の体育の教師が怒声を上げた。今このグラウンドには2年女子の高跳びと、3年男子の短距離走とで場所を分けて授業をしている。怒声が聞こえた2年の女子たちはこっちを見てくすくす笑い出した。
「花城さん、やっぱすげえ可愛いな」
「スタイルもいいしなあー。芸能界入らないのかな」
「あのおしとやかさ見ろよ、天使だわ」
まるでその周りにだけさわやかな風が吹いているように、光は涼し気に微笑み、サラサラの髪が揺れてキラキラしている。あの子が、俺の彼女。時々その事実をかみしめて胸がキュッとなる。こんなに恵まれていていいのかな、と。
しかも、みんなの前ではあんなに澄ましているけど、ベッドの上じゃ…。
…あ〜!誰かに話したいけど、誰にも教えたくない…!光のあんなあられもない姿。今思い出しても、もう…。
「卒業したかぁ?」
「!!?」
ぬっと耳元で囁かれて、驚いて飛び上がる。振り向くとにやけた顔の間宮が立っていた。
「お前な…しつこいよ」
「いいじゃん相談乗ってやっただろ?教えろよ〜」
「暑い。くっつくな」
間宮をあしらって視線を巡らせると、倉持がこっちを睨んでフイとそっぽを向いたのが見えた。また間宮と良くない話でもしてると思われたのかもしれない。
「なあ白状しろって〜〜」
「だから言わねえって」
***
「光いる?」
2年の教室で呼び出した光は、俺を見るとちょっとぎこちない感じで駆け寄ってきた。
初めて最後までしてから、直接顔を見合わせるのは今日が初めて…。なんかちょっと緊張する。
「…何?」
光のクラスに俺が来るのは珍しいことではないのに、今日の光は少しよそよそしい態度でそう言った。気恥ずかしさが伝わってくる。俺は光を連れて、人のいない校舎裏に移動した。
「もう…大丈夫?」
「え?」
校舎裏につくと俺はそう切り出した。目を瞬きながらも少し察しているような赤い頬で言う光に、言い足す。
「その…血、出てたから」
「あ…。う、うん、もう…」
「止まった?」
「うん。」
「そっか…」
「……。」
「あ…痛みは?」
「も、もう大丈夫。全然。」
光は恥ずかしそうに笑って、赤い顔で唇を噛んだ。この光が、この間は、あんなふうに服をはだけて、俺の前にさらけ出して、よがって…。
「そ、そっか。ならよかった」
俺はとっさに、頭の中を支配しかけたもやもやを振り払った。
「あ…そうだ、文化祭のシフト、11時までにしてもらえたよ。」
恥ずかしさをはぐらかすためか、光が話題を変えてそう言った。
「お、そっか、じゃあ…一緒に回れるな」
「うん。」
光は微笑んで、手をもじもじと動かす。
「……。」
「……。」
少し変な空気が流れる。悶々とした……いや、ムラムラとした……。
…最後までして、うれしかったけど、一つだけ弊害がある。
光を前にすると……セックスしたくてしょうがない……!!!
「あ…じゃあ、文化祭の日、シフト終わったら先輩のクラスに行くね。」
「あ、ああ。…いやっ、やっぱ俺が行くよ。」
「そ、そう?」
「うん。教室で待ってて。」
「わかった…。」
しかし今週いっぱいは文化祭の準備…そして土日は文化祭。
1週間以上はセックスする時間もタイミングもない…!!
「じゃあ、私、戻るね…。」
何か気まずさを感じ取ったのか、光は校舎に戻ろうとした。
「えっ、あ、うん」
俺も引き留める言葉が浮かばず、間抜けな顔で頷いた。光が踵を返し、歩いて行って、遠ざかっていく。
…あ〜……セックスしたい……。
いやせめて……光に触りたい……。
男子高校生の性欲、半端ねえ……!!!