春。

俺たちは3年生になった。


「お、おはよう!」

新しい教室に入り、俺は自分の隣の席に座る女子に声をかける。

「あ…東条!同じクラスだね」

花城。まさかまた、同じクラスになれるなんて。
…御幸先輩とはまだ続いてるだろうけど…。

「うん、よろしくな。」
「よろしく。」

でも嬉しいものは嬉しい。しかも、また隣の席だし。ああ、花城、相変わらずキレーだな。周りのクラスメイトたちが羨ましそうに俺を見てくる。

「あ〜東条君!おはよぉ〜!」
「あ…鷹野!またよろしく!」

そこへジュースを手に教室にやってきた鷹野。自販機に行っていたらしい。鷹野もまた、同じクラスだ。

「よろしく〜。てか私3年間光と同じクラスなのやばくない!?すごくない!?」
「あはは…たしかに。」
「羨ましい!?」
「え…、あ、あはは…」
「司、東条困ってる。」

ぴしゃりと嗜める花城に、だって〜と絡んでいく鷹野。本当に仲がいい。
しかしふと、花城が誰かを見つけたように立ち上がって、机から小さな封筒を取り出して歩いて行った。

「周防くん。」

今教室に入ってきた男子生徒…周防衛。花城が声をかけると、周りのクラスメイトたちが一気に注目した。

「同じクラスだね。よろしく」
「よろしく」
「これ…幡野先生から。周防くんも受けるだろうから渡してって」
「…ありがとう」

にこ、と微笑む花城は遠くからでもにやけてしまうほど可愛いのに、周防は表情ひとつ動かさずに対応し、クールに自分の席へついた。

「ごめんごめん。」

花城が笑顔で席に戻ってくる。ふわりと甘い香りがする。

「何渡したの?」
「英検の申込書。今日から出願だから」
「へえ〜」

鷹野が納得したように頷く。
花城と周防って…この学年の成績優秀者ツートップなんだよな…。このクラスに学力偏ってないか?大丈夫か?

「あ!東条!同じクラスじゃねーか!よろしく!!」
「あ…沢村。」

と…その時けたたましく教室に飛び込んできた沢村を見て、俺はつい納得してしまった。



***



「ねえ御幸先輩とはどうなの〜?」

休み時間、鷹野が花城に尋ねて、俺はつい耳を大きくした。

「あ…うん、連絡とってる…。」

そして少し恥ずかしそうに、だけど幸せそうに答える花城の言葉を聞いて…胸の奥がズキンと痛んだ。

「会えてるの?」
「春休みに会ったよ。」
「忙しいんだねぇ〜」
「あちこち行くからね。」
「寂しくないの〜?」

鷹野の問いに一瞬言葉に詰まって、だけど花城は嬉しそうに微笑んだ。

「…大丈夫。」

その顔で…俺は、何か、自分の想像も及ばない絆が、花城と御幸先輩の間にはあるように思えて…
目の前が暗くなった。

俺…まだ、花城のこと…
しっかり、好きなんだな…。



***



【イケメン新人】ドラフト3位入団天才イケメンキャッチャー・御幸一也君を愛でるスレ/その5

024:今年の新人で一番好み

028:まだあるのかよこのホモスレ

029:スレタイ変わったのか。卒業したからか

032:高校球児時代から変態スレ建てられてて可哀想

034:筆おろししてあげたい

035:御幸高校時代から彼女いるよ

036:>>035え?ガチ?

039:ガチ。OBです。御幸の彼女は学校一の美女

040:都内の一般高校で一番ね

041:まじで、その辺の芸能人より美女です。

042:おっさん妄想はいいからクソして寝ろ

045:在校生だけど、御幸一也の彼女見たことある。御幸の一学年下。めちゃくちゃ美人なのは本当。スカウトとかされてる人。学校で有名な美男美女カップルだった。

048:特定班まだ!?

049:彼女情報ガチ?ショックすぎる



…御幸先輩のことを調べていたら変なスレを見つけてしまった。しかも、花城のことも書かれてるし…。
この在校生って人…同級生とか?俺の知ってる人が書き込んでたら嫌だなー…。

「東条?」

いつの間にか信二が隣にいた。何見てんの?と聞く信二に、俺はスマホの画面を見せた。

「あーこれ、俺も見たわ」
「これやばくないか?花城のこと書かれてるし…」
「まあ…でも名前とかまでは書かれてないし…しょうがないんじゃねーの?御幸先輩はもう有名人なんだし」

そういうもんなのか…。たしかに、芸能人とかって熱愛報道とか、色々書かれるもんだけど。

俺は少し、花城のことが心配になった。

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