「あ…花城!おはよう」
翌日学校に来た花城に声をかけた。花城は元気のない笑顔で、おはよう、と答えた。
「あのさ…昨日御幸先輩に会えた?放課後…」
俺はきっと花城も御幸先輩に会って嬉しかっただろうと…少しは励まされたんじゃないかと、だから、きっと花城は笑顔になってくれると思って、それを尋ねた。
「あ…、うん。」
だけどその微笑みは繕ったもので、どう見ても悲しげだった。
「…別れた。」
そしてぽつりと、そう呟いた。
「…え?」
「ごめん、先生に呼ばれてるから」
俺がギョッとすると、花城は席にもつかず荷物を置いてすぐにまた教室を出て行った。
入れ違いに鷹野が登校してきて、花城に挨拶をしてこっちの席にやってくる。
「おはよー東条くん。今日も光元気ないねぇ…」
悲しそうにため息をつきながら、俺の前の席である自分の席に荷物を置く鷹野に、俺は驚いて固まったままの顔を向ける。
「…どしたの?」
「今…花城が」
「な、なに?」
「…御幸先輩と、別れたって…」
「…えっ!!?」
鷹野は悲鳴に近い声を上げた。
「なんで!?」
「さ、さあ…なんでかまでは…」
「嘘!?えっ!?…はあ!?」
取り乱す鷹野と、呆然とする俺。
今更気がついた…花城と御幸先輩が別れること、今まで俺は、心のどこかで期待してた。
でも気づくと同時に、そんな自分を嫌悪した。だって…こんなに悲しいことだとは思わなかった。全然嬉しくなんかない。戸惑いの方が大きい。
御幸先輩は、あんなに必死に花城を追いかけて行ったのに…。
一体、何があったんだ…?
***
「…ねえ、光!今日このあと一緒に入試の勉強しない?」
冬休みも近づいてきたある日の放課後。鷹野が勇気を出した様子で花城にそう声をかけていた。
花城はすでに肩にかけたバッグに手を添え、一瞬表情を固めた。だけどすぐにいつもの微笑みを浮かべて言った。
「ごめん、家で集中したいから…」
「そっか…わかった」
一人で帰っていく花城を見送り、鷹野は俺を振り返る。
「断られちゃった〜」
「ははは…、まあ…一人になりたいんじゃないかな」
「そうかもしれないけど…。」
鷹野は寂しそうに俯く。自他共に認める大親友なのだからそれも当然だろう。
「大丈夫かなぁ光…」
「やっぱり…両親を一度に失くすのって、辛いだろうし…」
「うん…それもだけど、受験も近いのにさ…」
花城はずっと定期試験ではトップに近い成績だった。だけどこの間返却された期末試験は、10位以内にも入っていなかった。両親のことで悩んでいることが原因なのは明らかだった。
「そうだな…」
花城の第一志望は白栄。以前の花城なら、問題なく受かるだろうと思っていた。でも今は…それどころじゃないように見える。
無理もない。あんなことが起きたら…。
「心配だよ…」
「うん…」