3学期に入ると、自宅学習期間に入ったこともあり、花城とはほとんど会わなくなった。
鷹野も連絡も取れないし、どうしてるかわからないらしい。

クラス全体に心配する雰囲気が漂っていたが、事情が事情だけに、噂話をすることも憚られた。

そして今日は久々の登校日。
すこし緊張しながら教室に入ると、花城は自分の席についていた。

「花城、おはよ!」

緊張を振り払って声をかけると、花城は笑顔で振り向き、おはよう、と返してくれた。

「冬休み何してた?」
「…勉強かな。」
「あはは、だよなー。俺も。花城は入試いつだっけ?」
「え…っと」

花城は口ごもり、目を泳がせた。

「まさか忘れたの?大丈夫か〜?」

冗談のつもりで揶揄ったのだが、花城は困ったように笑うだけだった。ちょっと、何かおかしいと思った。

「光〜っ!おはよ〜!」

おそらく取り繕った元気さで、鷹野が教室に入ってきた。俺にも挨拶をした後、鷹野は花城に抱きついた。

「会いたかったよ〜っ!光ぃ〜っ!」
「ちょ…、離して…。」

花城は苦笑しながら鷹野を宥め、なんとか解放された。

「受験勉強捗ってる〜??」
「聞くなよ〜。」

俺はさっきの違和感から、つい花城を庇うようにはぐらかすような反応をしてしまった。花城は少し元気のない微笑みを浮かべて黙っている。

「光は心配ないよね〜。白栄生かあ〜憧れるう〜!」
「ふふ…」

花城が小さく笑い、静かに下を向いたのを、俺は見逃せなかった。花城…何か隠してる?

「2人とも結果でたら教えてね!…あっでも私が落ちてたら合格したとか言わないで!励まして!」
「あはは…鷹野らしい」
「……。」

俺は鷹野に対応しながらも、その日は花城の様子が気になって仕方がなかった。何かがずっと引っかかって…。
だけど何も聞けずに、日々は過ぎていった。



***



そして、卒業式の日。

花城は来なかった。


「先生、今日なんで光来ないんですか!?」

卒業式直前、鷹野が担任に詰め寄っていた。
担任は困ったような顔で目を伏せた。

「体調不良とかで…どうしても無理らしい」
「そんな…」

鷹野が悲しむ顔で言う。
しかし次の担任の言葉で、その顔が固まった。

「ご両親のことで、今年受験もできなかったんだ…まだ立ち直るのには時間が必要…」
「えっ…?」

鷹野の顔が青ざめていくのを、俺は呆然と見つめた。

「えっ…、光、受験しなかったんですか…?」

担任は知らなかったのかと驚くような顔で頷いた。

「ああ、ご両親のことがショックでとてもそんな状況じゃないと、本人が言ったらしくて…今の保護者から学校にも連絡があって。」
「…嘘ですよそんなの!!」

鷹野が担任にくってかかった。

「え?…何が?」
「だって光、受験勉強してるって言ってたし…!出願もしたって言ってた…、」

鷹野は言いながら、ボロボロと泣き出した。担任が慌てて宥めるが、鷹野は声をあげて泣き出し、教室に悲しい空気が漂った。

花城が今どこにいるのか…。

なんでこんなことになってしまったのか…。

もう…会えないのか…。

消えてしまった彼女の影を探して、俺はいつまでも、窓の外を見つめた。

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