文化祭が無事終わり、後夜祭も光と一緒に参加して…
日常が戻ってきた学校には、中間試験が迫ってきていた。
「御幸、今日は部屋で勉強するんか?」
朝食時、ゾノが隣にやってきて尋ねた。1学期の定期試験前、いつも自習室で勉強すると言って帰宅が遅かったからだ。…本当は光の家に行ってたんだけど。
「あ〜、うーん…まだわかんないけど」
「そうか、もしかしたら小野と勉強するんに机借りるかもしれへんから…」
「あー、いーよ使って」
「すまんな」
別に部屋で勉強するのでも問題はない。けど、学校の自習室でもいいし、それに…もしかしたら光の家に行けるかもしれないし…。
悶々としながら朝食を食べ、俺は着替えて登校した。気もそぞろに授業を受け、休み時間になると早速光の教室へ行った。
「どしたの?」
毎日光のことで頭がいっぱいで悶々と過ごしている俺のことなどいざ知らず、光は純粋なきょとんとした顔で俺に呼び出された。
「いや、別に、なんとなく暇だったから」
「ふうん…。」
口を尖らせてちょっと照れたようにうなずく光。可愛すぎる。
「…テスト勉強してる?」
下心を悟られぬよう、俺は聞いてすぐに缶コーヒーを開けて無造作に飲む。
「まあ…、一応」
光は他意のない顔でうなずく。
「そっか…、」
「……?」
なんでそんなこと聞くんだ、と疑問を感じた光の表情。俺は慌てて言葉をつづけた。
「いや〜俺もそろそろ、勉強はじめねぇとな〜…」
「ふーん…?」
「……はっはっは」
「…何?」
光がいぶかしむように俺を見る。まずい。俺、挙動不審すぎる。
だってまさか、光の家で勉強したい、なんて言えねーよ…!だってそれってヤリたいって言ってるようなもんじゃん!まあ、ヤリたいんだけど…!でもこんな、テスト勉強にかこつけて…とか。それに、それだけが目的みたいに思われたくない!俺は光を大事にしたいんだ、決してそれだけが目的じゃない…!
「いや、なんでもない…。」
となるともう、何かのきっかけで光のほうから家に誘ってくれたときに、そういう流れに持ち込むしか道はないんだけど…。それっていつになることやら…。
「……。」
光は何かを考えるように目を泳がせ、何か言いたげに口をもごもごさせた。
「…どうかした?」
もしかして家に誘ってくれるんじゃないかと、一抹の期待を抱いて尋ねる。
「ううん。」
しかし光は軽く頭を横に振って微笑んだ。
「……。」
「……。」
再び沈黙が流れ、俺は一人悶々とする。
光があの日のことをどう思ってるのか全く分からない。俺はもう、あの日からずっと、またしたくてしたくてたまらないっていうのに…!光は全然平気そう。これって男と女の違い?やっぱ、女ってそんなに性欲ないのかな。それとも初めてした時が微妙で、もう気が乗らない…とかだったら、悲しすぎる…。
「あ…今日、なんか予定あんの?」
実はもしかしたらチャンスがと思って勇気を振り絞って聞いたのだが、俺はまた何気ない風を装って缶コーヒーを傾けた。
「今日は…司と約束してて…」
そして申し訳なさそうにそう答えた光に、俺は実際落胆したが、それこそヤれなくてがっかりしてるみたいに思われたくない一心で、必死に笑顔を作った。
「あぁそーなんだ、相変わらず仲いいな〜」
あ〜…今日も無理か…。…なんて考えてること、死んでも光には言えない。
「先輩は…最近忙しいでしょ?」
「え?」
ふいに光が寂しそうに言うものだから、俺は我に返った。
「この間も取材だったし…最近多いよね。」
「あ〜…まあ…もうすぐドラフト会議だからな」
「そっか…。」
微笑んだ光の顔が、妙に寂しそうに見えて、俺は下手なことは言えない気分になった。
「プロに…行くんだもんね…。」
光…。そのこと、気にして…?
「まあ、まだどうなるかわかんないけど…」
そういいつつ、おそらく指名はもらえるだろうと自分でも思っていた。贅沢にも心の中では、東京の球団に決まってくれと願っていた。
それなら光に会いに来やすいから…。
そんな俺の胸中を知ってか知らずか、光はニコッとほほ笑む。まるで、理解を示すような態度で。
これから何か、辛いことを受け入れるような顔で…。
俺の勘違いでなければ。
光は、俺がプロに行くことで距離が空き、別れが来るかもしれないということを…考えているのかもしれないと思った。